──東京事変のメンバーでもあった亀田誠治さんが「新しい踊り方」をプロデュースしていますが、特にハギハラさんは大きな喜びとともにプレッシャーもあったんじゃないですか。

ハギハラ：今回の件は後にも先にも、自分の人生の中で一番輝いてる瞬間だと思いました（笑）。僕らみたいなド素人がいきなり亀田さんと一緒にレコーディングできるなんて、まずあり得ないじゃないですか。

奥村：夢見心地じゃないですけど、レコーディングした時はなんだか頭がおかしくなっちゃって、現実と現実じゃないことの区別がつかないまま次から次へと作業をしていた感じですね。

ハギハラ：分かる、分かる（笑）。

奥村：そうこうしているうちにレコーディングが終わってしまったので、日を改めて亀田さんに「ありがとうございました」って言いに行きたいですね。あの時はただポカーンとしているだけだったので。

隅田川：僕は亀田さんが椎名林檎さんのバンドで弾いてた凄いベーシストっていうのは知ってましたけど、他のことは全然知らなかったんです。ただ周りが「亀田さんと一緒にやれるなんて凄い！」って騒ぐものだから、レコーディング当日は凄い緊張したんですよ。でも亀田さんは優しく大らかに接してくれて、そのおかげでリラックスして録れましたね。

ハギハラ：ワンテイク録るごとに笑顔で「いいね！」って最初に言ってくれて、その後に思ったことを助言してくれるんです。

奥村：あの、僕、どうしても言っておきたいことがあるんですけど…。

──何でしょう？

奥村：できればこれ、太い字で書いて欲しいんですけど、初めて亀田さんと会うことになった時に僕も凄く緊張しちゃったんですよ。でも初めて会話した時にいつものように僕がバカみたいなことを話したら、亀田さんがめちゃくちゃウケてくれたんです。その瞬間に凄い感動しちゃって、もし自分が自伝を書くことになったら「あの亀田さんに俺の話がウケた」って書こうって心に誓って。

── ……えっと、それを太字に？（笑）

ハギハラ：もうお気づきかと思うんですが、彼はかなり変わった人間なので真に受けなくて結構です（笑）。

──はい（笑）。亀田さんから学べたのはどんなことですか。

ハギハラ：レコーディングがとにかく夢見心地すぎて、何かを学べたとか冷静なことは言えませんね。ただ、それまでずっと熱心にコピーしてきた本人からアドバイスをもらえたのは凄く嬉しかったです。そもそも僕は亀田さん主催のベース選手権大会で決勝戦に行かせてもらったことがあって、亀田さんとお会いするのは初めてじゃなかったんですよ。それ以来、何度かベース選手権の飲み会に参加させてもらったりもして。でも最初、その亀田さんが「Great Hunting」の審査員だったのを僕は全然知らなかったんです。なんせ適当に応募したものですから（笑）。ベース選手権の飲み会で「せっかくバンドをやってるなら『Great Hunting』に応募してみたら？」って亀田さんに言われて、調べてみたら2ヶ月前に応募してたんです（笑）。

奥村：亀田さんがプロデュースしてくれた「新しい踊り方」は昔からもの凄く好きな曲で、ライブでもやりたいとずっと思っていたんですけど、作った当の本人はそういう気持ちじゃなかったみたいで。

──ああ、唄いながら弾けないという曲ということで。

ハギハラ：それもあるし、バンドを始めた当初の曲だから単純に恥ずかしくて。今作ってる曲が恥ずかしくないってわけじゃないんですけどね。基本的に人前で披露するのは恥ずかしいので。まぁ、結果的には周囲の反応も上々みたいで良かったですけど。

──ジャケット・デザインは椎名林檎さんやスピッツのアートワークなどで知られる木村豊さん（Central67）が手がけているんですよね。ドン・キホーテの手描きポップみたいな凄まじいインパクトがありますけど（笑）。

ハギハラ：東京五輪のエンブレム問題どころの話じゃないですよ。これこそ訴えられてもおかしくないデザインですから。訴えられて話題になって売れればいいのに（笑）。

奥村：木村豊さんとのミーティングは話の広げ方が悪ふざけみたいな感じで凄く面白かったんですよ。「ドンキってヤンキーの溜まり場みたいだよね？」みたいな話からああいうジャケットになったんです。

ハギハラ：僕がドンキの話をして、「手描きのポップがジャケットになったら面白くね？」みたいなことを言ったら、豊さんが面白がってくれたんです。

──『NIPPOP』だけに手描きのポップっていう（笑）。

ハギハラ：海外のヒップホップ・アーティストはギャング出身が多くて、若者がそのスタイルを模倣していると。それを日本に置き換えて皮肉を交えてたとえると、ドンキに溜まってるヤンキーだろうって話になって（笑）。その打ち合わせにはMVを撮ってくださったコトリフィルムの島田（大介）さんもいらっしゃって、ジャケットとMVに連動性を持たせたかったんですよね。

──それで「新しい踊り方」のMVはドンキ的ポップに囲まれた中で演奏しているわけですね。

ハギハラ：最初はホントにドンキの店内で撮影したかったんです。その許可が下りなかったので、コンビニのセットを借りてドンキっぽくして撮ったんですよ。