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OLEDICKFOGGYドキュメンタリー映画『オールディックフォギー / 歯車にまどわされて』公開記念座談会  伊藤雄和×渋川清彦×川口 潤

何も起こらない日常をどう表現するのか

──撮影素材がだいぶ揃ってきたところで、物語の落としどころは決めていたんですか。

川口:自分の思いを芝居にしたPVの撮影が終わった時点で、だいぶ見えてましたね。撮れる素材はこれでほぼ揃ったかなと思ったし。あとはもうちょっとメンバーにインタビューするかどうか迷ったんですけど、説明くさくなるかなと思ってやめたんです。

──改めてインタビューをしなくても、「夏休みの前半から宿題をやる人はバンドなんてやらない」とか、メンバーが何気なくつぶやいた言葉が印象に残りますよね。

川口:あの辺の発見は編集を始めてからですね。一言一句全部チェックして、この部分でこんなことを言ってるのは使えるなとか、そういう細かい詰めの作業はかなり時間をかけたんです。

──プロモーション的な視点で言えば、最新作『グッド・バイ』の収録曲をもっと使っても良さそうなところを、そういうコマーシャルな選曲にしないところも好感が持てましたね。

渋川:俺、「パズル」が入ってたのがちょっと意外で。あれは誰が選んだんですか?

川口:選曲は全部僕です。ダメでした?

渋川:いや、俺は「パズル」が大好きなんですよ。あと、「肯定の化学」もすごく好きです。

伊藤:「パズル」を入れたのは、作曲したスージーにも印税が入るからじゃないの?(笑)

川口:さすがに印税のことまでは考えてないよ(笑)。

伊藤:まぁ、国会前のシーンに合う歌詞だからね、「パズル」は。

川口:そういうことなんですよ。ライブで盛り上がる曲は撮ってて分かってたし、入れたい曲はいっぱいあったんだけど、映画のストーリーに沿って曲を選んだ感じですね。あと、後半のほうで「いいえ、その逆です。」を使ったのは、伊藤くんが掃除してる時に僕の頭のなかでずっと鳴っていて、上手くハマる気がしたからなんです。まぁ、あとから意味付けはしてますけど、基本は直感ですね。

TAKE.jpg四條未来.jpg──話を伺っていると、伊藤さんはドキュメンタリーの被写体としてまな板の上に乗るだけというよりも、川口監督とがっぷり四つに組んでクリエイティブな映像作品を共作したという感じに思えますね。

伊藤:そこまでは思ってなかったけど、ライブでもカメラが入るとミスらないようにしなきゃとか、ちょっと格好いい感じにしようとかは思いましたよ。かと言ってライブ中にカメラを見たりはしないけど、普段のライブとは気持ちがちょっと違った。

──編集されて全体がつながった映像を初めて見て、伊藤さんはどう感じたんですか。

伊藤:広中さんに「見せられないところがあるかもしれないからチェックして」って言われたんですよ。その前に一度、広中さんが一通り見て、ここはヤバいかもっていうのをチェックしてくれたんです。俺自身は別にどのシーンも平気だったんですけどね。まぁ、最終的にちょっとカットした部分もあったけど。でも、一通り見てみたらすごい良かったですよ。俺の嫌いなドキュメンタリー映画っぽくなくて。

川口:どういうのが嫌いなの?

伊藤:上のほうから間接照明が当たってて、年をとった人が昔のことを振り返って証言するみたいなやつ。そういうのを見ると飛ばす。それが外人だとさらに飛ばす。

川口:なるほど。ちょっと説明っぽくなるからね。

伊藤:『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』は、説明もあったけどすごい良かったんですよ。メンバー内のドラマみたいなのがいっぱいあって。あの映画は、俺が言うところのカンフー映画っぽいんです。一度落ちるところまで落ちて、そこからサクセス・ストーリーを踏んでいくっていう。

