結局は中二病なのかもしれない
──アルバムの最後を飾る「レッド・ホット!」の「レッド」は、もしかして「赤ヘル」の「赤」ですか?
KOZZY:そうだね(笑)。
──広島東洋カープの応援歌であると。
KOZZY:自分たちなりのね。レコード会社からの注文で何の気なしにつくってみたんだよ。「これだけカープが好きで応援してるんだから、いっそのこと応援歌みたいな曲をつくったら面白いんじゃないですか?」って言われてね。
──それでいて、「最後に一発!」「おまけに一発!」という歌詞もあるからアルバムの締めにうってつけですよね。
KOZZY:そうそう。アルバムの最後に持ってきたらうまいことハマってね。
──しかも曲の最後の最後は潔くスパッと終わるのもいいですね。
TOMMY:ぶっちぎりだよね(笑)。
KOZZY:それでまた頭の1曲目に戻れるっていうかさ。カープの応援歌から僕のコタツの原風景にね(笑)。全然最新でも何でもないし、結局は70年代がテーマなんだよね。マックショウっていうのは僕が中二の頃に影響を受けた音楽がない交ぜになってるのが今回よくわかったよ。キャロル、クールス、モッズ、ビートルズ、クラッシュ、ストレイ・キャッツ、それとブルースとかの黒人音楽。全部そこで完結してるんだよね。マスタリングの音の参考にしてるのも熱心に聴いてたドクター・フィールグッドの『プライベート・プラクティス』とかだし。ウィルコ・ジョンソンじゃなくてジッピー・メイヨの時代。結局は中二病なのかな(笑)。まぁそれはともかく、今回はメンバーも苦労したと思うよ。僕のやろうとしてることを暗中模索してるのがよくわかったし(笑)。
──だけど結局、何とか納期までにハイグレードな作品をきっちりと仕上げてハードルを飛び越えてしまう。その繰り返しですよね。
KOZZY:スケジュールは一応頭のなかに入ってるつもりなんだけど、もうちょっと追い込みたいってやっぱり思っちゃうんだよね。マスタリングの前まではもっと内容も混沌としていて、ハイファイな曲もあり、ローファイな曲もありって感じだった。それをマスタリングの段階で完成形の雰囲気にバッサリと合わせたので、マスタリング前の段階を聴くと印象が変わるかもしれない。「ゴールデンバット」はもっと普通の曲だったし、マスタリングしだしてから頭にオルガンがほしくなったんだよ。ちょうどそのときコルツのキーボードの多田(三洋)くんがここに荷物を取りに来たから、「ちょっと弾いてくれない?」ってお願いしたわけ。
TOMMY:「オルガンの音が聴こえるよね?」ってずっと言ってたもんね。
──マスタリングをしてみないと客観視できない、全体像が見えてこないところがあるわけですね。
KOZZY:自分でプロデュースまでやってるからね。ちゃんとした人にプロデュースしてもらってたら作品の内容と世の中の接点を見いだしてくれるんだろうけど。まぁ、このジャンルではもはや独走態勢だけどね。流行りの音楽とは無縁だし、競合する人たちもまったくいないから。ずっと周回遅れなのか先頭をひた走っているのかわからないけど(笑)。
──やっぱり火事場の馬鹿力というか、極限まで自分たちを追い込んで初めて出てくるアイディアやひらめきがあるんでしょうね。
TOMMY:そうだと思うよ。余裕があるとそこまで頑張れないし、こうして何十年もこのスタイルでやってるのはそういうことだよね。
BIKE BOY:追い込まれて初めてスイッチが入るところもありますからね。
KOZZY:去年はコルツのアルバムとツアーもあったし、僕はソロのライブでも全国を回ってるんだけど、それもいい箸休めになるんだよね。マックショウの歌詞は机に向かって集中して書けるものじゃないし、ツアーの移動中に書いたり、ツアー先で誰かと話してるときにアイディアが浮かんでくることが多いから。
──ところで、今回のジャケットに写る車にも何らかの意味があるんですよね?
KOZZY:マツダのルーチェっていう最上級車だね。
──ああ、「ハイヒールとスニーカー」の歌詞に出てくる車ですか。
KOZZY:うん。広島出身の僕らにとってはキャデラックよりも高級なんだよ。会社の社長さんが乗るような車なんだけど、広島以外で見ることはまずないと思う(笑)。