1、2分のショート・弾き語りカバーを日々SNS上にアップロードし実力を見せつけ、オリジナル曲でも頭角を現している白瀬百草。待望のアルバム『わかもの』リリースを記念してトークイベントをLOFT9で開催!
アルバムのことはイベントで掘り下げるとして、今回は彼女のルーツについて聞いてみた。(interview:本田智也/田中萌[LOFT9 Shibuya] / 撮影:知緋乃)
原点はJ-POP
──いつからこういった活動を?
白瀬:高校の軽音部でバンドを組んでいたんですけど、バンドって難しいなって思って。17歳の時に弾き語りを始めたのですが、受験・浪人で一度やめて、最近また始めたって感じですかね。
──よくSNSに弾き語りカバー動画を載せていますよね。あの選曲はどういった趣旨があるんですか?
白瀬:カバーの選曲は好きな歌の歌詞を紹介する、おすすめをするつもりで始めました。
──SMAPからシャムキャッツまで、世代の範囲が広いですよね。
白瀬:小・中学生のとき、J-POPがめちゃくちゃ大好きで、SMAPの「SHAKE」が原体験で。平井堅さんの「POP STAR」「KISS OF LIFE」とか、ポップな曲が今も好きです。
──森山直太朗さんもお好きだとか。以前ブログにアップしていた森山さんへあてた文章がすごく素敵でした。
白瀬:森山直太朗さんは…大好き。もちろん「さくら」とかは知ってたんですけど、浪人して苦しかったときに、YouTubeか何かでたまたま他の曲を聴いて、改めていいなと思って。そのとき歌詞とか優しい音楽みたいなのがスッと入ってきたというか、それまでも曲は作ってたんですけど、改めて「あ、私森山直太朗さんみたいになりたい」と思いました。それが、シンガーソングライターとしての原体験ですね。
研究している「優しさ」
──目指すところはやはり森山直太朗さんですか?
白瀬:そうですね…森山直太朗さんになりたい(笑)。最近は、存在としては森山直太朗さんになりたいんですけど、音楽としてはもうちょっとそこにメロのキャッチーさというか、ポップな感じ、ノれる感じとかも欲しいなって思い始めて、目指す人はまた変わってきました。優しいけど、踊れる曲。みたいな。
──「優しい」って言葉がよく出ますよね
白瀬:そうですね(笑)。優しさは…研究対象。優しさ研究してます! 人にも音楽にも優しさを。
──歌詞を書くときも優しさを意識したり、テーマを決めたりするんですか?
白瀬:いえ、テーマはとくに決めないです。頭のなかに良い文章が浮かんだら、そこを中心に広げていく感じですかね。『酸いも甘いもあなたに教わりたかったの』って言葉が浮かんで、広げていくとか。そういうのを前はツイートしちゃってたんですけど、それをもったいない…っていうのもまた違うんですけど、なんか違うなって思って。貯めていって、そこから作ります。歌詞は大事にしています。
──最近の女性シンガーソングライターというとM女の子の強さだったり弱さだったりといった共感を呼ぶような歌詞が多いイメージですがどうですか?
白瀬:そういった音楽も好きで聴いているんですけど、私が曲を作るときは中性的になりたいっていう気持ちがどっかにあって…生きててあんまり思わないんですけど、音楽家、音楽作る時に限ってはあります。
──聞き手に任すじゃないけど。
白瀬:そうですね。あえて自分で決めないですね。
故郷のイオンと東京
──ご出身は新潟とのことですが、上京はご自身になにか影響をもたらしましたか? たとえばくるりの『東京』やきのこ帝国の『東京』をカバーしていましたが…
白瀬:それも絶妙で、人格形成に確実に影響してるとは思うんですけど、上京するタイミングが高校入学の時だったんですよ。高校を卒業して、就職や大学に行くために東京にでてくる人たちよりも早くて、そのかわり文化的な目覚めみたいなものは人よりも遅くて、東京に出てきてからもずっとJ-POPを聴いてたのは変わらないんです。新潟の家族連ればっかりで治安の良いイオンのゲーセンで友達とワイワイ遊ぶような、あたたかみのある環境で15年を過ごして、東京にでたといっても国立というあまり都会的ではない土地で、家族で上京したので新潟に帰る実家もないし、かといって東京に何かあるわけでもないし…自分でも不思議な感じですね。なんとなく、イオンが実家みたいな。
──イオンが?
白瀬:でかいイオンが(笑)。
──でも確かに、音楽って東京出身者と地方出身者が分かりやすい分野だと思うんですよ。白瀬さんの音楽はあまりそれが見えないので、今の話を聞いてしっくりきました。
白瀬:そうなのかもしれません。地元もなければ上京してきた感じもなく。このふわふわした感じがまた面白いのかなって。
テレビっ子だった幼少期
──小さい頃はどんなお子さんだったんですか?
