四の五の言わずに赤坂BLITZへいらっしゃい
──昔からそうですけど、支配人は本当にサービス過剰ですよね。周年モノのアイテムはご祝儀みたいなものですし、言い方は悪いですけど、もっと手を抜いた内容でも胞子の皆さんは喜ぶと思うんですよ。
M:最初はこんなに頑張るつもりじゃなかったの。でもいざ制作に取りかかるとあれもこれもとやりたくなってしまう。こうなるとまさしく“サービス”の“S”よね(笑)。
──今回のアルバムは実演会での再現よりもスタジオワークでいかに実験性に富んだ面白いことをやれるかに重きを置いた作品だと思うのですが、いずれは本作のアレンジを生演奏できるような、インドや沖縄の楽団、ジャズ・コンボやオーケストラとの共演が果たせたら楽しいですね。
M:この『プレイガール大魔境』が売れに売れて、キノコホテルの知名度や実演会の動員が一気に上がらないと資金繰りが(笑)。宝塚歌劇みたいな大階段とか立派なステージ・セットも作りたいし、空中ブランコにも乗りたいし、やりたいことは尽きないわ。そのためにもファナティックな胞子をいま以上に増やして予算を掻き集めないと。キノコホテルってこんなに可能性だらけのコンテンツなのに、なぜいまだに零細企業なのかしら。
──零細企業もここまで続けばご立派ですよ。「女の子には時間がないの」(「恋のチャンスは一度だけ」)と唄っていたバンドが10年も続いて、良質な作品をコンスタントに発表し続けて、ここまで理想的な活動ができているガールズバンドもなかなかいませんよね。
M:そうね。そもそもガールズバンドって短命なものだし、なかなか前例のないパターンだと思います。この存在の仕方からして。
──創業10周年を迎えたことを機に、今後取り組んでみたいことはありますか。
M:これは以前から言い続けていることなんですけど、映画の劇伴をやってみたいの。最近はそう思わせるくらいの新作映画となかなか出会えないんですけど、劇伴制作は取り組んでみたい。ただバンドをやるだけじゃなくて、一個人の作家として大きな仕事に挑戦してみたい気持ちはあるわね。そういう映画にワタクシもタバコ屋のババァみたいなチョイ役で一瞬だけ出てみたい(笑)。さっきも話した通り、ワタクシは“〜っぽい”音楽を作るのが楽しいと言うか、お題をいただいて曲を作るのが好きなのかもしれない。自分で一から作り上げる作業ももちろん好きだけど、誰かのオーダーに応えて曲作りをするのは作家として試される部分があるので、違うやりがいがあるんじゃないかと思って。
──創業当初はこれほど長く続けるつもりもなかったと思いますが、いつ頃から自身の活動に対してギアが入ったと認識していますか。
M:やっぱり2010年にメジャー・デビューして以降、実演会の回数も増えて会場の規模も少しずつ大きくなって、めきめきと知れ渡るようになってからかしら。その時に自分の中で覚悟した部分はありました。メジャー・デビューしたことによって知らなくてもいい人にまで知られるようになって、もう恥ずかしいことはできないんだなと。でもその時点ですらバンドを長く続けようとは思っていなかったわ。本当にイヤになったらやめてしまえばいいと思っていたので。
──いまはその意識もだいぶ変わってきました?
M:10年続いたからと言って、この先のことまでは分からないわ。そもそも自分の人生自体がノープランで、流れに任せてここまで来ましたので。将来の設計も何もしてこないままいい大人になってしまったので、このまま行くほかないですね。本能のままに(笑)。
──まさにキノコ航空のアナウンスの通りですね。目的地も航路も未定という。
M:あのアナウンスはワタクシの人生そのものなの。おまけにシートベルトも付いていないし、何の保障もなく生きてますからね。まるで博打みたいなもの。今度の赤坂BLITZも大博打ですからね(笑)。二度とないお祭り騒ぎになるでしょうし、これだけ大きな節目となる実演会は後にも先にもないでしょうね。これ以上の節目があるとすれば、ワタクシが支配人を辞めて二代目が襲名するタイミングくらいかしら(笑)。まぁとにかく、いままでの、そしてこれからのキノコホテルを見届けたかったら赤坂BLITZへいらっしゃい。話はそれからよ。