「南京事件」は本当にあったのか、なかったのか。南京事件を題材にした本で、ここまで表紙から結論がわからない本はなかなかないだろう。この本は、ジャーナリスト清水潔がとことんその事件に向き合い、事実のみを突き詰めた真のジャーナリズムの記録である。また、読み終わった後、自然と「戦争」について考えることになるだろう。戦争の怖い部分の一つは、目の前にいる人間を平気で殺せるような人格になってしまうことである。南京事件について、「日本人がそんなことするはずがない」という考えは間違っている。日本人であろうが何人であろうが関係なく、戦争は人間を残虐な殺人鬼に変えてしまう可能性があるのだ。1937年に中国で大虐殺を行った日本兵は、私と同じような考えで、同じような毎日を送っている人だったかもしれないと考えると、背中がぞっとする。なぜこの事件は否定され続けているのか。事実を知ろうとしないことは罪である。（ロフトプラスワン：山口優歌）