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zArAme / lastorder

2016.01.04   MUSIC | CD

DFF1
1,620yen(tax in)
発売中

1. いびつなうかつ
2. ラストオーダーはディスオーダー
3. obsession
4. laches
5. abstract division
<ゲストヴォーカル>
かくら美慧 (SOSITE) [M-2]
蛯名啓太 (Discharming man) [M-5]

晩年の吉村秀樹(bloodthirsty butchers)が表舞台へ連れ戻そうと躍起になっていたタケバヤシゲンドウが遂に帰ってきた。
東日本大震災支援のチャリティCD「吉村秀樹×浅野忠信×竹林現動×NBC作戦」に収録されていた、ゲンドウのペンによる吉村とのコラボ楽曲「zarame」はブッチャーズ後期のライブSEに使われていたことでも知られるが、その楽曲タイトルがゲンドウの新たなバンド「zArAme」へとつながっているのは言うまでもない。
そのことからも、長らく鳴りを潜めてきたゲンドウの再びバンドを始めた契機が吉村の死であったことは想像に難くない。
その始動要因こそとてつもなく悲しいことではあるけれども、日本のオルタナティブの至宝とも言うべきゲンドウの再始動は手放しで喜びたい。吉村もそれをずっと望んでいたはずだし、ノイジーでジャンクだが残響と余韻が圧倒的に美しいという如何にもゲンドウらしい歪みの美を存分に堪能できるzArAmeの『lastorder』は、EPサイズながら復活の狼煙を上げる一撃としてインパクトも充分だ。
後期のCOWPERSを彷彿とさせるドライブ感、夏の夕暮れの情景を脳内喚起させるメロディが煌めく「ラストオーダーはディスオーダー」はまさに僕らがずっと待ち望んでいた音像だし、まるで7年間にわたる潜伏期間の思いの丈を吐露するような狂気の独白が胸を衝く「abstract division」からは4人の一体感と個々のプレイの凄味、ゲンドウがこのバンドでしか成し得ぬ音の追求に可能性を見いだしている様が窺える。
繰り返し聴くと、一筆書きのように思える感性の爆発アンサンブルが実は丹念に描き込まれた油絵の如き緻密さがあることに気づかされるし、終始ザクザクギュンギュンドカスカブンブンと耳をつん裂く鋭角かつ重厚な鳴りがふくよかな円熟を醸し出す瞬間も垣間見えるのは、個々が積み重ねてきたキャリアが為せる技だろうか。
いずれにせよ、この『lastorder』は関東圏のデビュー・ライブでゲンドウが言い放った「死に絶えるまでやります」という言葉が決して嘘ではないことを確信できる作品であり、7年の空白を埋めるリベンジの季節がようやく訪れたことを高らかに告げる至上のハーベストと言えるだろう。(Rooftop:椎名宗之)

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