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GRASAM ANIMAL(Rooftop2018年7月号)

 「オーソドックスだけど新しい」。GRASAM ANIMAL《グラサンアニマル》の音楽を端的に言えばつまりそういうことだと思う。ブラジル音楽やファンクの要素を取り入れながら独自に解釈したサマーソングが耳の肥えたリスナーや眼識のあるライブハウスからすでに熱烈な支持を得ていた彼らが新興レーベル「EIGHT BEATER」(ピンときたあなた、同志ですね)からファースト・アルバム『ANIMAL PYRAMID』を発表してから早1年、配信限定シングル『LOVE OIL c/w あの子の心臓に』をリリースする。パンクもオルタナティヴもダンスもファンクもサーフもブラジリアンも一緒くたに呑み込んでグラサン流にチャンプルーすれば、辿り着くのは極上のポップ・ミュージック。弱冠20歳のYOUNG SOULならではの才気煥発は徒手空拳でデタラメなエネルギーに溢れているがゆえに美しい。グラサンが放つ新世代型ロックンロールの奥深い魅力について、バンドの枢軸を担う木屋和人(vo, g)に聞いた。(interview:椎名宗之)

「死」や「老い」の妄想から生まれた新曲

──EPにもファースト・アルバムにも収録されていた「Sir, Fried Monster」のように無条件で踊れる曲がGRASAM ANIMALの特性を端的に物語っていると思うのですが、今回の配信限定シングル「LOVE OIL」はその路線ともまた違う感じで攻めてきましたね。

木屋:ああ。どう思いました?

──序盤は歌とベースを軸とした抑制の効いた感じだけど、サビで一気に突き抜けるような広がりを持たせる展開で、すごくキャッチーな曲だなと。数あるストックのなかから「LOVE OIL」を選んだんですか。

木屋:そうですね。「LOVE OIL」は最初の唄いだしの部分が前からあったんですけど、その後がなかなか作れなかったんですよ。でもその唄いだしの部分がすごく気に入ってたし、この曲をシングルにしようとずっと決めてたんです。けっこう時間がかかっちゃったんですけどね。

──そもそもこのタイミングでシングルを切ろうと考えたのはどんな理由からですか。

木屋:次のアルバムを作ってるのもあるし、大人の事情もありますね(笑)。いや、子どもの事情なのかな。とにかく僕が曲を作れなかったんですよ。いつも難産だし、「今月は2曲できるから」とメンバーに言っても結局はできないことがよくあるので。それでワングルーヴとかジャブみたいな曲の断片を送って騙し騙しやってる感じですね(笑)。「LOVE OIL」はジャブを出してからストレートを出すまでに半年くらいかかったんですよ。ずっと作り続けてはいたんだけど、なかなかしっくりこなくて。

──それにしても、「油田」という歌詞が出てくるロックンロールはこの「LOVE OIL」が初めてじゃないかと思うのですが(笑)。

木屋:「油田」は自分でも天才じゃないかと思いました。「いつか死んだ僕らの愛は石油となってこの世界を回そうとしてる」という歌詞が最初から浮かんでたんですよ。その回収として「油田」という言葉が出てきただけなんですけどね。

──「石油」に着目するところもユニークですよね。

木屋:動物の死骸が石油になるじゃないですか。そのイメージがけっこう好きで、歌詞に使いたかったんです。なんて言うか、よく死んだ後の妄想とかするじゃないですか。

── ………そういうものですか?(笑)

木屋:あと、自分が年老いた時のことを想像したりするんですよ。ここ3年くらい「死」や「老い」について妄想をよくしてるんです。僕は細野晴臣さんやタモリさんが好きで、自分の好きな人がみんなおじいちゃんばかりだから自分も早くおじいちゃんになりたいのかもしれません。

──そういえばカップリングの「あの子の心臓に」でも、白髪姿の「僕」と「君」を歌詞に登場させていますね。「LOVE OIL」も「あの子の心臓に」も自分の老い先、遠い未来のことをテーマにしているのが共通していると言うか。

木屋:まぁ、好きなんでしょうね。そうやって想像するのが。

──「LOVE OIL」の歌詞のテーマをあえて言うならどんなことですか。

木屋:生きてることに意味があるってことをこじつけたらこうかな、っていう理論の話ですね。自分が死んだ後のことを想像すると、生きてることに意味があるとこじつけることもできるかなっていう。

