ロックフェス「夏の魔物」主催の成田大致による空前絶後のロックバンド"THE夏の魔物"が、7月26日・27日に下北沢SHELTERで初の2DAYSワンマンライブ「SHELTERの魔物2DAYS〜Live or Die〜」を開催する。ただ純粋にやりたいこと、誰もやったことのないことをひたすら追求し続ける熱き思いを、リーダーである成田大致に語ってもらった。走り続けるTHE夏の魔物の「イマ」を見逃すな!!! [interview:義村智秋・安 佳夏(下北沢SHELTER)]
俺たちにしかできないこと
----バンドの成り立ちが非常に珍しいと思うのですが、どういった経緯で結成されたのか、どのように今のTHE 夏の魔物のような形になっていったのか、教えて下さい。
成田大致(夏の魔物主催 / THE 夏の魔物Vo.):端的に言うと、ヒロトさん・マーシーさんがものすごく大好きなんですけど、彼らがやっているような音楽と同じことをやるわけではなく、俺たちにしかできない、誰もやってないアプローチのものがやりたいっていうのがありました。それで、自分だけのオリジナルってなんだろうって思って、人生で見てきたものや感じたことを表現しようとしたら、紆余曲折ありながらも今の方向性になったんですよね。こういうサウンドを出していきたいなっていうのがみえてきた。
----メンバーはどのように集まっていったんですか?
成田:まず長年のパートナーである大内さんは、Twitterで繋がって。俺が面白い人をブックマークしてるリストがあって、その中の1人だったんです。この人だったら何もかも深く分かり合えるんじゃないか、と思って声をかけたんです。全く面識もないのに(笑)。やっと出会えた運命の人レベルに話が盛り上がったから、この人となにかやりたいなって思って。次はアントーニオ本多さんかな。サムライTVっていうプロレス専門チャンネルでアントンさんが出ていた『マッスル』という興行を見て、存在を知ったんです。試合も喋りも面白くて、フェスをやるってなったときに、MCを立ててみようと考えたのですが、アントンさんが浮かんで。フェス2年目からずっとMCで出てもらい、1年に1回、会う度にロックの話で盛り上がって。そういう風に1年に1回お互いのことをゆっくり話す、くらいの仲だったんですけど、俺が上京してきたときにアントンさんと音楽やりたいなと。大内さんと一緒ですね。で、アントンさんに、今こういうバンドを組もうと考えてて...っていう話をして。そのちょっと前に、アントンさんはロックでポエジーな生き方をしてるので、歌詞が書けるんじゃないかと思って作詞依頼をしたら、やっぱり自分が音楽で表現したいことにものすごく近くて。アントンさんが歌詞を書いてくれたことによって、曲に気持ちを込めるという基本的な部分を見つめ直せたり、歌というものに対する向き合い方が変わって。ボーカリストをやりたい、歌いたいと本気に思わされたきっかけのひとつです。ただ、頭の中でしか鳴ってなかった音楽をより立体的に描けるようになったのは泉茉里と出会ってからですね。チャン(泉茉里の愛称)と一緒に歌うことがなかったら、今のサウンドの方向性に振り切ろうと思うこともできなかったと思います。
----鏡るびいさんはオーディションでしたよね。
成田:るびいに関しては、当時のレコード会社との絡みとかで新しいメンバーを入れなきゃいけない事情があったんですよね。オーディションを開いてアイドル的な要素を強くするみたいな感じだったんですけど、俺はそういう方向でやりたいわけじゃなかったから、やりたい音楽の領域に踏み込まれるのが嫌だっ たんです。単純に魔物の目指す理想のロックンロール像を一番理解できそうな子を独断で選びました。
いま、THE 夏の魔物が真のバンドになる時
----メンバーチェンジも紆余曲折もありましたが、今後はどうなっていく感じでしょうか?
