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キノコホテル(Rooftop2017年6月号)

バンドの歴史や自分の音楽遍歴がうまく融合した

──「悪魔のファズ」は“ファズ”なのに「ジンギスカン」をベースにしたミュンヘン・ディスコ+スカのアレンジという異色のナンバーじゃないですか。でも妙な中毒性があるんですよね。

M:あれは半ばギャグだけど確信犯ですね。「これは『ジンギスカン』でいくわ」と3人に伝えて原曲を研究させて、ワタクシの独断で一方的にアレンジを進めていったわ。どの楽曲もそんな感じ。3人がそのやり方にちゃんとついてくるのが面白いの。

──「球体関節」は浮遊感のあるスペイシー・サウンドだし、タンブーラが起用された「おねだりストレンジ・ラヴ」はシタールっぽい鍵盤も相まってラーガ・ロックみたいだし、フランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」のフレーズが加味された「還らざる海」はフレンチ・ポップスの趣もあるし、やりたいことを思うがまま縦横無尽にやっているのに不思議と統一感があるんですよね。

M:単なる思いつきとひらめきだけで強引に突き進んだ感じもあるけど、一曲ごとの音の世界観は自分でも面白いと思うわ。バンドの歩んできた歴史や自分の音楽遍歴がうまく融合して、こういうまがまがしい世界を形成していると言うか。

──これだけ多彩に一曲ごとに異なるアレンジを施すとなると相当な労力でしょうし、もしかしたら新曲だけのオリジナル・アルバムを作ったほうがラクだったのかもしれませんね。

M:そのことは途中で気づいたわ。過去の楽曲だから勝手知ったるものだし、どんなアレンジにしようがすんなりいくだろうと踏んでいたのに、いざ作業に取りかかってみると厄介なことに手を出してしまったなと思って(笑)。まぁ、そういうスリルも含めて楽しんで作りましたけどね。

──一番厄介だった楽曲はどれなんですか。

M:完全未発表曲の「惑星マンドラゴラ」かしら。作品としてちゃんと着地するかは割と実験だったので。ぼんやりとできていたメロディも大幅に手直ししたり、歌入れの直前までいろいろと調整したの。コントロール・ルームでエンジニアの杉山(オサム)さんが待機している中で即興でコーラスを付けたりして。あと意外と苦戦したのは、「あたしのスナイパー」の歌入れですね。

──アレンジではなく歌ですか。

M:この歌、すんごい唄いづらいの!(笑) ファーストに入っているオリジナルはちょっと歌謡曲っぽく、ややねちっこい歌唱スタイルで、あのアルバム全体がそういうテイストなんだけど、いま聴くと個人的には非常にクドい。今回はできるだけドライにしたくて、その落としどころをあれこれと考えあぐねたわね。ドライなんだけど、多少ムードもないとな…ってところで。暑苦しくなりたくもないし、その微妙なニュアンスの方向性で迷う部分はあった。

──「惑星マンドラゴラ」の話が出てきたので伺いますが、楽曲の原型はいつぐらいからあったんですか。

M:原案を思いついてデモを作り始めたのは去年の頭くらい。アイドルに楽曲提供をしたいと思って作ることにしたの(笑)。

──だからサビで視界が開かれていくようなキラキラした感じがあるんですね。これ、お蔵入りさせていたのがもったいないくらいの名曲じゃないですか。

M:おかげさまでそう言っていただくことが多いです。MVも作りたいと思っているところなの。

──MVもこの「惑星マンドラゴラ」で来るのかと思いきや「あたしのスナイパー」で、その外し方もキノコホテルらしい“アッカンベー!”だなと思ったんですよね。

M:「あたしのスナイパー」は非常にヴィジュアル化しやすい楽曲ですからね。聴いているだけで画が浮かんでくる力が楽曲にあるし、そこは素直に乗っかろうと思ったんですね。MVで分かりやすい世界観を見せることで今回のアルバムに興味を持ってもらって、いざ聴いてみるとどの楽曲もリード曲になり得るくらい一曲一曲が濃密であることを知っていただきたいの。

──もし「惑星マンドラゴラ」でMVを作るならどんな内容になるのでしょう?

M:構想はすでにあるのよ。まず、唄っているのは自分じゃないの。『スター誕生!』みたいなセットの中でスターを夢見る歌手の卵がオーディションを受けて、最後にワタクシが札を挙げる。ヘッドフォンを片耳に当てて険しい顔をしながらその子の歌を聴いてね(笑)。

──審査員とスカウトの一人二役ですか(笑)。

M:キングレコードのスタッフもこの曲を非常に気に入ってくれているので、ワタクシの希望がある程度叶うのならそういうMVをぜひ作ってみたいわ。

 

本物とまがい物の比率にバンドの個性が出る

──「惑星マンドラゴラ」はこの『プレイガール大魔境』を象徴するような楽曲で、AメロとBメロはすごくマニアックなアレンジと展開なのに、サビになった途端一気にポップになるじゃないですか。アングラな雰囲気から大衆性のあるものへ変幻自在にはじける感じがいかにもキノコホテルっぽいなと思って。

