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自己愛な人たち/春日武彦

2012.07.10   CULTURE | BOOK

講談社現代新書 / 740yen

 「自己愛には、一定の濃度でグロテスクという要素が混入しているのである」。多くの臨床体験と小説の引用から多角的に自己愛を考えるいつも通りのフォーマットで安心のザ・春日先生本。鬱病で入院する妻につきそってやってきてA4の紙に7枚もびっしり経緯を書き、バリトンの声で朗々と説明する夫の話はイヤンな感じ。顔にシリコンや食用油を自分でどんどん注射、壊滅的な顔になる扇風機おばさんまで登場したのには驚いた! 興味の幅が文学と医療だけに限らず広いのだなぁと実感する。お得意の分野でスラスラかけたのかと思ったこの本書、実は難産だったと後書きで語られている。「わたしが自分自身の自己愛を扱いあぐねているところが多分にあるので、執筆中に身につまされた」のだという。なるほど。確かに読んでいる方としても「わーこんな実例やだなぁ」と思いつつ「身につまされる」思いを多々させられる、鏡のような書物である。(尾崎未央)

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