Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューcali≠gari(2012年1月号)

「常に想像の斜め上を」
ニュウアルヴァム、そして数々のロフトライヴの話を訊く!

2012.01.05

40のおっさんが何言ってるんだよ

── インパクトが強かったのが2曲目の『JAP ザ リパー』で、7曲目の『初恋中毒』でこういうポップさもあるんだと、いろんな表情を持ったアルヴァムだと感じました。『初恋中毒』はシングルでは青さんが歌っていましたけど、アルヴァムでは石井さんが歌い、雰囲気が全然違いますね。

「最初は石井さんが歌うというところで、体温がない感じで歌詞を書いていたんですけど、二転三転して僕が歌うことになって、それなら照れくさいことを歌ってもいいやって。でも、歌詞が出来上がるぐらいで石井さんが“アルバムは俺が歌う”って言い始めて、“ちょっと待って! だったら歌詞変えたのに!”って、もうてんやわんや(笑)。だから、この歌詞を石井さんが歌うことによって、すごく不思議な感じになる。僕が“恋愛偏差値26”とか“初恋中毒スタート”と歌っても、“40のおっさんが何言ってるんだよ”って感じでちょうど良いかなと思ったけど、石井さんにマジに歌われると困るんだけどなって。ただ、石井さんは歌ってる時に基本的に心籠もってないはずなのでそこが良いんですよ。前に“自分で書いた詞ではないから、それを理解しながら歌っていくのは俺には辛い”って言っていて。そういう割り切りがあるから、僕も前より自由に歌詞を書けるようになった。前は、石井さんが歌っても恥ずかしくないように、石井さん寄りにと意識的にあって、それが曲によっては良くなかったんだと思うし、バンドを駄目にしたんだとも思う」

── 最初は石井さんをイメージしながら作っていたんですか?

「歌い手の声をイメージするんです。でも、石井さんが歌ってもおかしくないような歌詞をイメージするということは、わけがわからない世界に歌詞も突入しなくてはいけない。あれは石井秀仁だけがやれば良いことであって、そこは僕の良さで書いていけば良いのかなと思うようになって。ていうかバンドにあの歌詞書く人間は二人もいらない!」

── 今回読者の方から質問を募集したのですが、その中に“青さんが愛について書きたかったと歌われた『初恋中毒〜BL編〜』(『#_2』収録)ですが、今、愛について心境の変化はありましたか?(HN:えり)”とありました。

「なんですって? 別に愛について書きたかったわけではないですよ。今回はラブソングを書こうかなというところのテストパターンです。ラブソングって難しいじゃないですか。“愛した”“恋した”“別れた”ぐらいしかテーマがないですから、それを千変万化のごとく、いろいろな引き出しを持ってくる「マッキー」や「小田和正」先生、ラブソングの帝王「崎谷健次郎」先生だと思ってますけど、皆さん本当に天才ですよね。僕ね、やっぱり恋愛偏差値が低いんですよ」(語り出す青さん)

── 恋愛偏差値は26なんですか?

(無視)「ハーレクイン・ロマンス(カナダのハーレクイン・エンタープライズ社が刊行している、若い女性向きの恋愛物語のシリーズ/コトバンクより)とか得意じゃなかったから、ラブロマンスってそんなに読んでなくて引き出しが小さいんです。もうちょっと読んでいたらと思うんですけどね。で、なんですって?」

── …愛について心境の変化はありましたか? だそうです。

「別にないですよ。これを書いたから変わるなんて、そんなに安い人間じゃないです。ホモとして生き始めて20年ぐらい経つんですけど、20年経った経験値を40歳で出してるだけであって、40歳からラブソングを書き始めるからと言って、心境の変化なんてないですよ。子供じゃないんだから!! 『初恋中毒』が40歳のおっさんのリアルな心境だったら気持ち悪いでしょ?」

── (笑)はい…。

「ここわかってほしいんですけど、40歳のおっさんが書いてるものであるけど、40歳のおっさんの私小説ではありません。ただ、生まれてから40歳になった期間の思いは詰まっています。綺麗な言葉で言うなら、当時の自分にタイムスリップをしてその時の気持ちで書いている。いろんな思い出があるんです。初めて恋をした時、初めてセックスをした時、その時の思い出がいっぱいしまってあるので、それを書いてます」

── 初めて恋をしたのは何歳だったんですか?

