キャロルがいなければ今の僕らは影も形もない
──「カワサキ・レイニーデイ」は昨年他界したジョニー大倉さんに捧げたナンバーですか。
KOZZY:もちろんそう。実際に川崎に行って作ったんだけど、川崎に行くとなぜかいつも雨なんだよね。今でこそ駅のほうは新しいショッピングモールで栄えてるけど、東京から高速で降りた工業地帯のほう…ジョニーさんの生まれ育った辺りは未だに人通りが少ないね。僕は昔、あの辺の石油コンビナートで働いてたことがあるからよく知ってるんだけど。
──川崎は歌が生まれやすい場所ですか。
KOZZY:昔はこんな所で歌なんて生まれやしないと思ってたけどね(笑)。まぁ、工業地帯の辺りだけ時が止まってる感じはあるよ。昭和50年くらいで止まってる。まさにマックショウ向きのエリアだね。
──ジョニーさんが亡くなった時は、やはりかなり堪えましたか。
KOZZY:まぁ、やっぱりね。キャロルを結成した人だし、音楽的な才能もあった人だから尊敬してたし。ジョニーさんが「マックショウ、凄くいいよ!」っていろんなところで言ってくれてるのは知ってた。ちょっと前に奥様にお会いした時にも言われたんだよ。「ジョニーはマックショウのことが凄い好きだったから」ってね。
──ご本人との交流はあったんですか。
KOZZY:深い交流があったわけじゃないけど、何度かお会いしたことはあった。マックショウを好きでいてくれてたから、「ジョニーさん、ウチをバックに何か唄いますか?」って聞いたら、「いや、いい」って言われたけど(笑)。
──(笑)そんなエピソードを抜きにしても、「カワサキ・レイニーデイ」はマックショウ史上屈指の大名曲だと思うんですよね。
KOZZY:ああ、そう? 僕はこんな曲を好きなヤツいるのかな? って思ってたけど(笑)。
TOMMY:いや、分かるよ。俺も凄く好きだね。
KOZZY:ジョニーさんが唄ってくれたら嬉しいよね。そういう曲は今までもけっこうあって、「恋はキャンディ・ブルー」もぜひジョニーさんに唄って欲しいと思って作ったんだよ。それで自分でモノマネして唄ってみたんだけど(笑)。まぁそれはともかく、「カワサキ・レイニーデイ」はパッと聴くとビートルズっぽいけど、キャロルがいなければ絶対に出来なかった曲だからね。それを言ったら、キャロルがいなければ今の僕らは影も形もないよね。
──今回の『TWISTIN' CARNIVAL』は通算12作目のオリジナル・アルバムですが、これで活動休止前に発表したオリジナル・アルバムの枚数とタイ記録になりましたね。
KOZZY:遂にね。いつも次の作品のことまでは深く考えてないし、これで全部出し切って終わりでもいいやと毎回思うけど、まだ何かやれるんじゃないかって気になるんだよね。
──今年はコージーさんのソロ作がカバー集とオリジナルの2枚も出たことだし、マックショウの作品は休みでもいいかなと普通は考えるじゃないですか。それでもマックショウの創作活動にのめり込んでいくモチベーションが凄いなと思って。
KOZZY:今年はもういいだろ? と僕も思ったけど、待っててくれるヤツらがいるからね。
──やはり新作を求められると期待に応えたいというのが原動力ですか。
KOZZY:それは大きい。ただ、世のアーティストはみんなそうだろうけど、新曲ってこっちが期待するほど浸透してないからね。ライブで新曲をやり出すとお客さんはビールを買いに行ったりしてさ。まぁ、難しいよね。どんなアーティストでも「新しいのどうかな?」って構えるところはあるし、そこはみんなプレッシャーを抱えながら気合いを入れて新作に取り組んでると思うんだよ。でも音楽っていうのは結局、個々の思い入れだからね。僕だって好きなアーティストの思い入れのあるアルバムがもちろんあるし、それがよく分かるぶん、「新しいアルバム、要るの?」って思うことはあるよ(笑)。だけど、ツアーをやるにも手ぶらじゃ行けないからね。趣味で音楽をやってるわけじゃないから。
──カリフォルニアのライブでは「グリース・ミー」や「怪人二十面相」、「ナナハン小僧のテーマ」といった初期の重要曲がメインで演奏されていましたけど、近年発表されたフルスロットル・ナンバーをもっと聴きたい気もしますね。
KOZZY:アメリカではまた初期の曲から順繰りにやっていこうと思ってね(笑)。マックショウの前に2回デビューした経験のある自分にとって、マックショウは「もし今バンドをやり直せたらこうやるのに」っていうミュージシャンとしての思いを実現させたバンドなわけ。幽体離脱して、第三者的に自分を俯瞰してる部分が最初から凄くあるんだよ。ファースト・アルバムの音が悪いのも意図的なことだったし、3枚目のアルバムはけっこうキモだよね、みたいな狙いがあったりさ。だから僕はマックショウを始めたことでバンドの初期をもう一度味わえた。それと似たようなアプローチをアメリカのライブでやってるんだよね。向こうではまだ初期だぞ、って言うか。
TOMMY:広島からカリフォルニアのライブを見に来たヤツがいて、そいつは「最高のセットリストでした!」って。「昔のマックショウを見てるみたいで興奮しました!」って言ってたね。
KOZZY:だからアメリカではまだ初期なんだよ。荒いライブをやる初期のバンド。それを楽しんでやってるからね。新しいアルバムを出したからってプロモーション的に新曲を織り交ぜたセットリストをやる必要もないし、ちゃんとしたセットリストがない中でノリでやれる自由さがマックショウにはある。アメリカではそういう段階だね。