不敵な存在感を放つヴォーカル=ポンタ、複雑なフレーズを弾きこなし、バンドの音楽的要でもあるギタリスト=キシノジュンヤ、飄々とした佇まいでバンドのムードメイカーとしても独特の味わいを滲ませるベース=DJラリー、そして可憐な風貌でありながら力強くキレのあるビートを刻むドラマー=けものけいか──個性的な4人が織り成すエキセントリックなアンサンブルが魅力のザ・モーニングス。
2003年の結成以来、ライヴ活動を中心にしてきた彼らが、遂にファースト・アルバムとなる『SAVE THE MORNINGS!』をリリースした。収められた10曲は、いずれもハードコア・パンクを基調に独創的なサウンドや手法を練り込んだ、実験的な色合い濃いアヴァン・ロック/ポップ。プログレ、ノイズ、エクスペリメンタル・ハードコア、ポストパンク......形容の仕方はいろいろあるかもしれないが、そのどれにもジャストにはあてはまらない堂々とした個性が屹立している。
ライヴの実力も折り紙つき。レコーディング作品よりも自由に激情を迸らせている感のある4人だが、その姿は決して熱くはない。不思議な温度感で繰り広げられるクールなパフォーマンスは、是非一度ナマで体験して欲しいと思う。地下ライヴ・シーンでは既に注目を集めている彼らだが、『SAVE THE MORNINGS!』という作品が出たことで、今年はさらに話題になること間違いなし。そんな期待の4人に話を聞いてきた。(interview :美馬亜貴子)
何かに似てるって思ったら、それはNGにしてます
── 遂にモーニングス初のファースト・アルバム『SAVE THE MORNINGS!』が完成しましたね。もうホントにユニークなバンドで、たちどころにファンになっちゃいました。
ポンタ(Vo, G, Syn):おお、ありがとうございます。
── このサウンドからは4人の音楽的嗜好がバラバラなんじゃないかという印象を受けたんですけど。
キシノジュンヤ(Vo, G:キシノ):その通りです。僕は元々ヘヴィ・ロックが好きで(笑)。KORNとかスリップノットとかデフトーンズとか。7弦ギターとかも持ってたんですよ。でも一番のきっかけになったのはポステージ・エラってバンドがいて、それがエモみたいな感じなんですけど、変拍子とかストレンジなこともやってて、これは凄いなと。大学入ってからディスコード系のバンドを聴いてはいたんですけど。
── ああ、フガジとか?
キシノ:ええ。そうしたものを聴いてはいたんですけど、自分達の音楽は、基本的に好きで聴いてる音楽とは違ったものを作るようにしてますね。誰かと似たことはしたくない。僕は影響とかってことは考えないようにしてて、自分の思いつくものを自由にやるようにしてるんですけど、何かに似てるって思ったら、それはNGにしてます。
── 曲はキシノさんがプロトタイプを作って、それに他のメンバーがあれこれ乗っけて行くって感じですか?
キシノ:そうですね。ベース・ラインとかも作ってきて「こんな感じなんだけど」って聴かせて、実際みんなでやってみると変なものができるんで、それをまた家に持って帰って続き作って、そうして出来た変なものをまた聴かせて……って感じですね。
── スタジオでインプロヴィゼーションしながら作ったりはしないんですか?
キシノ:しないですね。でも、たまたま出した音が「これいいね」ってなることは多いですね。
── その「これいいね」って感覚は、全員が共有できてるの?
けものけいか(Dr:以下けいか):そうですね。このバンドっぽい、っていうのは言葉では言えないんですけど、正解があるからそこに行こう、みたいなとこですかね。わりとみんな納得したことしかやらないから。
ポンタ:そうだね。一聴して「これはちょっと、どうなんだ」ってものでも、やってくうちに良くなる曲はやっぱり残っていく。
── そういう意味でもメンバーの“ツボ”は一緒なのかな。
けいか:いやぁ、そうでもないですね(笑)。
キシノ:僕的には全部ツボなんですけど……。
── キシノさんは、みんなに「これどうですか?」ってプレゼンする立場なんだ(笑)。
キシノ:「俺は絶対カッコよくなると思うけど、どうかな?」って。
ポンタ:でも反対とかされても、こいつは押し切ります。「だんだん好きになってくると思うから」とか言って(笑)。
けいか:ライヴで試して、そこからいろいろ変えたりすることもあるんで、「やってみようよ」って言われたらとりあえずやってみますね。