「必要? その話(笑)? 長いよ(笑)?」

── では話を変えましょう(笑)。『最後の宿題』ですが、これは懐かしさを感じる曲で歌謡曲っぽいかなと思いましたが。

「アーリー90'sの感じですね。ウチがよく作る甘酸っぱい感じ。デモを作っていた時に石井さんと“90年に入るか入らないかの時の、エピック系のエレポップをイメージしてみません?”という話になって。それも同期ではなくて、シンセ手弾きで」

── 『コック ア ドゥードゥル』も懐かしさがあり、これも90'sですよね?

「それ僕的には80's(笑)今回、意識した訳じゃないですけど、集めてみたら90'sが揃いましたね。『10』は80'sを意識していて、機材にもこだわりましたけど、今回はそういうことしてないのに90'sの感じが出ました」

── 『暗中浪漫』は、バブルの時代を感じますし。

「やっぱそう思う? かなりバブルっぽいですよね(笑)」

── 『11』に収録されている『東京、40時29分59秒』は、シングルの『東京、43時00分59秒』と歌詞のバージョンを変えたところにはどんな意図があるんですか?
「『東京、43時00分59秒』は、もともと30代最後の思い出に作るつもりでいたので、自分の曲の中では今回どの曲よりも力が入ってます。『東京、43時00分59秒』は30代までの思い出、『東京、40時29分59秒』は40歳になった想いを吐露する歌詞になっています。惜春という程ではないんだけれど、夢を語っていい年でもないし、もう今の僕たちが夢であるべきなので」

── タイトルがちょっと違うのは?

「秘密です! まさしくそのタイトル(『東京、40時29分59秒』)は昨日なんですよ。うふふ」

── 12月19日ということですか…。全然見当がつきません。ところで、読者の方から今回のアルヴァムについて“青さんが作った曲の中で一番制作に時間をかけた、またはかかってしまった曲はどれでしたか?(HN:りえ)”とありました。

「『最後の宿題』と『東京、40時29分59秒』に関しては、どちらも同じぐらい時間がかかってます。『東京〜』は詞を書き終わるまで6月いっぱい使ってます。なんとなく弾き語りで作っていって、形にするのに尺もサビもメロも5回ぐらいいろんなものが変わりましたから」

── また“ニュウアルヴァム『11』について、一番苦労した曲を教えて下さい。(HN:ヨキ)”とありました。

「一番苦労した曲は…。『#_2』の討論会に比べれば、どれもたいした苦労はしていない。あれはかつてない苦労をしました。発狂するような編集作業で、ひさびさに徹夜というものをこの年でやらされたため気が遠くなりました。それに比べたらどの曲も苦労してないです。でも、苦労するとか思わないですよ。好きなことやってるんですから」

良い意味でも悪い意味でも裏切れるからこそのcali≠gari

── そして、cali≠gariと言えばロフトでのイベントは毎回衝撃的なものが多く、2010年3月16日に開催した“『マネー¥金』”(当日、「チケット代34,200円は0をひとつ間違えてました」と言って入り口で返金するという伝説のライヴ)、2011年11月23日に開催した“SECRET「GIVES」”(チケットの発売方法をシークレットにするという前代未聞のライヴ)などがありますが、ああいうアイディアはどなたから出てくるんですか?

「マネージャーです。ライヴ当日に入り口で返金なんて、なんでそんなめんどくさいことするんだろうって(苦笑)」

── その金額でもチケットは売り切っていましたが。

「応募が1000越えてましたから」

── これに関して、“『マネー¥金』の34,200円のチケットが売り切れると思いましたか?(HN:まる。@)”と質問が来てました。

「なんとも言えないですよね。罪悪感のほうが強かったです。当日に返金するというネタがわかってるにしても、1回その金額を払わせるということが、このバンドって性格悪いなって。こういうことをやるとメンバーが悪くなるんですけど、よくよく考えて下さい。そういったことは一般的に言ったら許されるべき行為ではないのです。それが出来てしまうとういことは、たいていの場合まわりの人たちが悪ノリをしているんです。僕たちは悪くない(笑)!! なんにせよ売り切れてビックリですよ」

