初期を思い出すことがいっぱいあった
── 今作は橋本さんが作詞された曲も多いですよね。歌詞を書く作業はどうですか?
橋本:3人の最後のほうは本当にあまり書いてなかったから、この1年で歌詞を書くということを思い出しました。そういう目線で物事をいろいろ見るようになりましたね。
── 普段何気なく歩いていたことが、これ歌詞にしたいなと思うようになったというか。
橋本:そうです。うん。
── ということは、バンドとして原点に立ち返ったという感じもありますか?
橋本:形は変わったのに不思議なんですけど、初期を思い出すことがいっぱいでしたね。とりあえず楽器屋さんに行って機材を選んで、家でずっとエフェクターの研究をして、そういうのも当時は必死だから何も思わないんですけど、今となれば2人になりたての時にいろいろとやってたなぁって。
── そして、今回は後藤正文さんやジム・オルークさんが手掛けた作品も収録されています。一緒にやるにあたり、どういう経緯があったんですか?
福岡:まずプロデューサーさんを立ててみようという話になって、もっといろいろと吸収したいし、メンバーが1人減った分もうひとつ脳みそがあっても良いよねっていう話だったんです。それで、面白い人と3人ぐらいやりたいねってゴッチさんと奥田民生さんの名前が出て、もう1人このアルバムの曲をお願いするんだったらジムかなって。ジムは最初プロデューサーでやってもらおうかと思ったけど、どんなもんか予想出来なかったからエンジニアさんでお願いしたんです。
── もともとSONIC YOUTHを聴いていたとかもあったんですか?
福岡:もちろん好きですけど、ジムに興味があったんです。ずっと日本にいる感じとか、音楽やめるって言いながらやってるとか、何してるんだろうって(笑)。
── 一緒にやってみていかがでしたか? アイディアをたくさんもらったりしたんですか?
福岡:サウンドの録り方に関しては独特だから、私たちもやり方を見ながら手探りでしたけど、こうしたほうがいいよというアイディアは特に言われなかったです。「あなたたちから出た音を私は録りますよ」というシンプルな関係でした。日本人って感覚で伝えようとするんですけど、ジムはその意味を汲み取ったりとかしないから、「は?」とか「なんで?」とかめっちゃ言われましたね(笑)。それに対して全部理由を説明しないといけないんですけど、はっきり言わないとわからないよなというのは思い出させてもらったし、日本人はやさしいから理解しようとしてくれるけど、私たちもそれに安心して任せてたなって。ジムはアーティストやったし、刺激を受けました。
── ジムが手掛けた『初日の出』はボーカルに浮遊感があって面白い曲でしたが、この曲に対しては何て言ってました?
福岡:「ギターないの?」って(笑)。2回ぐらい聞かれました。ギターを入れないっていうことがよくわからないみたいで、「なんで入れないの?」っていう感じでしたね。
── 『ウタタネ』はどうでしたか? 「ベースないの?」とは言われなかったですか?
福岡:それは言われなかったです(笑)。
── 『初日の出』と『ウタタネ』は曲調も歌い方も全然違って対照的な曲ですよね。後藤さんがプロデュースした曲は、スロウなテンポで聴かせる『Yes or No or Love』と、シングルでリリースされているBPMが213の『きらきらひかれ』ですが、後藤さんとはどういうやりとりで進めていったんですか?
福岡:ゴッチさんにプロデュースをお願いしたら「速い曲作ろうよ」って話になって、私たちもちょうどそういうイメージがあって『きらきらひかれ』が出来て、もう1曲はゴッチさんが私たちのライブを見てくれた時に、あの曲やりたいって言ってくれて『Yes or No or Love』を録りました。
── もともとライブでは演奏されていた曲だったんですね。
福岡:2人になってから作った曲で、ライブではやってました。2人になって最初の対バンツアーにアジカンが出てくれて、その時に見てくれたんです。レコーディングの作業中もゴッチさんはやっぱりバンドマンでしたね。アジカンとチャットモンチーが何かしてるという感じがしました。
── 現役でステージに立っているので通じるところもあると思いますし。
福岡:フロントマンでまん中の人で、作詞作曲もしていますからね。私たちが2人でやるっていうことに対しては「アホやな」って言ってましたけど(笑)。
橋本:「俺だったら絶対しない」って。
福岡:もちろん愛のある言葉でしたし、楽しく話しながら出来ました。
── レコーディングの前に、ライブで一度演奏されている曲がほとんどなんですか?
福岡:ほとんど演奏してますね。今までそういう作り方はしたことがなかったんです。曲が出来てツアーで初めましての曲ばかりだったので、それもある意味挑戦でした。
── 演奏してみて、これはアルバムに入れようとか。
福岡:ライブの勢いが加味されるから、録ったらどうなるんだろうというのもわかるので、これはライブだけだなとか、これはまだ可能性あるなとか。前は曲のストックがたくさんあったんですが、2人になって一度リセットしたので、今までにないぐらいストックがないんですよ。