──KEEさんはこの映画をどうご覧になりましたか。

渋川:面白かったですよ。もっと見せたら面白いところがたくさんあるなぁとは思いましたけどね(笑)。まぁでも、映画として成り立たせるにはしょうがないところもあるし、なんて言うのかな、10年前に出会った頃に比べて伊藤も大人になったなぁ…って言うか(笑)。半歩前に行ってる感じもありますしね。

伊藤:まぁ、KEEくんと出会った頃はムチャクチャやってましたからね。

渋川:それじゃお前の嫌いな証言系の話になるよ(笑)。

川口:昔はムチャクチャだった話はよく聞いていたので、そのニュアンスをこの映画でどう表現できるかなと思ってたんです。

伊藤:その手の話を全部出して、あたかも台本があるように仕向けてくれれば良かったんですよ。

川口:それに近いことはフィクションのなかに今回落とし込めたと思うんだけどね。女性絡みの話とか(笑)。

yossuxi.jpg大川順堂.jpgスージー.jpg──伊藤さんの好きな『アンヴィル!』みたいなドラマティックな要素は本作にはないかもしれないけど、テンポの良さや構成の妙、楽曲の良さも手伝って最後まで飽きずに見られるのが見事だなと思ったんですよね。

伊藤:最後まで何も起きませんけどね。エンターテイメント性には欠けるかもしれないけど、つげ義春の漫画みたいでいいんじゃないですか。

川口:でも、ドラマティックなことが起きない部分でドラマが進んでるんじゃないですかね。

伊藤:いいんですよ。ドラマティックなことなんて起きないんだから、普通の人は。

川口:そうなんだよね。それをどうやって「表現」にするんだ? って今回は問われてる気がしたんですよ。何も起こらないことは別に悪いことじゃないし、そこを無理やり掘り下げるのも違うと思ったし。ただ、ライブをやる、レコーディングをするというのは、普通の人からすると実はすごいことなんですけどね。

──たしかに。何も起こらない物語をこれだけの作品に仕上げた川口監督の手腕もすごいですけどね。

川口:伊藤くんたちが僕の意図するもの以上に応えてくれたことが大きいですよ。彼らに密着していた時期は、僕自身ホントに楽しかったし、このままでいると延々撮り続けてしまうから、この辺で一度関係を絶ったほうがいいかなと思ってるところなんですけど(笑)。

伊藤:この関係はもう断ち切れないですよ。次のPVの撮影もあるんで。

川口:それは一度予算を聞いてからにするわ(笑)。

伊藤:予算は、出来上がった映像を見てから決めます(笑)。

 

映画『オールディックフォギー / 歯車にまどわされて』

【伊藤雄和が敬愛する作家・西村賢太氏よりコメントが到着!】
音楽で人生を棒にふる──かような一途バカも、そのポーズだけなら容易いことだ。
だが実践となるとやはり並大抵の意思でできるものではなかろう。
それをごく自然体に、当たり前のような顔をしてやってのけているこのバンドの面々は、ちょっとこれは……どうにも稀有の、見上げた落伍者たちだ。
      ──西村賢太(芥川賞受賞作家『苦役列車』)

主演:OLEDICKFOGGY(伊藤雄和、スージー、TAKE、四條未来、yossuxi、大川順堂)
出演:渋川清彦、仲野茂(アナーキー)、増子直純(怒髪天)、NAOKI(SA)、TezukaTakehito(LINK13)、HAYATO(CROCODILE COX AND THE DISASTER)、中尊寺まい(ベッド・イン)他
監督・撮影・編集:川口 潤
製作:「OLEDICKFOGGY」映画製作委員会(ディスクユニオン+日本出版販売)
制作:アイランドフィルムズ
エグゼクティブプロデューサー:廣畑雅彦、小松賢志
プロデューサー:広中利彦、近藤順也
©2016 OLEDICKFOGGY Film Partners
ビスタ|ステレオ|カラー|デジタル|99分|2016年|日本映画
宣伝:VALERIA
配給:日本出版販売
8月11日(木・祝)よりシネマート新宿にて公開決定! 以降、全国順次公開!