今年で20周年を迎えたBUGY CRAXONE。11月の20周年QUATTROワンマンを前に、7月にはSHELTERで怒髪天とのツーマンを控えている。人生の半分をこのバンドと共に時代の波の中をうまく泳ぎながら、ごく自然と、しかし確実に歩んできたVo.すずきゆきこに、これまでもこれからも変わらない「人生≒バンド」への思いをきいた。[interview:義村智秋・安佳夏(下北沢SHELTER)]
嫌いにならない限りやれると思ってる
——今回、1月に20周年記念のベストアルバムをリリースされましたが、20年バンドを続けてきたということを、純粋にどんなふうに感じていますか。例えば時代の空気感や自分の中で20年前と変わっていること変わっていないことなどあると思うのですが。
すずき:おそらく、世の中いろんなことが変わっていってるんでしょうけど、自分がやることはあまり関係がないというか。たぶんお調子者だから、時代に逆らって! とかではなく、何に関しても時代の中でうまくウヨウヨ泳ぎながらのらりくらりやっていくと思うんですよね。それはこれから先もきっとそう。だから、例えば音楽という世界で考えたら20年の中でCDが売れなくなったりとかいろいろあるんでしょうけど、大きな影響を受けるほどそもそも売ってないし(笑)。そこらへん鈍いというか、のんきすぎるだろうとも思うけど、でも私が興味あってやっているのはそこじゃないから。自分の人生そのものとして、私の人生の約半分として続けてきたっていうのは、いたって自然ですね。なので、特に大きく「お〜、バンド20年やった〜! 」っていうよりは、いろんなことを自分の責任で生きていかなきゃいけなくなった年齢から20年経ったっていうくらいのことで、周りの人達に恵まれて親も元気でいてくれたから今もバンドやっていられるし、とか…。そうですねぇ、そんなくらいにしか思ってないですね(笑)。
——でも20年やっているわけだから、上がったり下がったりっていう時期もあったと思うのですが、やめようとかって思ったことは…
すずき:あ〜ないない(笑)。ピンチのときはそれが逆に悔しさになって、じゃあもっと良くしてやろう、もっと良い道を見つけよう、っていう風にいつも考えてたから。やめるのは嫌いになったらじゃないですかね。本当にこれがもうやだな、って思ったらやめると思うけど、方法とか環境は工夫次第でどうにでもなると思ってるから。例えば今のペースでやるのが厳しいんだったらペースを落とせば良いだけの話だし、人に聴かせるのがしんどければ聴かせなきゃ良いわけだし(笑) とか。だから自分が作りたい、とか自分がやりたい、って思ってるんだったら、理由とか体裁はなんであれ、やってられると思うんですよね。この状況をキープしろっていうんだったら、いろいろ厳しくなることもあると思うけど、そうじゃなければ嫌いにならない限りやれると思ってる。
世の中に対してどうクリーンでいるか
——曲作りの面で、伝えたいこととか、変わったことっていうのはあるんですか?
すずき:曲作りに関しては、それこそそのときどんなバンドが好きか、どんな音楽ジャンルが好きかってこととか、あとどんな恋人といるかとかさ、そういうことに影響を受けるでしょう? ま、それはあくまで私個人の話で、BUGY CRAXONEってバンドになったら、最終的に音に収まるんだけど、個人的に話すと、そういうところに影響を受けるから、音としてこういうことを絶対伝えたい、とかそういうことではないんですよね。だから、ミュージシャンではないというか…。バンドマンなんだなって感じですね。伝えたいことというか、自分が書かなきゃいけない気持ちになることっていうのは、いかに生まれてきたこの私という人生を綺麗に生きていくというか、世の中に対してどうクリーンでいるか。いいことも悪いこともたくさんあるけど、どれだけ気持ちをまげずに生きていくかっていうことがテーマになってるなって思ってて。若いときは潔癖すぎたところがあると思うんですよね、全く許せない! っていう(笑)。でもその魂とか心の品位を保つのは、別に自分一人でやってきゃいいだけで、他人がどうっていうのは大きなお世話だよって今はちょっと思うんですよね。自分に対しても潔癖すぎたところはあると思うんですけど、そういった年齢の変化とかはありつつ、言いたいことというか書きたくなる衝動みたいなところはあまり変わらないですね。
——自分はこうだけど、周りのことも受け入れる、みたいな。
すずき:みんなそれぞれ仕事があって今を生きてるわけだから…全員同じ方向で同じ調子でなんてことはそもそも求める必要があんのかな、と思うし、そうやってなんとなくそれがいいって思いこんじゃっただけじゃない? というか。宇宙も地球も広くて、その風土風土に合った植物が育ったり食べ物があったりするくらいだから、人間だって絶対そうだと思うし。自分がこの人生で親密な関係を取りながら関われる人、例えば職場とかバンドもそうだけど、限られてるんだからそこさえある程度やれれば、いいんじゃない、よその人は、みたいな(笑)。よそはよそ、うちはうち、みたいな。今の所支障ないですね、この生活に、この人生に。でもなんかあったときに耐えられるように気持ちを強くしておきたい、ってだけですね。
元気があれば、なんでもできる!
