人生はとても短いから、もう迷ってる時じゃない
──13年経っても未だ初期かもしれませんが(笑)、オリジナリティが充分備わっているからこそアメリカのオーディエンスも万雷の拍手で迎え入れるんじゃないですかね。
KOZZY:向こうのミュージシャン仲間にも「オリジナリティが凄いあるよ」って言われたね。僕自身はそうかな? と思うし、意識もしてないけど。でも、これだけ長く続けていればオリジナリティになっちゃうのかもしれない。50's、60'sの欧米のロックンロールと日本古来のロックンロールが混ざり合ってさ。僕が作ってる歌詞の雛形はジョニーさんが作ったんだろうし。キャロル以前はないわけだからね。
──古今東西のロックンロールを見渡してもマックショウみたいなバンドは他にいないし、つまりそれは確固たるオリジナリティがあるってことじゃないですか。如何にも昔のロックンロールにありそうな曲なのに、どこを探しても大元が見当たらなかったりするし。
KOZZY:「カワサキ・レイニーデイ」も元ネタがいくつか思いつくけど、これだっていう明確なものはないよね。曲は作ろうと思えばいくらでも作れるんだよ。今回のアルバムだって曲を減らすのが大変だったくらいだから。ただ、情景が目に浮かぶ歌詞を書き上げるまでは何度も何度も書き直すから苦労する。そうやって自分で勝手にハードルを上げてるところはあるけど、聴いてくれる人がいつも歌詞の隅々まで読んでくれるから気が抜けない。
──歌詞の頻出単語は間違いなく“夜”ですよね。『MIDNITE MELODIES』の収録曲もそうでしたけど、『TWISTIN' CARNIVAL』に入っている曲もほとんどが“夜”の歌ですし。
KOZZY:それも真夏の夜だよね。冬じゃない。僕の中では夏休みの夜のイメージ。30日くらい家にも帰らずに遊び回ってた記憶がマックショウの歌の世界観に投影されてる。そこを自分なりに追求してるんだよね。今の自分の年齢を夏休みにたとえると、もう盆の時期は過ぎてる。こればかりは分からないよ。もしかしたらもう8月25日辺りまで来てるのかもしれないし。
──「高速へヴン」に「そう、人生はとても短いから/もう 迷ってる そんな時じゃない」というグッとくる歌詞がありますが、あの部分は『MIDNITE MELODIES』の「ワンパイントの夢」や「サンライズ」にも通ずる、聴き手の背中を押してくれるところがありますね。
KOZZY:ソロで誰かを励ますような曲を出したので、マックショウでも同じようなことを唄うのに抵抗がなくなったね。ただ、僕は誰かにそんな言葉を言ってあげたいと言うよりも、自分の曲に自分が言ってもらってると思ってるから。マックショウのお客さんたちには僕らが元気に演奏してること自体がメッセージだと今までは思ってたんだけど、もし何かしらのメッセージなりアドバイスを言えることがあるとしたら、こんな感じかな? っていう。そんなことを言えるくらいの歳にはなったのかなと思うね。
──極めてクオリティの高い作品をコンスタントに発表できているし、理想とする音の追求はしてきたし、メンバー3人でやれる最大限のことは突き詰めているし、アメリカでライブをやっても諸手を挙げて受け入れられるし、ここまで来たらマックショウにやり残されたものって何なんでしょうね。
KOZZY:あとは売れるだけだろうね(笑)。ヒット曲を出すだけ。
TOMMY:それは難しいね(笑)。
KOZZY:自分たちの中でのヒット曲はいっぱいあるんだけどね。売れることを一度も追求してこなかったからこそ他のことを追求できたんだろうけどさ。コルツもある意味マックショウと同じような成り立ちで始まったんだけど、ライブ会場の規模が大きくなるにつれてどんどんつまらなくなったんだよね。ある程度売れていくと、自分のやりたかった本筋からは離れていってしまう。そこを何とか軌道修正できたから、今もコルツは存在できてるんだけどね。マックショウはそんなコルツの反面教師としてやってるところがあるし、地に足の着いた活動だからこそいいんだと思う。やっぱり、自分たちの手の届く範囲内で活動してるからこそ面白い。きっとお客さんもそうなんじゃないかな。安売りコーナーで叩き売りされるような作品を今まで一度も作ってこなかったのが唯一の自慢だからね。まぁ、安売りされるまでの枚数を作ってないっていうのもあるけどさ(笑)。