Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューせきしろ(Rooftop2015年9月号)

脱力系文学の奇才が描く徹底的に何も起きないサバイバル小説!? 9月23日発売!!

2015.09.01

 2006年に発売されドラマ化もされた人気著書『去年ルノアールで』を始め、共著では天久聖一氏と椎名基樹氏との『バカはサイレンで鳴く』、またピース又吉直樹氏やバッファロー吾郎A氏などとも数々の話題書籍を出版し、ロフト系の会場では独特の視点から切り出したゲームやテーマが印象的なイベントを開催している人気文筆家、せきしろ氏が小説を刊行する。イベント内では抜群な一言を発したり、その独特な雰囲気とセンスと不思議な魅力に圧倒されることもしばしば。あまりご自身のことを話す印象がないせきしろ氏。そんな彼にどんな歴史があるのか気になり、無理矢理昔のことをほじくり返していただいた。[interview:鈴木 恵&高橋 啓(Naked Loft)]

トウモロコシ畑で迷子

──せきしろさんは少年時代、どんな子どもでしたか?
せきしろ:一人でいることが多かったですね。子どもの頃に何をしていたかはあまり覚えていないんですけど、トウモロコシ畑で迷子になったことははっきり覚えてますね。トウモロコシの茎ってデカいじゃないですか? それでどこにいるか分からなくて迷ったことは覚えてます。
──それはまた独特な思い出ですね。テレビを見たりラジオを聞いたりはしていましたか。
せきしろ:はい、どちらも。ラジオは小5くらいから聞いていました。住んでいた街に科学クラブみたいな活動をする場があって、そこでラジオを作る企画があり、簡単なものでしたけど自分でラジオを作ってから聞くようになりました。北海道ローカルで『ベストテンほっかいどう』(現在も放送中のHBCラジオ音楽番組)という、毎日夕方から音楽のヒットチャートを紹介する番組をやっていて、それは毎日聞いていました。
──テレビはどんな番組を見てましたか?
せきしろ:当時ブームだった漫才を見てましたね。『オレたちひょうきん族』もその頃に始まったので、それもよく見ていました。
──中学校時代はいかがですか。
せきしろ:中学校ではバスケ部に入ってました。理由は特になく、なんとなく選んだんですけど。でもその時代は校内暴力がひどかったので、そっちの立ち回りの仕方が大変でした。
──せきしろさんはどういったポジションだったんですか。
せきしろ:僕はワルのグループでも地味なグループでも、どちらでも馴染める感じでした。バスケ部内でも、どちらでもない立ち位置でしたね。僕はやられない側の立ち位置だったんで助かりましたけど、やられる側の人はしんどかったと思いますよ。
──人との立ち回り方が上手なんですかね。
せきしろ:う〜ん、でも本当に上手かったら、今頃もっと出世してますけどね(笑)。
──その頃、勉強はしてましたか?
せきしろ:勉強はよくしていました。高校は別の街に行きたかったんですよ。こんなにヤンキーがたくさんいる街にいたら、今後大変だなと思っていたので(笑)。それで北見市の高校に行きました。その辺では一番大きな街で、勉強もできる高校だったので、そこに行きたかったんです。
 

音楽、バンド、プロレス、アイドル、少女漫画

──その高校時代はどんな感じでしたか。
せきしろ:中3の終わり頃から音楽が好きになって、当時、地元ではLOUDNESSとか44MAGNUMとか日本のヘビメタがブームだったんですけど、僕はハードコアのほうが好きでジャパコアにハマっていました。それで、高校の頃にはバンドをやったりしてました。
──どんなバンドが一番好きだったんですか?
せきしろ:GAUZE(ガーゼ)が本当に好きでしたね。
──当時、そういう音楽情報はどこで仕入れていましたか。
せきしろ:中3の時は、修学旅行で札幌に行き、UKエジソン(現在はヴィジュアル系CDショップ)という当時インディーズを扱っていた店でレコードを買ってました。一番最初に買ったのはSTALINでしたね。その後は『DOLL』(現在は廃刊になった音楽雑誌『DOLL MAGAZINE』)に広告が出てた通販で買ってました。
──そういった影響でバンドを組んだんですね。
せきしろ:情報が写真しかなかったので、見よう見まねでしたけどやっていました。最初はベースをやっていたのですが全然できなくて、その後やったボーカルもそんなにできなくて。最後のほうはコントでしたね。
──人前で披露する場はあったんですか?
せきしろ:文化祭でライブをやりました。高校の一つ上の先輩にミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)のクハラ(カズユキ)さんがいて、クハラさんのバンドを観たりもしてました。
──バンドをやっているとモテそうですね。
せきしろ:一切モテなかったですよ。BOØWYとかREBECCA、尾崎豊とかのコピーをやってる人はモテてましたけど、僕のほうは全然。クハラさんのバンドは人気があったと記憶してます。
──高校時代はバンドがメインでしたか?
せきしろ:同時期にアイドルも好きでした。菊池桃子さんとかの時代ですね。高校時代、一番好きだったのは姫乃樹リカさんでした。アイドルは小学校の頃から好きでしたし、ずっと女子が好きなんですよね(笑)。女子が好きなんですけど、暴力的なのも好きで、小中高とプロレスも好きでした。
──さすが幅広いですね。マンガは読んでましたか?
せきしろ:高校時代は『別冊マーガレット』が凄く好きでした。いくえみ綾(りょう)、紡木たく、くらもちふさこ、その時代に連載していた作品をたくさん読んでいましたね。
 

