Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー大森隆志×平野 悠 ー『Back to Shimokitazawa』開催記念特別対談(Rooftop2017年6月号)

元サザンオールスターズのギタリストが自身のルーツである下北沢で凱旋ライブを敢行!
下北沢ロフトの店員時代から現在に至る音楽遍歴をロフト創業者と語り尽くす!

2017.06.01

バンドから独立していろんなことを経験できた

平野:メンバーも生意気だったんだよな。毛ガニなんて「僕はプロのパーカッショニストだから洗いものはできません。手をケガしたら困るから」とか言うもんだから、他のバイトが怒っちゃってさ(笑)。

大森:でも、毛ガニは店員じゃないでしょ?

平野:いや、店員だよ。

大森:いや、違う違う。ただのヘルプだったんだよ。ただね、当時はみんな毛ガニのことを「ロフトのダニ」って言ってた(笑)。なんでかと言うと、開店準備をしてる忙しい時に毛ガニがレコード室に平気で入ってきて、「ター坊、ちょっとこのレコード借りていくね」とか言うから。あと、店に常備してあるタバコも平気で持っていくんだよ。当然、金は払わない(笑)。

平野:そうか、毛ガニは店員じゃなかったのか。40年間ずっと勘違いしてたよ(笑)。

大森:まぁ、毛ガニは愛すべきキャラクターなんだけどね。彼がまだサザンに入る前、これでパーカッションが入ったら僕らの敬愛するリトル・フィートと同じ編成になるよねってことで、毛ガニにパーカッションを叩いてくれないかとお願いしたの。そしたら、「俺はセミプロだからアマチュア・バンドに付き合ってる暇はないんだよ」なんて言われてさ。当時の彼は南佳孝さんのバック・バンドだったし、マーブルヘッド・メッセンジャーにいたからね。それが、サザンが『EastWest '77』の決勝に入賞してビクターからデビューの話が来た途端、「ター坊さ、俺、このバンドでパーマネントでやろうと真剣に考えてるんだよね。そうメンバーに言ってくれない?」だって(笑)。それで後日、道玄坂のカレー屋で桑田と毛ガニと僕の3人で会うことにしたわけ。「桑田、毛ガニがパーマネントでやりたいって言ってるんだけど、どうする?」って僕が訊いたら、桑田は「ああ、そう?」って言うだけで良いとも悪いとも言わない。それ以来、毛ガニはずっとジョークで「サザンの準メンバー」って言われてるんだよね(笑)。

平野:さてその後、ター坊は2001年にサザンを脱退するわけだけど…。

大森:茅ヶ崎での野外ライブを最後にね。バンドから独立してからはすっかり放心状態で何も手につかなくて、1年間はギターを触れなかったんです。大好きなメンバーと一緒にサザンの音楽を作り上げてきた自負もあったし、自分の人生そのものでしたからね。家族よりも長い時間をサザンのギタリストとして過ごしてきたわけだから。でもね、そんな時もファンの人たちが僕を支えてくれた。「大森さん、ライブやってくださいよ。応援してますから」って。とてもありがたかったし、その思いに突き動かされましたね。

平野:サザンをやめて学べたことってある?

大森:いろんなことを経験させていただきました。やめた途端に手のひらを返すように離れていく人、それまでと全然変わらずに接してくれる人。その明暗ははっきりと分かれましたね。まぁでも、それは仕方ないですよ。サザンのメンバーはもちろん、お世話になった高垣さんや大里さんのことは今でも愛してるし、感謝してます。その気持ちはずっと変わりませんね。

 

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サザンは日本のロックの何を変えたのか?

平野:「元サザンオールスターズ」という肩書きは今も重い?

大森:いや、全然。サザンにいた頃の自分は、地面から2メートルくらい上のところでずっと生活していたんだなと思った。ちょっと浮いた感じって言うかさ。たとえばライブハウスに出るにはギャラの交渉から始まって、メンバーを集めて、リハをやって…っていうのが当たり前でしょ? 昔はそういう手順を踏むことを何一つやらなかったし、今は当たり前のことを当たり前にやる生活に戻れたって言うのかな。

平野:CDを出せばミリオンセラー、アリーナ・クラスのホールや球場でやるライブは軒並みソールドアウトの国民的バンドにいたら、そこに胡座をかいてしまうんだろうね。そんなサザンは日本のロックの何を変えたんだと思う?

大森:日本語のロックの概念を変えたところはあるんじゃないかな。頭の固い人は「日本語を壊した」なんて言うけどね。たとえば「もっと最高」って歌詞があるとすると、桑田は「motor cycle」って聴こえるように巻き舌で英語っぽく唄う。ちゃんとした日本語なんだけど英語っぽく聴こえる歌詞なわけ。それはある種の発明だと思うよ。

平野:それはBOØWYの氷室(京介)も同じじゃない?

大森:BOØWYよりも早かったよね。BOØWYはサウンドの革新性もあったと思うけど。あと、サザンは音楽的なジャンルにこだわらなかった。ロックを軸にブルース、レゲエ、ジャズ、ボサノヴァ、ディスコ、琉球音楽、GS、歌謡曲…ありとあらゆる要素を取り入れてたからね。まさに360度の全方位なんだよ。そういうジャンルにこだわらないこだわりがあったからこそ、今もあれだけたくさんの人たちから愛され続けてるんだと思う。

平野:サザンはよく「ロックをお茶の間に持ち込んだ」って言われるけど、俺は今一つピンとこなくてさ。そんなバンド、他にもたくさんいるじゃない?

大森:でもね、サザンがデビューした頃はロック・バンドがテレビに出るのは珍しかったの。僕らは当時好きだったドゥービー・ブラザーズやリトル・フィートみたいな音楽をやりたいがためにテレビにも積極的に出たんだよ。まずは名前を売るのが先だと思って。

平野:我慢して出てた部分もあった?

大森:最初の頃は物珍しかったですよ。だって音楽番組で隣りにジュリーがいたりするんだから。でもね、それがルーティンみたいになって1日に5本も6本もテレビ番組に出ると疲弊しちゃう。だから「働けロック・バンド(Workin' for T.V.)」という曲が生まれたりもした。その曲の譜面には「今はまだ辛いけど、もう少しだからみんな頑張ろうな!」って桑田が僕らへのメッセージを書いてましたよ。この今の状況を何とか乗り越えれば、僕らの憧れていたウェストコースト・サウンドやサザン・ロックみたいな本物の世界が待っているんだと言い聞かせてましたね。売れたら好きなことができるんだから、それまでは頑張ろう! って。

 

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LIVE INFOライブ情報

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loft presents Takashi Omori (ex.Southern All Stars) Back to Shimokitazawa
出演:The Rambling Brothers[Shime(Vo, Gt)、大森隆志(Eg, Vo)、尾崎博志(Pedal steel, Vo)、六川正彦(B, Vo)、上野義雄(Dr, Vo)]
2017年6月28日(水)下北沢SHELTER
開場 19:30/開演 20:00
前売 4,000円/当日 未定(ともにドリンク代別)
※椅子席(全自由席)
※チケットはぴあ(Pコード:329-953)、e+にて発売中
問い合わせ:SHELTER 03-3466-7430
 
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