音楽とギターは生涯の伴侶
平野:サザンから独立した後のター坊は、ソロやユニットをやったりしていたよね。
大森:ゴダイゴの浅野孝巳さんとPROJECT OAというユニットを2人でやって、それはもちろん有意義な活動だったけど、あくまでもユニットだったんです。サザンに代わるバンドではなかったんですよ。
平野:そのサザンに代わるバンドというのが、今回シェルターに出演してくれるThe Rambling Brothersなわけだね。
大森:そうなんです。去年、還暦を迎えてまた新しいバンドを組める喜びを今は味わってますよ。新しくバンドを始めるのに15年かかったけど、それはかかるべくしてかかったと思うし、今の心境としてはもう失うものもないし、この先ギターを持てなくなるまでずっと一緒にこのバンドをやり続けたいと思うメンバーなんです。
平野:ロフト系列でライブをやるのは40年ぶり?
大森:そうですね。下北もロフトも自分にとってホームグラウンドみたいなものだから楽しみですよ。今度のシェルターでは、自分の今までのキャリアのすべてをぶつけたいと思ってます。
平野:そんなに力を入れてくれてるの? 嬉しいねぇ。
大森:もちろんですよ。それだけ気合いが入ってるから当日は緊張するだろうね。ちょっとお酒を呑まないとステージに上がれないかもしれない(笑)。
平野:去年出した『RISING』の曲を中心にしたステージになるの?
大森:いや、『RISING』はソロ名義で出したアルバムだからね。今回はThe Rambling Brothersとしての出演だから、バンド・サウンドにこだわりたいんです。サザン・ロックやカントリーが好きな連中が集まってるから、今はZZトップとかのカバーがメインなんだけど、オリジナル曲を少しずつ書き溜めてるんですよ。いずれはちゃんとオリジナル曲だけのCDを出して勝負したいバンドなんです。自分でバンドを結成したのは40年ぶりですよ。
平野:いいじゃないですか。還暦を過ぎて新しいことをやれるなんて素敵だと思うよ。
大森:とにかく満足させるステージにしますよ。ぜひ期待していてください。
平野:しばらくはそのバンドに本腰を入れていくんだ?
大森:うん。ちゃんとアルバムを出して、武道館公演を目指したい。
平野:もうやめようよ、そういうメジャー志向は(笑)。今までさんざん数万人規模の客を相手にしてきたんだから、もういいんじゃない? それよりも30人の客をちゃんと納得させる音楽をやったほうがいいよ。
大森:30人を感動させられる音楽をやれば、300人、3,000人、3万人を相手にできるはずなんですよ。量質転化の法則はちゃんと成り立つんです。メンバーが軒並み70歳を超えたストーンズがキューバでのライブで120万人を集めるなんて話を聞くと、日本の音楽は遅れてるなと思うんです。せめてスピリットの部分だけでも欧米のミュージシャンと対等に渡り合えるようにはなりたいですよ。
平野:いいね。ター坊のバンドがある限り、日本のロックは不滅ってことで締めていい?(笑)
大森:ヘンな汗が出てきたよ(笑)。でもね、まだまだやれることはいっぱいあると思ってる。これまでの人生、いろいろとあったけど、音楽だけは捨てようがないからね。ギターだってそう。音楽とギターは僕にとって生涯の伴侶だからさ。
(ネイキッドロフトにて収録)