M:その辺の狙い撃ちは毎回確信犯よ(笑)。キノコホテルはサイケだGSだガレージだ昭和だ何だと言われますけど、自分が志向しているのはどう転んでもいいからポップでありたいということなんです。そのさじ加減があえて言葉にせずともキノコホテルのテーマにしてきたことだし、本能的にポップなものを目指してきたところがあるの。

──本作の特筆すべき楽曲はやはり14分弱の大作「風景」だと思うんです。支配人の三線、ケメさんのスチール・ギター、ふぁびゑさんの島太鼓という編成も謎ですが、中盤以降のジャーマン・テクノっぽい展開もさらに謎で(笑)。

M:今回の「風景」には沖縄、ハワイ、ドイツの要素が入っているわけ。最終的にはまた沖縄に戻ってくるんですけどね。沖縄の浜辺でウトウトしている間にヘンな夢を見て、気がつけば日が暮れていたみたいな感じかしら(笑)。ちなみにあの三線は、沖縄へ行くといつもお世話になっているOutputの上江洲(修)から強奪したものなの。

──ああ、やっぱり(笑)。だけどあのサイケデリックな展開はキノコホテルのジャム・バンドとしての側面の面目躍如といった感じですね。

M:「風景」の原曲は、冒頭のゆったりした部分のギターに琉球音階っぽい要素が取り入れられてはいたんだけど、今回は欲張って三線と島太鼓を露骨に入れてみたの。その後ろで鳴っているスチール・ギターはハワイっぽいし、自分でも訳が分からないわね(笑)。

──ある種のフェイク感と言うか、「風景」の琉球っぽさ、「荒野へ」のジャズっぽさ、「あたしのスナイパー」の英国スパイものっぽさといった具合に、その道を突き詰めることなく“〜っぽい”で終わるという絶妙なプラスチック感がいいですよね。

M:あくまでもパロディが良いの。そこは本物を目指してもしょうがないし、そもそも目指せないし、無理はしない主義なので。無理せず面白いものを作るのが第一。でもその程良い塩梅が重要で、本物とまがい物の比率にキノコホテルの個性が出ているんだと思う。

──そう言えば、「荒野へ」ではアーバンギャルドのおおくぼけいさんがピアノでゲスト参加されているんですよね。ゲスト・ミュージシャンを起用しているのはキノコホテルとしては異例だと思うのですが。

M:そう、非常に珍しいことです。でもどうしてもピアノの音を入れたくて、おおくぼくんにお願いしたわけ。

──ご自身で弾いても良かったのでは?

M:ワタクシにはピアノの素養がないんです。「荒野へ」を似非ジャズっぽい方向に持っていく構想が浮かんだ時点で、これはピアノを弾ける人がいないとダメだなと思ったの。それで真っ先に思い浮かべたのがおおくぼくんだった。ゲストを呼ぶのはたしかに異例なんだけど、アーバンギャルドとキノコホテルは何かと癒着があって(笑)仲がいいし、彼なら何でもやってくれるはず! と思って。

──冒頭で「ゴーゴー・キノコホテル」が始まる前にキノコ航空からの無情な機内アナウンスがあるように、キノコホテルならではの音楽の翼に乗った世界紀行が全体を貫く本作のコンセプトとしてあるわけですよね。

M:バンドの音楽を通じて巡る魔境の旅とも言えるし、作品全体がキノコホテルという世界の周遊とも言えるわね。いずれにせよテーマパークみたいなトラベル感、レンジの広さを今回は打ち出したかった。

 

キノコホテル創業10周年記念作品
プレイガール大魔境(初回限定盤)

2017年6月7日(水)発売
KICS-93494(CD+DVD)
¥3,241+税

amazonで購入

【CD】
01. ゴーゴー・キノコホテル
02. 愛人共犯世界
03. 球体関節
04. あたしのスナイパー
05. 悪魔なファズ
06. 荒野へ
07. 還らざる海
08. 愛と教育
09. おねだりストレンジ・ラヴ
10. 風景
11. 惑星マンドラゴラ
【DVD】
・「あたしのスナイパー」Music Video
・激写!キノコノウラスジ
・魔葫大酒店 in 台湾

キノコホテル創業10周年記念作品
プレイガール大魔境(通常盤)

2017年6月7日(水)発売
KICS-3494(CD Only)
¥2,685+税

amazonで購入

【収録曲】
01. ゴーゴー・キノコホテル
02. 愛人共犯世界
03. 球体関節
04. あたしのスナイパー
05. 悪魔なファズ
06. 荒野へ
07. 還らざる海
08. 愛と教育
09. おねだりストレンジ・ラヴ
10. 風景
11. 惑星マンドラゴラ

Live info.

キノコホテル創業 10周年記念大実演会
サロン・ド・キノコ 〜飼い慣らされない女たち〜

2017年6月10日(土)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2017年6月17日(土)大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2017年6月24日(土)東京・赤坂 BLITZ

<その他の実演会>
2017年9月3日(日)福岡 the VOODOO LOUNGE
2017年9月9日(土)仙台 enn2nd
2017年9月30日(土)札幌 sound lab mole

<スナック東雲>(トークイベント)
2017年6月18日(日)大阪・ロフトプラスワンウエスト
2017年7月7日(金)東京・新宿ネイキッドロフト