とにかく怒られるのがイヤだった

──その後の進路はどうしましたか。
せきしろ:高3の12月頃、もう卒業できると思ったから卒業式にも出ないで東京に出てきちゃったんですよ。
──それは急なタイミングですね。なんで東京に出ようと思ったんですか?
せきしろ:レコードがいっぱい売ってるだろうなと思ったんで。
──凄い理由ですね! いっぱい売ってましたか?(笑)
せきしろ:凄くいっぱい売ってました(笑)。あとアイドルのイベントもよくやっていたので、これはいいなと思って上京しました。親には一応、受験の下見と嘘を言いましたけど。
──一人暮らしですか。
せきしろ:はい、松戸に住んでました。上京して東京に住もうと思ってたんですけど、地理が分からなくて。当時、新幹線で上京すると上野が終点だったので、その辺で探していたんですが、なぜか結局松戸に住みました。千葉だという事実に全然気づかなかったんですよね。
──念願のアイドル・イベントは観に行ってましたか?
せきしろ:東急の屋上などでやっていたイベントには行きましたね。その頃はまだ姫乃樹リカもいて、さらにCoCoとかribbonとかが出始めの頃でいろいろ観に行っていました。
──大学受験もされてるんですよね。
せきしろ:大学は21歳くらいに受験しました。
──その空白の期間はどうされてたんですか?
せきしろ:親にずっと嘘ついてました、浪人してるからとか言って。でもさすがに嘘をつききれなくなって、21歳の時に慌ててやっと大学受験しました。福島の大学に入れて、教育学部だったので教育実習が必須ですけど、行けなかったんですよ、起きれなくて。
──え?
せきしろ:ドラクエVだったと思うんですけど…。
──ドラクエをやりすぎて起きれなかった?(笑)
せきしろ:はい。その後、もの凄くたくさん電話が来て、なんか怖くなっちゃって、すべてを投げ出して温泉宿に向かったんですよ。とにかく親に怒られるのがイヤだったんです。行方不明になると、怒る感情より心配のほうが勝るじゃないですか?
──(笑)
せきしろ:それで山形の温泉宿で住み込みのバイトをしました。
──その後はどうなったんですか。
せきしろ:松戸に住んでいる時、あるラジオ番組にハガキをよく投稿していたんですけど、その番組で若い作家を募集してるというのを友達から聞いて、名前を言えばなんとかなるんじゃないかと応募して、なんとなく置いてもらえることになりました。
──住み込みの仕事はどうしたんですか?
せきしろ:それも逃げ出しました。僕、だいたい逃げ出してるんですよね。その後は家もなく、再び上京してきたんです。友達の家とかにいましたね。コインランドリーにいたりもしました。今思うと怖いですよね(笑)。
──その辺りが作家になったきっかけだったんですね。
せきしろ:そうですね。月収は3,000円とかでしたけど。
──じゃあ、他にバイトなどをしてたんですか?
せきしろ:いや、バイトはしてなかったですよ。すぐに人を頼ってました。そういう面倒見のいい人っているじゃないですか?
──なるほど(笑)。では、今やってるようなお仕事が生業となったのはいつ頃からですか。
せきしろ:その時期に電気グルーヴのANN(オールナイトニッポン)とかもやっていて、そこの作家の椎名(基樹)さんに『SPA!』の連載とかいろいろな仕事をもらったりして過ごしていました。
──その頃はまだその仕事では暮らせてませんか?
せきしろ:全然暮らせてないですよ。今だって暮らせてないですよ、すぐ全部使っちゃうんですから。まぁ、なんとか食い繋いでるって感じですかね。
 
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2015年9月28日(月)
OPEN 18:30/START 19:30
前売 1,800円(飲食別)
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