ライヴ中の自分が溶けていく時の快感
──勉強はからっきしダメだけど(笑)、絵心は昔からあったわけですね。
M:そういうロック・バンドのロゴとかを描くのが大好きでしたね。ジャケットも単なる思い付きと言うかいい加減なんだけど、自分で描くのが好きなんですよ。今度のジャケットも何でこうなったのか自分でもよく判らないんだけど、これも期限を決めてやってるから浮かんでくるのかもしれないですね。別に強迫観念に追い立てられてるわけでもないんだけど。半年くらいはツアーをやりながらレコーディングをするモードだから、その間はジャケットをどうするかずっと考え続けてるんですよ。街を歩いてる時も“あんなTシャツいいなぁ、今度はああいうのを作ってみよう”とか思ったりする。そういうモードでいられるほうがいいんです。人間ってヒマだとロクなことを考えないと思うし、特に僕みたいな人間はヒマじゃないほうがいい。ヒマがあるとずーっとマンガを読んでるか寝てるだけですから(笑)。
──だからなんでしょうか、年内の土日・祝日はみっちりとツアーに充てられていますよね。
M:いつもそんなもんだけどね。やっぱりCDを作ったら“できたぞー! 頑張ったぞー!”って売りたくなるじゃないですか。そうするとライヴもまたやる気が増えますからね。
──体力的に辛くはないですか。
M:全然大丈夫ですよ。せいぜい酒の呑み過ぎにだけ注意をすれば(笑)。ライヴは一生懸命楽しむものだし、今でもいろんな所へ行ったぶんだけ勉強になるんですよ。楽器も知らない間に上手になったみたいだし(笑)。最近よく「上手になった」って言われるから。
──グレイト・リッチーズ時代から数えたら30年近くライヴをやり続けているマモルさんでも未だに新たな発見があるというのは素敵なことですよね。
M:発見と言うかね、これも言葉にするのは難しいんですよ。バンドでもソロでもいいんだけど、演奏して気持ち良くなってくると自分が溶けちゃうって言うかね。ライヴではそういうふうにギターも自分も全部溶けちゃうような感覚があればいいなと思うんです。まぁ、いつも最終的にはそんな感じになるんですけどね。
──それはオーディエンスと一体化できた時に訪れる感覚なんですか?
M:お客さんとの一体感じゃなくて、自分の身体が楽器と溶け合うんですね。そういう状態になって初めて出てくるものがある。そうするとアドリブも冴えるし、ちょっとした演奏のミスも大したことじゃないと思えてくるんです。その自分が溶けちゃう時の快感たるや凄くて、僕が今もずっとライヴをやり続けてるのはそれを味わいたいからだし、いくらやっても飽きないんですよ。だから毎回同じようなロックンロールをやってても飽きないんだと思う。
──心地好くロックンロールを奏でている間は健全でいられそうですね(笑)。
M:お客さんを楽しませたい気持ちもあるけど、その前にまず自分自身が楽しむのがライヴの目標だし、精神的にも健全でいいですよ。さっきも言ったけど、人間はヒマだと余計なことを考えちゃうからヒマじゃないほうがいい。僕も10年くらい前にリリースが途絶えていた頃はダラダラと余計なことばかり考えて行き詰まってたんです。でも、もちろん考えることも大事なんだけど、もうこんな世の中、深く考え込んでもしょうがねぇやって言うか。ビクビクしててもしょうがないから、自分にできることを精一杯やって、楽しんで生きるのが一番ですよ。
──『キャデラック4号』の歌詞にもある通り、“のんびりしてると死んじまう/あっという間の人生さ”だと。
M:それだけが僕のテーマですからね、いつでも。多分、それだけがテーマで今もこうしてロックンロールをやり続けてるんだと思いますよ。