キングギドラのDJとして、伝説的ヒップホップイベント「さんピンCAMP」にも出演したDJ KEN-BO。現在も「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」でDJ、「フリースタイルダンジョン」で審査員を務めるなど、日本語ラップと密接に関わり続けている。
そんな彼が、大阪ロフトプラスワンウエストで〈政治〉と〈さんピンCAMP〉をテーマにした2つのトークイベントを開催する。ロフトに新しい風を吹き込むこと間違いなしのKEN-BOに、イベントについてトコトン訊いてみた![interview:松井 良太/平松 克規(Loft PlusOne West)]
政治に対して思ってることをストレートに言えば良い
——KEN-BOさんは、ロフトプラスワンウエストに初登場なんですよね。系列店含め、ロフトにどのようなイメージをお持ちですか?
KEN-BO(以下略:K):右から左から上から下からって感じで、スゴい幅広くやられてるなって印象ですね。
——トークイベントは、これまでされてたんですか?
K:90年代の終わりくらいに、ZeebraとTOKYO FMで喋ったりはしていましたけど、トークメインのイベントっていうのは無かったですね。
——10月22日(日)は、〈政治〉についてのイベントですよね? 政治に興味を持ったキッカケは、何なんでしょうか?
K:キッカケはバス釣りなんですよ。
——バス釣り?
K:ボクはバス釣りがスゴく好きなんですけど、2005年に当時環境大臣だった小池百合子が、独断でブラックバスを外魚認定(外来種被害防止法)したんです。それで自分なりに「これはおかしいよなー」って思うようになったんですよ。
——自分にとって身近なものに上から圧力がかかって、「何やこの気持ち悪さは……」っていうのがキッカケと。
K:はい。そもそもブラックバスって、100年近く前に芦ノ湖に放たれて、ドンドン増えていった魚なんですよ。『釣りキチ三平』にも載ってるし、もうボクからしたら日本の魚なんです。「在来種を食べちゃう」って言われるけど、100年近く前からいてるから、生態系のピラミッドの中にもう完全に存在してる魚だと思うんです。それを間引いたら、逆に生態系が崩れてしまう。それに在来種が減ってきているのは、川筋を潰して湖畔を作ったり、なかったところに関を作った、っていう要因もあると思うんです。それをキャッチーだからって理由で、ブラックバスをスケープゴートにするのは違うだろと。外魚認定に反対の人たちが、スゴい数のパブリックコメントを書いて、魚類学者の方々とも話し合ったんです。それで一度は「見送ろう」って結論が出てたらしんですよ。でも小池百合子が「私はやる」って、ほぼ独断で外魚認定をしたんです。それってファシズムじゃないですか?
——そうですね。
K:そこには環境大臣としての実績作りだったり、ブラックバスを駆除するという名目で国からお金が貰えて潤う人がいるって現状もあると思うんです。そういうのを見てたら、「なんで日本ってこうなんだろう?」って考えるようになったんです。
——KEN-BOさんみたいに政治的な話をちゃんとしてくれる人って、やっぱ関西はまだ少ないんですよね。
K:ちょっと敷居が高いっていう意識がまだあると思うんです。ネット上で政治的な発言をしたら「トロル」や「ネトウヨ」からクソリプ飛んで来ることが多いから、つぶやけない人もいるし。まぁ単純に、政治にあんまり関心がない、お客さん呼ぶことと女子にモテることばっかにフォーカスしちゃってるDJ・アーティストも多いと思うんです。東京だとDJ EMMAさんとかが、風営法と戦ったりしてましたけど。
——風営法に関しては、みんな固まって動いてた感じがしたんですけど、政治に関しては、みんな発言もないですよね。
K:みんなダメなものはダメだと思ってるし、ボクらみたいな仕事をしてて、ネトウヨ的発想を持ってる人っていうのは、ほぼほぼいないと思うんですよ。でもどうやってプロテストしたり、レジストすればいいのか分からない人もいる。別に政治に深くなくて良いし、思ってることをストレートに言うってとこから始めていけば良い。そこから知りたいところを掘り下げていって欲しいですよね。
——ヘイトとかには、もっとコミット出来そうなんですけどね。
K:ヘイトとレイシズムに関しては、もう絶対NOですね。ヘイトスピーチする自由みたいなこと言われますけど、ボクは「不寛容なものに対して、寛容になる必要は無い」と思ってるんです。そこで線引きして、ボクはいつも発言、行動してますけどね。
——本場のブラック・ミュージックは、レイシズムにちゃんと反応するけど、日本の人はあんまり意識しないじゃないですか? みんなそこを通って来てるはずなのに……。
K:結局、そういうとこから派生したファッションとかに惹かれてるんです。入口は何でも良いと思うんですけど、本当に好きなんだったら、「何でこういう恰好するんだろう?」とか興味を持って当然ですよね。もちろん知らなくても楽しめるって意見もあるし、それは別に否定しないですけど、知っといた方がもっと深く楽しめると思うんですよ。
——絶対面白いですよね。
K:でもボクは、その音楽の持ってるバックグラウンドを、一気に100%受け入れる必要はないと思ってるんです。生きてたら誰でも、「あの時、間違ってたなー」ってことってあると思うんですよね。前までネトウヨだったけど、今はリベラルの人もいるだろうし。それは色んな所で気付けるはずだし、それから変えていったら良いと思うんですよ。みんな、そういう風になっていって欲しいですよね。
あの伝説的イベントを振り返る「さんピンTALK」!