成田:去年の1月、前身バンドの「夏の魔物」を活動終了し、「THE」をつけて「THE 夏の魔物」を結成してバンドサウンドを追求し始めたのですが、ロックバンドになったことによって予想もしなかった出来事が次々と起こって。より音楽的になっていけばいくほど、表現したい音楽や、メンバー間の音楽性やイデオロギーの違いが出てきたことに驚きました。自分はなんとなく、この面々でずっと続いていくんだろうな、なんてボーッとしてたので(笑)。日々変化し続けるのは自然なことだし、それほどまでに音楽に全員が真剣に向き合ったからこそこうなったのかな、と思います。自分自身もこんなにもやりたいことが溢れ出てくるなんて思いもしませんでした。
----ますますロックバンドになっていっているTHE 夏の魔物ですが、今後の展望などはあるのでしょうか。
成田:今、バンド的にはセカンドシーズンで、やりたいことに向かっているところで。ちょうどSHELTER2daysは次のアルバムの予告編というか、そういう輪郭が見えてくるライブになる気がしています。ファーストアルバム以後はやりたいことがより明確になっていて、今はTHE 夏の魔物が真のロックンロールバンドになれるかどうかの時だと思うんですよね。俺にとっては、「セカンドアルバムを作る」という出来事は初めてのことで。でも、常にリアルタイムで実験的なことにチャレンジしていきたいのでこの後どうなっていくのかわからないというのが本音です。
伝えたいことが自然発生してきた
----様々なアーティストに楽曲提供を依頼しているということでも話題になっています。成田さんは細かく要望を伝えて曲を作ってもらっているそうですが、曲作りはいつもどのように進められているのでしょうか。
成田:映画と同じような感覚ですかね。それぞれの役割の人が作業を分担するような感じ...と、俺は思ってたんですけど、やっぱり世の中の人はすごい人たちとやってる、みたいな印象しかないんだなっていうのを感じて。自作であろうが提供であろうがどっちでもいいと思ってたんですけど。世の中的にはバンドって言っている割には借り物、みたいな言われ方をしはじめてしまって。ただ、「良い音楽を届けたい」って思ってただけだったんで、あんまり意識してなかったんですけど。今は、それを言われたからじゃないですけど、自発的に伝えたいこととかやりたい音楽が自然と出てきて。ライブと曲作りも直結してくるようになったし、バンドをやっていく中でいろんな出来事が起こって、伝えたいこととか歌いたいことが自然発生していったんですよね。これはやっぱり誰かに書いてもらうより自分たちの言葉で書いた方がより伝わっていくんじゃないかなと。特に「音楽の魔物」っていう曲が、THE 夏の魔物の周りで起こったこととか出来事が全部詰められてて、そういう自分たちのリアルな体験を言葉にしたりしたのはその曲が初めてなので、今までと響き方も違うかなって思ってます。
----7月26日、27日に「SHELTERの魔物2DAYS〜Live or Die〜」が開催されます。2daysにしたのは何か意図があるんですか?
成田:やったことのないことをやってみようというのと、あと単純に曲が増えてきたので、やっぱり1日だとはみ出るしなぁ...とも思って。そういうことを思えたのも初めてなんですよね。今までは、曲が足りないからどうしようって、なってたこともあるんですけど。今回は2日間でコンセプトも変えていろいろな曲をやろうと考えてます。タイトルは「Live or Die」ですけど、俺は常に生きるか死ぬかのライブしかしたくないんです。でも今回2日間になってしまったのでどうやってやろうっていうのが今の悩みなんですよ(笑)。死と新生、ではないですけど、2日で衣装も変わったりするので、これまでとこれからみたいなことも明確に見えるライブになるかなと思っています。
「今」の姿を見てほしい
----では最後に、2daysに向けての意気込みとファンに向けてのメッセージをお願いいたします。
成田:最近、なんでTHE 夏の魔物をやっているのか、なぜバンドじゃないとい けないのかって考えさせられる機会があって。そもそもカテゴライズできるよ うなものでもないし、自分たちのやりたいことを、より一層やりたいようにやっていこうって思ったんですよね。ただ、これを続けてたら魔物は唯一無二のオリジナルになれるだろうし、見たことない景色を見られるだろうという予感が日に日に増してるんですよ。この選択が正しいかどうかはこの先の俺たち次第だし、未来のことも明日のこともわからないけど、とにかくみんなでやりながら考えていこうぜって。俺たちTHE 夏の魔物は今を生きていて、その姿はライブハウスにあるし、そこを見て欲しいなといつも思ってます。ライブを見たことがない人も、今回せっかく2日間あるので、先入観なしに1回見にきてもらえたら嬉しいです。