日本のロックやパンクが欧米のそれに劣るとは微塵も思わないけれども、民謡クルセイダーズのデビュー・アルバムを聴くと、古代から続く伝統的な歌唱曲である民謡こそ日本が世界に誇るソウル・ミュージックなのだと実感する。なんせ無条件に血が騒ぐのである。民謡という日本固有のフォークロアに、ラテンやブーガルー、アフロにクンビアといった多彩な音楽を融合させて新たな魅力をあぶり出す手腕が実に見事で、メンバー各自の演奏スキルと辺境音楽の精通ぶりはかなりのもの。だがそんな学究的なことは一切気にせず、血湧き肉躍る音とうねりを理屈ぬきで体感するのが一番。そう、理屈じゃないのだ。たとえば「会津磐梯山」のエンヤー、「炭坑節」のサノヨイヨイといった掛け声。言葉自体に意味はないが、内なる感情や思いの丈を表す重要なフレーズである。あれこそ音楽でしか伝えることのできないステキなサムシング(カモン!)。これぞ日本民謡ニューウェイヴの金字塔!(椎名宗之)