——10月25日(水)には、「さんピンCAMP」について語るトークイベント「さんピンTALK」にも出演されますよね。これまで「さんピンCAMP」について、ガッツリ話す機会はあったんですか?
K:ガッツリはなかったですね。というかあのー、ぶっちゃけ、そこまで覚えてないんですよ。
——ハハハッ(笑)。もう20年以上前のことですもんね。
K:これ言ったら元も子もないんですけど、自分の過去を振り返るのはあんまり好きじゃなかったんですよ。だからタカちゃん(光嶋 崇)が、引き出してくれるっていうのを期待してます(笑)。
———1個出てきたら、山ほど出てくるかもしれませんね(笑)。ボクはみんな結構ピリついてたって話を聞いてるんですが……。
K:あー、オレはそうは思わないけどね。確かに「さんピン」の1週間後に、野音でスチャダラパーの「大LB夏まつり」があったり、YOU THE ROCK☆が『証言』って曲の中で、「朝からスチャダラダラした目から」ってスチャダラをディスったりしてたから、「そこがバチバチだったんじゃない?」って言われたするんですけど、そこまでバチバチじゃなかったし。
——ANIさんは「さんピン」を観に来てたんですよね。
K:そうですよ。だから中にいる人と外から見てる人の感覚には、ちょっとズレはあったよね。でもボクは「MAJOR FORCE(1988年に設立された日本初のクラブミュージック・レーベル)」にも出入りしてたし、スチャダラパーと一緒にツアー回ったり、雷(現:KAMINARI-KAZOKU)やキングギドラとも繋がってた。結構色んなところに身を置いてたオレだから、あんまりバチバチ感を感じなかったっていうのはあるよね。これはこれ、それはそれ、って感覚でした。だからやっぱり何だろうな……。みんながみんな「オレらが今日一番カッコ良いアクト」っていうのを目指してた感じがあったので、そのピリつきも良い意味でのバチバチ感ですよね。
——ボクは岐阜の「さんピンTALK」を観に行ったんですけど、TOKONA-Xさんの話が中心で、岐阜ならではのトークが聴けたんです。KEN-BOさんは、キングギドラのDJとして出演してた裏話もあるでしょうし、韻踏合組合のお2人は客席から観ていたっていうのがあるから、色んな角度から話が聞けて、また「さんピン」が多角的に観れるようになるのが楽しみなんですよ。
K:オレもみんながどういう話をしてくれるのか、引き出してくれるのかが楽しみです。
——当日はよろしくお願いします。それではイベントに来ようか迷っている読者の方にメッセージをお願いします!
K:「さんピンTALK」に関しては、若い子に見聞を深めに来て欲しいですね。今のヒップホップが好きで、古いのには全然興味がないって感じの考え方ってナシじゃないと思うんです。聞き方とか、好みの問題とか、こっちが強要するもんでもないんで。ただ、今の全ての物には古い何かの礎があるわけで、それに対する当時の熱量や雰囲気を知っておいても、何も損しないと思うんです。もちろん当時から聴いてる年を重ねたリスナーの人たちも、当時の答え合わせみたいな感覚で来てもらえれば面白いと思うし、ちょっと時間あったら来て欲しいですね。
——政治のイベント含め、ボクの中では2つともヒップホップのイベントやと思ってるんです。
K:そうですね。政治のことに関しても、色々モヤモヤしてる部分っていうのは絶対にあると思うんです。やっぱりTwitterとかでつぶやく言葉って、ミスリードされてしまう部分が大きいじゃないですか。こういうトークイベントっていうのは、そういうのが少ないだろうし、ボクらのような人間が、どういう風に考えてるのか、って知るだけでも面白いことだと思う。「いやオレは違う、オレはこう思う」って意見もしかるべきだから、お客さんからの質問だったり、「こう思うんだけど、どう思う?」って時間もきっとあると思うんで、そういうところを含めて建設的なものにしていきたいですね。