Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューヘンショクリュウ(Rooftop2015年10月号)

不穏な空気をダンサブルにお届け!
規格外の野性ファンクネス&先鋭ポップネス・バンドがJ-POPの未来地図を変色する!

2015.10.01

『NIPPOP』の収録曲は全部ダンス・ビート

──ハギハラさんはいつ頃からブラック・ミュージックに傾倒していったんですか。
ハギハラ:フィリピン人の母がそういう音楽が好きで、僕がちっちゃい頃から家でよく流れていたんですよ。母は特にEARTH, WIND & FIRE、KOOL & THE GANG、MJ(MICHAEL JACKSON)なんかを好んでいて、僕もサザンオールスターズよりも先にMJを聴いてましたね。ベースを弾くようになったのも、MJのライブ映像を見てベーシストが一番格好良かったからって理由が半分はありますし。ヘンショクリュウの音楽がファンクっぽくなっちゃうのに深い理由はなくて、子どもの頃から当たり前のように聴いてきたものが自然とにじみ出てるんじゃないですかね。
──ファンクを基軸としながらも、それ一辺倒にはならないひねくれさやへんてこさがヘンショクリュウの音楽にはふんだんに盛り込まれていますよね。どんな音楽的素養とセンスが組み合わさったらこんな音楽になるんだろう? と不思議に思うくらいに。
ハギハラ:まず第一に、3人の音楽的趣味が違いすぎるっていうのがありますね。大爆発のルーツはJ-POPで、エルベッコは60年代、70年代のアメリカの音楽が特に好きなんですよ。
隅田川:ビーチ・ボーイズとかラズベリーズとか。あと、カントリー・ロックとかブルースも好きです。パンクも好きだし、割と何でも好んで聴きますね。
ハギハラ:そういうバックグラウンドがあって、なおかつ僕の作る曲がどうやら変わっているらしいので。
──相当変わってますよね(笑)。曲作りはいつもどんな感じで進めているんですか。
ハギハラ:バイト中にグラスをキュキュッと洗いながら曲が浮かぶことが多いんですよ。歌詞は言葉の意味よりもグルーヴを優先するように意識してます。意味はその後ですね。たとえば語尾の言葉の母音が“い”で終わっているなら、次に来る言葉はどの母音で終わったほうがグルーヴィーに聴こえるかとか、そんな感じで。そういう作り方をしているからヘンになっちゃうのかもしれないです。
──でも、ご自身では「割と普通の音楽」という認識なんですよね(笑)。
ハギハラ:そうなんですよ。僕はこの世に存在するミュージシャンの中で椎名林檎さんが一番好きで尊敬しているんですけど、林檎さんの作風を模倣していたのに全然似なかったんです。
──林檎さんのどんな部分に影響を受けたんですか。
ハギハラ:今でもよく覚えているのは、東京事変の「能動的三分間」を初めて聴いた時にMJみたいで凄く格好いい! 日本人じゃないみたい! と思ったんですよ。CDが発売されて次の週の『ミュージックステーション』を見たらオリコン・チャートの1位になってて、日本でもこういう音楽が1位を獲れるんだ! って感動したんです。僕が中学3年の時だったんですけど。それ以来、他にもいろいろとJ-POPを聴いてみましたけど、林檎さんみたいなミュージシャンって他にいないんですよね。代わりになる人がいない。そこが好きですね。
──なるほど。『NIPPOP』は曲間がシームレスにつながっているので、5曲がひとつの組曲のようにも聴こえますが、これはどんな意図があったんですか。
ハギハラ:つなぎ目がないのは僕の好みですね。アルバムのどれか1曲だけ聴くって感覚が僕には分からなくて、いつもCD全体を通して聴くんです。ビートルズもアルバム全体を通して聴かせるじゃないですか。アルバムってそういうものだと僕は思っているので。洋邦問わず、近年のアルバム作品ってストリーミング集みたいになってるし、ちょっと寂しいなって思うんですよ。
──「やめられない」から「悪ション×3」への畳み掛ける流れなんて最高ですけどね。無条件に腰にクる感じで。
ハギハラ:実はこの『NIPPOP』には死ぬほどオマージュが込められていて、これはメンバーにも話してないんですけど、「やめられない」から「悪ション×3」のつなぎはブーツィー・コリンズへのオマージュなんです。ブーツィーのファンじゃないと気づかないと思うんですけど。
──アッパーな煽情的ナンバーが続く中で、メロウな雰囲気の「今夜は朝まで」は一際目立つ正当派のバラードですね。
ハギハラ:あれ、バラードに聴こえますか? 加茂さんにも同じように言われたんですけど、僕としては「今夜は朝まで」も含めて全部ダンス・ビートのつもりなんですよ。「今夜は朝まで」はゆったり踊れるナンバーって言うか、スローだから一番手数が稼げるって言うか、格好良く聴かせられるプレイがいっぱいあるんです。
──「逃げ出したい」は一度聴くと“一難去ったらまたもや一難/また一難 ほらまた一難”という印象的なフレーズが耳から離れなくなりますね。
ハギハラ:僕の生活状況を端的に表した曲ですね(笑)。最初はミニ・アルバムではなく「新しい踊り方」をシングルとして出す予定だったんです。で、「新しい踊り方」を録ったら亀田さんと井上うにさんのミックスがあまりに良すぎて、加茂さんにも「いい音すぎてびっくりしたね」って言われたんです。そこで手応えがあったので、あと数曲入れることにしたんですよ。ただそれから曲を一生懸命作ったものの、メンバーからダメ出しされまして。大爆発からは「ダメだね、ダサイね」って一刀両断されて。
奥村:俺、そんなキツいこと言った?(笑)
ハギハラ:今ちょっと盛りましたけどね(笑)。
隅田川:実際には、奥村君が「このタイミングで新曲をすぐにでも作らないとね」って励ます感じで言ってたんですよ。
ハギハラ:でもホントに新曲どうしよう? どうしよう? って悩みまくって焦りばかりを感じていたので、それでそのまま「逃げ出したい」って曲が出来たんです。高校生の頃の「バイトをサボりたい、学校へ行きたくない」って気持ちを思い出しながら。「バイトしたくない、したくないけど新作のゲームは欲しい!」みたいな(笑)。
──Suicaのチャージも3回はしたくないと?(笑)
ハギハラ:“Suicaにチャージ、参回目”って歌詞は、Suicaのチャージって便利だなって思ったので。
──そのまんまですか(笑)。
ハギハラ:最初はSuicaの使い方がよく分からなかったんですけど、レコーディングを重ねていくにつれてその便利さを覚えまして。
 
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1st album
NIPPOP

Great Hunting POCS-1346
定価:1,500円(税込)
2015年9月9日(水)発売

amazonで購入

【収録曲】
1. 新しい踊り方
2. 逃げ出したい
3. 今夜は朝まで
4. やめられない
5. 悪ション×3

LIVE INFOライブ情報

『変色竜日本譜発売記念』
二千十五年十月十四日(水)下北沢SHELTER
出演:ヘンショクリュウ/yEAN/ドミコ
開場 18:30/開演 19:00
前売 2,300円/当日 2,700円(共にドリンク代別)
問い合わせ:SHELTER 03-3466-7430
 
十月五日(月)本八幡3rd stage
十月十二日(月・祝)MINAMI WHEEL 2015
十月二十四日(土)名古屋ell. FITS ALL
十月二十五日(日)大阪club JANUS
十一月二十六日(木)渋谷TSUTAYA O-nest
 
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