── 逆に言えば、cali≠gariだったらこの金額を払っても損だと思わせないライヴを見せてくれるはずだろう、何かしてくれるだろうという期待もあったんでしょうね、きっと。

「何かしましたよ。キャッシュバックっていう。でも結果的には3,420円でライヴという良心的な価格になったんですよ。そこをもっとフィーチャーして欲しいですね。なんでこの優しさが伝わらないんだろうって。まず、ウチの客はドMじゃないとやっていけないかもしれない」

── 僕がcali≠gariで一番ビックリしたのは、武道館のライヴ(2010年2月11日)が売り切れたことでしたけど。

「あれは想像出来ませんよね。最初の段階でチケットは売り切れないだろうから、360度使ってセンターステージでやろう。そしたら、おそらく8,000席ぐらい空くよねって(笑)。敢えてスカスカに見える形にしようって言ってたんです。そしたら次の日が大学の卒業式か何かで使うから、センターステージは作れないって言われて、しょうがないから普通の形でやりましょうって言って普通のやり方でやったら売り切れたんです」

── しかも即完じゃないのが面白いですよね。最後あと何枚ですってカウントダウンしてましたもんね。それで、まさかの売り切れ。

「ホントビックリしましたよ」

── 武道館のタイトルも“売り切れません、此処だけは________。マストライブ「解体」”。

「最終的には“売り切れました、此処さえも。”って」

── 常にお客さんを驚かせたいという感じはあります?

「それはあります。常に想像の斜めを行くような感じ。絶対にお客が想像してくるどれかとは違うことをやろうと思っています」

── それは、作品にしてもライヴにしても?

「そうしないと面白味がないですから」

── これからも、何が出るかわからないと。

「良い意味で裏切れたら良いんだけど、悪い意味で裏切ることもありますから(笑)。でも、良い意味でも悪い意味でも裏切れるからこそのcali≠gariだと思うんです」

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11

【初回限定盤CD+DVD】VIZB-17 / 4,200yen (tax in)
【通常盤CD】VICB-60081 / 3,150yen (tax in)
2012.01.11 IN STORES
FlyingStar
初回限定盤と通常盤を同時購入すると、武井誠が歌うフルアルヴァム『11』をプレゼント!!

#1-CD
01 吐イテ棄テロ
02 JAP ザ リパー
03 娑婆乱打
04 コック ア ドゥードゥル
05 その斜陽、あるいはエロチカ
06 アイアイ
07 初恋中毒
08 すべてが狂ってる 〜私は子供が嫌いです 編〜
09 暗中浪漫
10 最後の宿題
11 東京、40時29分59秒

#2-DVD
娑婆乱打/ミュージックビデオ
カリ≠ガリのTVコマーシャル「娑婆乱打」15秒スポット 発売後編
暗中浪漫/ミュージックビデオ
カリ≠ガリのTVコマーシャル「暗中浪漫」15秒スポット 発売前編
カリ≠ガリのTVコマーシャル「暗中浪漫」15秒スポット 発売後編
第1回 ヴォーカリスト石井秀仁インタヴュー
第2回 密室芸能ニュース ー桜井青さんの一日ー
第3回 むらい散歩 村井研次郎がゆく楽器フェアさんぽ
第4回 密室大陸 ヘビースモーカー武井(ドラマー、俳優、映画監督)
第5回 映画「愛と青春のme覚革命」予告編
特別編 映画「愛と青春のme覚革命」1シーン

スコア・ブック
カリガリの偏曲集

3,360yen (tax in)
B5判 / 256ページ / CD付き
2012.1.25 IN STORES

amazonで購入

LIVE INFOライブ情報

武井誠が歌うソロ・インストアライブ 
                                  できれば見逃せ!
2012年2月11日(土・祝)タワーレコード渋谷店 B1「STAGE ONE」
18時〜

3月17日(土)大阪地下室- 地下二階 -
3月20日(火祝)名古屋地下室- 地下一階 -
3月23日(金)東京地下室- 地下一八階 -

*チケット2012年2月11日(日)全国一斉発売
【出演】cali≠gari / アンドモレ *2012年1月11日 11:00公開予定
【料金】1F 立ち見 2F指定席 前売¥8,400 当日¥9,450( 税 込 ) DRINK代 別 ¥500
【総合問合】バックステージプロジェクト 03-5786-2400 (12:00~19:00)

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