——結成から20年と今年はまた新たな節目になるわけですが、ここから先5年、10年…と、バンドとしてのビジョンや到達したい目標などはありますか?
すずき:これまでも特に先々のことを考えてやってきたっていうことがなくて、毎回毎回いいアルバムを作るかどうかっていうだけにしか焦点が合ってないから…。それこそ先のことなんて考えたらバンドなんてやってられないんじゃない?(笑) だって曲1個書いたってさ、1週間後には「なんだこのクソみたいな曲! 」って思ってる時だってあるわけだし、「なんかこの曲変だったけど今聴いたら意外に良くない? 」とか(笑)。いろんなことは日々変化しているわけで、安全とか健康とかそういうところだけはある程度は先のこと考えなきゃいけないとは思うけど、所詮、自分が好きでやってることでしょ? って。ビッグビジネスで自分がずっこけたら何百人とか何千人っていう人が食えなくなるっていうなら考えるけど、そうじゃないんだもん、知らねぇよ! って感じ(笑)。バンドのメンバーに関しても、もちろんしっかり仲間だから大事にやるけど、え、自分の意思での参加でしょ? って(笑)。だから誰かが辞めたいとか言い始めたとしても、話はもちろん聞くけど、「何さ、人の人生も考えずに!」みたいな気持ちにはならないですね。「そうっすか。お疲れさまでした! これから先いい人生をお互い過ごしましょう! 」ってなる(笑)。やっぱり出会いと別れはしょうがないですし、だから大事にしてるんですよね。1曲1曲ちゃんと作りきれるかって。今考えてることはとにかくみんなの健康(笑)。多少調子が悪くて変な曲しかできない時期があったとしたって、そんなもん元気があればなんとか乗り越えられるんだから(笑)。
SHELTERは、「すごいイケてる場所」
——SHELTERは何度も出ていただいていて、今回7月28日で29回目になるCOUNTERBLOWは初回からSHELTERで始まっています。SHELTERという場所は、どんな風に捉えていますか?
すずき:そうですね〜、なんか、“すごいイケてる場所”って感じ、田舎者からしたら(笑)。精鋭感があるっていうか。当時の北海道と東京って、ライブハウスのシステムも全然違って、だから来た時は衝撃で、なんだこれ? って。ライブが終わった後にそのままそこで飲めてるっていうのも都会! って感じがすごいして。なんか毎回ふらふら来てる人がいるし、こういう風にバンド界っていうのは語り継がれていくんだなあって思って見てました。夜型になるさ、そりゃ(笑)。
——今回のCOUNTERBLOWは“恩人”怒髪天とのツーマンですが、どんな日にしたいですか。
すずき:1番最初に増子さんに「私こういうものです」ってご挨拶したのは、それこそこのCOUNTERBLOWに出て欲しくてメールしたのが多分最初なんですよね。だからやっとか〜っていうのもあるけど、なんかもう時間も経ちすぎちゃって、その間にもういろいろお世話になりすぎちゃってるから、いいんすか! 此の期に及んですみません! っていう感じですね(笑)。でもその日も今まで通りお世話になります(笑)。特に無理はしません、「怒髪天に勝つ!! 」みたいな気持ちはさらさらないっす(笑)。
——そしてSHELTERでのツーマンを経て、11月にはQUATTROでのワンマンを控えているわけですが。
すずき:1番かっこいい日ではあってほしいけど、そこから先も楽しみ。その次のライブになったらそのライブが1番かっこよかったらいいなっていう風に変わっていくわけで。いろいろ冠をつけたことで緊張度は高まりますけど(笑)。全国から来てくれる人たちのことを考えたりとか、今も20周年で地方にライブに行くと「10代の時から聴いてました」とか「20周年でまた聴き直しました」とか、手紙をもらったりとか、励まされたって言ってくれる人たちの思いはいくらサッパリしている私でもグッとくるものがあるので、それをしっかり受け止める日にしたいなというのはあります。お客さま感謝祭ですかね(笑)。その前に、すごく久しぶりにSHELTERでライブができるからそれも楽しみだし、なんにしろみなさん、ケガに注意(笑)。きっと暑いからご注意くださいって感じですね(笑)。しっかり期待してもらって、いいライブをしますので、気をつけて遊びに来てください!