 

今の時代にロックンロールをやるということ

──肉体と精神と霊的パワーの交歓についてブログに書かれていたことがありましたが、いわゆるスピリチュアルな世界には以前から関心があったんですか。

木屋:ここ1年くらいハマってますね。自分の内面に興味があると言うよりも人間が植物や動物と共存するサイクルと言うか、人間がいることで地球のサイクルはどうなっていくのかに関心があるんです。人間は必要があって生まれてきたはずだから、上手く生きるにはどう行動すればいいのかを考えると、地球の意志に背かないことが一番なんじゃないかとか。「LOVE OIL」に出てくる「石油」もその延長線上にあって、人間は石油という生物の死骸を燃やして生み出すエネルギーを利用してるじゃないですか。それが僕には面白い。

──カップリングとして「あの子の心臓に」をチョイスしたのは、「LOVE OIL」とは毛色の異なる曲にしようと考えたからですか。

木屋:「あの子の心臓に」のほうが早くできてたんですけど、自分では「LOVE OIL」と違うタイプの曲とは思ってないですね。両方同じような曲だと思ってます。

──「あの子の心臓に」は輪廻転生がテーマなのかなと思ったのですが。

木屋:そうですね。端的に言えばロックンロールの話なんですけどね。今の時代にロックンロールをやることを唄ってるんです。あまり解説しちゃうとアレなんで、この辺にしときますけど。

──身も蓋もない言い方をすればツェッペリンとビートルズのハイブリッドなんだけど、不思議と整合性が取れていますよね。

木屋:昔のロックを適当につなげただけに見えるのが面白いですよね。あの曲とこの曲をくっつけりゃいいじゃんと思って作ったんだろ? みたいな(笑)。

──そこは確信犯なわけですね。

木屋:軽いギャグですよ。だけど違和感がないでしょ? っていう。ちょっとした速弾きみたいな感じですね。ギタリストが速弾きするみたいに作曲者が速作りしてみたって言うか(笑)。でもそれしかなかったんですよ。「君の中に 近付く」の後に「未だ眠れない僕たちは」をくっつけるにはあのメロディを持ってくるしかなかった。「あの子の心臓に」を聴いて古くさいとも思わないし、すごく新しいわけでもない。でも新鮮な感覚で聴けるとは思うんですよ。

──ところで、目下進めているアルバムの作業は何合目まで来ているんですか。

木屋:5、6合目ですかね。地盤(=曲)は全部完成してるんですよ。僕は地盤を作るのは得意なんですけど、その先の形成がヘタなんです。

──アルバム作りが山頂に到達するのはいつくらいになりそうですか。

木屋:シェルターでシングルのレコ発をやる頃には10合目まで行ってないとダメなんです。あと1ヶ月しかないんだけど(笑)。

──楽しみですね。バンドの当面の目標はありますか。

木屋:いつか野音でライブをやりたいです。そういうロケーションで攻めてますね。なぜバンドをやっているのかと言えば、自分がいい景色を見たいからだと思うんです。いいロケーションでいい音楽をやる楽しみや高揚感を味わうためにバンドを続けてるのかなと。それに、高揚してる人、笑顔になってる人を見ると純粋に嬉しくなりますよね。

──フロアのお客さんがみな笑顔でいるのはいい景色でしょうし、ライブで人を笑顔にするのは選ばれた人にしかできないことですよね。

木屋:ちょっと嘘くさいかもしれないけど、人を笑顔にしたいですね。それはホントに思います。いいライブをして爆笑されたい。僕自身もいいライブを見ると笑っちゃうことが多いので。今度のシェルターのレコ発もみんなの笑顔が絶えないライブにしたいし、いい景色を見たいですね。

 

1st DIGITAL SINGLE
「LOVE OIL c/w あの子の心臓に」


2018年7月4日(水)より各音楽配信サイトにて配信開始
レーベル:EIGHT BEATER

Live info.

GRASAM ANIMAL presents

『GRASAMANIA〜LOVE OIL RELEASE PARTY〜』

ACT:GRASAM ANIMAL / Lucie, Too / バレーボウイズ

2018年7月13日(金)下北沢SHELTER

OPEN 18:30 / START 19:00

前売 2,300円(ドリンク代600円別)

問い合わせ:SHELTER 03-3466-7430