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映画『残されし大地』──奥山和由(配給プロデューサー)×鵜戸玲子(ジル監督夫人)(Rooftop2017年3月号)

自分の選択で人生を選ぶことを尊重し、自分自身もそのように生きてきた

 
──今回はジル監督と松村さんの出会いと同様、奥山さんとの出会いも大きいですね。ジル監督に対する共感が1つのきっかけになっている。
 
鵜戸:会ったこともないのに、私も驚いてます。「映画密度が高い」と評価してくれたんですが、その言葉にはっとしました。絵の撮り方も、音の録り方も、ストーリー性も、映画で表現できることをすべてきちんと丁寧に作っているということを一言で表現している言葉だなと。
 
──ジル監督の企画書に「私は松村さんを英雄とも手本とも思っておらず、自ら選択し立ち位置を決めた一人の人間としてとらえている」とかいてありますが、それは監督自身の生き方でもあった?
 
鵜戸:そうですね。ジルも個人が自分の意見を持ってちゃんと発言することをすごく大事にしていました。日本人はすぐに周りに合わせてしまい、嫌と言えないことが多いですが、彼は嫌なことは嫌と言って欲しいし、その理由をきちんと言ってくれれば尊重するという人でした。彼は一人一人がちゃんと自分の考えを持って、自分の選択で人生を選ぶことを尊重し、自分自身もそのように生きてきた人ですね。だからこそ、松村さんのような人に共感したと思う。松村さんの選択が正しいかどうではなく、松村さんが自分で感じたこと、そこに重きを置いている。
 
──企画書には「彼の怒りは仕組みに向けられている。実態のない曖昧模糊としたシステムに対して怒っていた」ともありました。
 
鵜戸:顔のないものに対する拒否反応はありましたね。システムの中で人間がマニュアル通りに動かないといけないことには本当に嫌がっていました。ただ映画としてそういうことを声高には言ってないし、全体のトーンとしてはやさしいものだけど、彼の意見は松村さんに代弁されている所がかなりあったと思います。
 
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明るさって必ずどこかから出てくる

 
──あとこの映画は松村さんの周りに集まる人達の群像的な映画にもなっているのが特長的ですよね。佐藤さんが久しぶりに友達と集まってお茶を飲んだり演奏したりする所にすごく大事なメッセージを感じました。
 
鵜戸:あの撮影はジルが提案したんですが、ああいうふうに女の人同士でお茶を飲みながら自分たちの近況を語ることで、自然に彼女達の生き方が浮き上がる。胸のつかえが取れるような感じがあっていいですよね。それまでの男性的な世界から女性的な世界に流れていくのが結果的に成功していると思います。
 
──原発事故という絶望の中で生きる松村さんの生き方は、テロで愛する人を失いながらも生きていく鵜戸さんの姿にも重なりますね。
 
鵜戸:私もまさかこんな展開になるとは思わなかった。自分がテロという災害にあった人間としてより福島の災害に寄り添う気持ちが強くなりましたが、自信を持って生きていれば絶対次があるから生きていけるし、また違う道が開けてくる。世の中には自分の力だけではコントロールできないことがいっぱいあって、この先もテロとか原発事故とか戦争とか、考えると不安になることもあるんですが、でも何があっても生きていこうと。明るさって必ずどこかから出てくる。自分がそういう立場になって、悪い事ばかりでもないし、私自身も自分の中の強さを再認識した所もあります。ジルがいなくなった寂しさは消えないけど、それを埋めるようなことも起こるんです。この映画を通していろんな人と関わっている中で、そういうメッセージにもなればいいなと思います。それは、私の個人レベルの話ではなく、ジル本人もすごく喜んでいるんじゃないかと思います。
 

Live info.

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残されし大地 La Terre Abandonnée
 
3月11日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー/フォーラム福島、シネマテークたかさきほか全国順次公開
 
監督:ジル・ローラン
プロデューサー:シリル・ビバス
出演:松村直登ほか
原題:『LA TERRE ABANDONNEE』
制作:CVB Brussels
配給プロデューサー:奥山和由 (チームオクヤマ)
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