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キノコホテル(Rooftop2017年6月号)

珍スポットも王道の観光名所も決して外さない

──キノコホテルの世界紀行は東南アジアの怪しい裏通りにも踏み込むけど、アンコール・ワットとか誰もが知る観光名所は絶対に外さないみたいなところがありますよね。

M:そうね。決して珍スポットだけではなく、割と王道な場所もしっかりと押さえていると思います。それが結局ポップであるということなんだけど、この『プレイガール大魔境』はただポップなだけのアルバムではないし、だからこそハードコア・パンク調の「愛と教育」みたいに途中で奈落の底へ突き落とす楽曲もあるわけ(笑)。魔境には何が潜んでいるのか分かりませんからね。突然裏の路地に連れ込まれるかもしれないし、巨大な落とし穴に落ちてしまうかもしれないし。

──古今東西のポピュラー・ミュージックの作品を見渡しても類型がないですよね。過去の楽曲を取り上げてはいるけど、これも紛れもなくもう一枚のオリジナル・アルバムですし。

M:過去の楽曲を再録するにしても、そこに明確なテーマを据えたコンセプチュアルな作品に仕上がっているのは自分でも非常に気に入っているわ。まぁ、それも特にヒット曲がないことが幸いした部分もあると思うの。誰もが知る大ヒット曲はいじりづらいし、そこまでの大ヒット曲がないことを逆手に取ってみたわけです。ベスト盤なんていうものはヒットメイカーの人たちが作るもので、キノコホテルみたいなバンドにベスト盤なんか必要ないから。そう言うとネガティブに聞こえるかもしれないけど、でもだからこそ『プレイガール大魔境』みたいに面白い作品を作れたんだと思う。結果オーライよね。

──先ほど支配人が、キノコホテルのことをいまだにGS歌謡だ昭和だと言う人がいるとお話しされていたのが意外なんです。音楽的にもこれだけ振れ幅が大きく新しいことに果敢にチャレンジしているのに、色眼鏡で見るのは単純にもったいないですよね。

M:単にいまのキノコホテルをご存知じゃないんでしょう。ワタクシたちのことをよく知らなくても「キノコホテルってアレでしょ? 昭和だよね?」なんて話している輩は己の無知をさらけ出しているようなもの。そういう方にこそ『プレイガール大魔境』を聴いて欲しいですけどね。このアルバムを聴いてもなお「昭和」の一言で片づけるのだとしたら、そもそも昭和のこと自体よくご存知じゃないのねと思ってしまうわ。

──仮に「昭和」と言われることをプラスに転じるならば、キノコホテルの音楽は肉感的であり、実体の得られないバーチャル感とは無縁ということじゃないですかね。バンドとリスナーの摩擦係数が高いと言うか。

M:そうね。人間がやっている音楽の生々しさがあるって言うのかしら。いま思えば、初期のキノコホテルの音はアナログ感がちょっと強すぎた気もするの。当時はあれで良しとしていたんだけど、昔の音楽をそのままやっているバンドではないので、3枚目(『マリアンヌの誘惑』)辺りから程良くリッチで現代的な音の質感も欲しくなったのよね。

──『マリアンヌの革命』以降、いまのキノコホテルが求める音のバランスや音圧の雰囲気を嗅ぎ取ることに長けたエンジニアの杉山さんとの相性もいいし、理想的なアナログ感のアップデートに近づけたとも言えませんか。

M:実を言うと、今回のマスタリングでアナログ記録方式のオープンリールテープを通しているの。「風景」みたいに長い楽曲はテープが途中でなくなって大変だったけど(笑)。でも非常にいい経験ができた。杉山さんみたいに現代的かつ立体的な音を録れる方に録音をお願いして、それにオープンリールテープという音の魔法をかけてあげることでいい風合いに仕上がったので。

──魔法のかけがいがある作品ですよね。詳しくは書けませんけど、最後の最後にとんでもない仕掛けまで用意されていますし。

M:まさかのオチが待ってますからね(笑)。創業10周年の節目に出す大切なアルバムなのに、どうしても悪ふざけをしたくなっちゃうの。

 

四の五の言わずに赤坂BLITZへいらっしゃい

──昔からそうですけど、支配人は本当にサービス過剰ですよね。周年モノのアイテムはご祝儀みたいなものですし、言い方は悪いですけど、もっと手を抜いた内容でも胞子の皆さんは喜ぶと思うんですよ。

M:最初はこんなに頑張るつもりじゃなかったの。でもいざ制作に取りかかるとあれもこれもとやりたくなってしまう。こうなるとまさしく“サービス”の“S”よね(笑)。

──今回のアルバムは実演会での再現よりもスタジオワークでいかに実験性に富んだ面白いことをやれるかに重きを置いた作品だと思うのですが、いずれは本作のアレンジを生演奏できるような、インドや沖縄の楽団、ジャズ・コンボやオーケストラとの共演が果たせたら楽しいですね。

M:この『プレイガール大魔境』が売れに売れて、キノコホテルの知名度や実演会の動員が一気に上がらないと資金繰りが(笑)。宝塚歌劇みたいな大階段とか立派なステージ・セットも作りたいし、空中ブランコにも乗りたいし、やりたいことは尽きないわ。そのためにもファナティックな胞子をいま以上に増やして予算を掻き集めないと。キノコホテルってこんなに可能性だらけのコンテンツなのに、なぜいまだに零細企業なのかしら。

──零細企業もここまで続けばご立派ですよ。「女の子には時間がないの」(「恋のチャンスは一度だけ」)と唄っていたバンドが10年も続いて、良質な作品をコンスタントに発表し続けて、ここまで理想的な活動ができているガールズバンドもなかなかいませんよね。

M:そうね。そもそもガールズバンドって短命なものだし、なかなか前例のないパターンだと思います。この存在の仕方からして。

──創業10周年を迎えたことを機に、今後取り組んでみたいことはありますか。

M:これは以前から言い続けていることなんですけど、映画の劇伴をやってみたいの。最近はそう思わせるくらいの新作映画となかなか出会えないんですけど、劇伴制作は取り組んでみたい。ただバンドをやるだけじゃなくて、一個人の作家として大きな仕事に挑戦してみたい気持ちはあるわね。そういう映画にワタクシもタバコ屋のババァみたいなチョイ役で一瞬だけ出てみたい(笑)。さっきも話した通り、ワタクシは“〜っぽい”音楽を作るのが楽しいと言うか、お題をいただいて曲を作るのが好きなのかもしれない。自分で一から作り上げる作業ももちろん好きだけど、誰かのオーダーに応えて曲作りをするのは作家として試される部分があるので、違うやりがいがあるんじゃないかと思って。

──創業当初はこれほど長く続けるつもりもなかったと思いますが、いつ頃から自身の活動に対してギアが入ったと認識していますか。

M:やっぱり2010年にメジャー・デビューして以降、実演会の回数も増えて会場の規模も少しずつ大きくなって、めきめきと知れ渡るようになってからかしら。その時に自分の中で覚悟した部分はありました。メジャー・デビューしたことによって知らなくてもいい人にまで知られるようになって、もう恥ずかしいことはできないんだなと。でもその時点ですらバンドを長く続けようとは思っていなかったわ。本当にイヤになったらやめてしまえばいいと思っていたので。

──いまはその意識もだいぶ変わってきました?

M:10年続いたからと言って、この先のことまでは分からないわ。そもそも自分の人生自体がノープランで、流れに任せてここまで来ましたので。将来の設計も何もしてこないままいい大人になってしまったので、このまま行くほかないですね。本能のままに(笑)。

──まさにキノコ航空のアナウンスの通りですね。目的地も航路も未定という。

M:あのアナウンスはワタクシの人生そのものなの。おまけにシートベルトも付いていないし、何の保障もなく生きてますからね。まるで博打みたいなもの。今度の赤坂BLITZも大博打ですからね(笑)。二度とないお祭り騒ぎになるでしょうし、これだけ大きな節目となる実演会は後にも先にもないでしょうね。これ以上の節目があるとすれば、ワタクシが支配人を辞めて二代目が襲名するタイミングくらいかしら(笑)。まぁとにかく、いままでの、そしてこれからのキノコホテルを見届けたかったら赤坂BLITZへいらっしゃい。話はそれからよ。
 

キノコホテル創業10周年記念作品
プレイガール大魔境(初回限定盤)

2017年6月7日(水)発売
KICS-93494(CD+DVD)
¥3,241+税

amazonで購入

【CD】
01. ゴーゴー・キノコホテル
02. 愛人共犯世界
03. 球体関節
04. あたしのスナイパー
05. 悪魔なファズ
06. 荒野へ
07. 還らざる海
08. 愛と教育
09. おねだりストレンジ・ラヴ
10. 風景
11. 惑星マンドラゴラ
【DVD】
・「あたしのスナイパー」Music Video
・激写!キノコノウラスジ
・魔葫大酒店 in 台湾

キノコホテル創業10周年記念作品
プレイガール大魔境(通常盤)

2017年6月7日(水)発売
KICS-3494(CD Only)
¥2,685+税

amazonで購入

【収録曲】
01. ゴーゴー・キノコホテル
02. 愛人共犯世界
03. 球体関節
04. あたしのスナイパー
05. 悪魔なファズ
06. 荒野へ
07. 還らざる海
08. 愛と教育
09. おねだりストレンジ・ラヴ
10. 風景
11. 惑星マンドラゴラ

Live info.

キノコホテル創業 10周年記念大実演会
サロン・ド・キノコ 〜飼い慣らされない女たち〜

2017年6月10日(土)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2017年6月17日(土)大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2017年6月24日(土)東京・赤坂 BLITZ

<その他の実演会>
2017年9月3日(日)福岡 the VOODOO LOUNGE
2017年9月9日(土)仙台 enn2nd
2017年9月30日(土)札幌 sound lab mole

<スナック東雲>(トークイベント)
2017年6月18日(日)大阪・ロフトプラスワンウエスト
2017年7月7日(金)東京・新宿ネイキッドロフト