白瀬:小さい頃は「やまとなでしこ」ってドラマが大好きでした。
──ありましたね。
白瀬:スチュワーデスになりたかったし、今でいう石原さとみさんみたいな『あざとかわいい(あざとい+かわいい)』女の子っぽさにめちゃくちゃ憧れてて、そうなりたいなってずっと思ってました。ぶりっ子って言われてたし、ぶりっ子になりたかった(笑)。
──目指すところがぶりっ子ってなかなかめずらしいですね!(笑)
白瀬:それがいまは中性になりたいとか言って(笑)。
──でも、そういう日々成長じゃないですけど、意見が変わることも恐れず発信していくのは強みですよね。もちろん表に出る活動は辛いこともあると思いますが。
白瀬:本当ですか? ありがとうございます。もちろん傷ついたりはします。でも最近は傷ついてから立ち直るまでの時間が短くなっていて、それはいいことですね。傷つかなくなるようにはなりたくないので、傷つき度合いは今のままでいようと思います。人のことを傷つけちゃうかもしれないし。
──鈍感になってはいけないと。
テレビっ子は健在
──音楽以外の趣味はありますか?
白瀬:バラエティ番組を見ることです!
──バラエティですか。テレビっ子は今も健在なんですね。
白瀬:やっぱりテレビがすごく好きで、ドラマも見るしバラエティ番組も見ます。漫才とかコントとか現場で見るお笑いよりも、テレビのバラエティが好きなんです。テレビがたぶん、私のルーツで。テレビの感想をつぶやくだけのSNSアカウントも作りました(笑)。
──相当お好きですね! 若者のテレビ離れとか言われてますけどそんなこともなく?
白瀬:テレビ面白いですよ! バラエティもすごく明るくなってる。今までは芸人さんが関西と関東で別れてたんですけど、最近はそういう境目もなくなってて。関西の芸人さんが関東の笑いに合わせるんじゃなくて、関西色の強いまま面白く番組に出ているのを見ると、胸が熱くなりますね!
──すごい熱意! テレビ制作の人に聞かせてあげたいですね。
白瀬:それはおこがましいです(笑)。
自撮りと他撮り
──PVや写真撮影はどなたがされているんですか?
白瀬:知緋乃ちゃんという子です。SNSで私のファンだとおっしゃってくれていたんです。偶然にも別のアカウントでアップしている写真を私がいいなと思って見ていて、その人がファンですって言ってくれていた知緋乃ちゃんと同一人物だと分かって、写真を撮ってくださいって私からお願いしました。
──お互いがファンだったんですね。どうりで。撮る側も撮られる側も「こういう写真を撮ろう」と意見が一致してないと撮れないような、ばっちり決まってる写真ばかりですよね。写真を撮らるのは得意なほうですか?
白瀬:うーん、全然です。表情も作れないですし。知緋乃ちゃんが上手に切り取ってくれてるだけです。私、自撮りすることにあんまり抵抗がないんですよ。自撮り向けの顔っていうのがあって、加工とかしないですけど自撮りの顔と他撮りの顔って全然違うんです。だから人に撮ってもらうほうが抵抗…ってほどではないですけど、やっぱり自撮りとは違うなってひとりで傷つくんですよ(笑)。この傷つきはなくしたほうがいいから、自撮りをやめるようにしてます!
自分の曲を知ってもらうために
──ミスiDについてはどうですか?
白瀬:ミスiDを受けたときは、有名になって自分の曲を多くの人に聴いてもらうきっかけにするために、思考を整理して応募したって言っていて、そのときは間違いなくそう思っていたんですけど、今思うと迷走していたように感じます。それがあって、違ったなって気づきが今はあるからいいんですけど、中性的を目指すならああいう女の子のための場を受けるのは違ったなと。ツイッターや自撮りもそうですけど、人に曲を聴いてもらえるならなんのきっかけでもいいと思っていたんです。でも最近、入り方によってフィルターがかかることもあるって気付きました。ツイッターではそのフィルターを薄くするよう意識したり、歌から遠くない入り方をしてもらえるように心がけていますね。でもミスiDで出会った人や知ってくれた人が、良い具合に作用しているので後悔は全然してないです。
──ミスiD繋がりでいうと、千史さんやさひろ(中村ちひろ/禁断の多数決)さんですか?
白瀬:あ、実はミスiD以前からなんですけど(笑)。なつみん(牛乳寒天なつみん)とか。でもそういった人たちが期間中に一緒だったから楽しくできたのはありますね。
──では、今回のLOFT9イベントでゲストの千史さんとはどういった経緯で?
白瀬:もともと私が音楽をやる前から千史ちゃんのファンで、ツイッターをフォローしてたんですけど、活動をしていくうちに私のことも知ってくれて。でもファンってことがバレたくなかったので、あまりそんなそぶりを出さなかったんですけど(笑)、フォローバックされたときはさすがに「フォロー返されたけどこれは夢じゃないんでしょうか…」みたいなことをツイートしたら返事は来なくて「こういうところがいいんだよな〜!」って。
──(笑)。
白瀬:でもいつのまにか近い知り合いが増えていって、直接会って喋ったら普通に楽しくて仲良くなって。今はもう友達ですね。週に2,3回のペースで会ってます。昨日おとといも会ってましたし。
──それはなかなかの頻度ですね! じゃあイベントも息のあった感じでくつろいだ感じになりそうですね。
白瀬:千史は人見知りだけど、イベントではいつものリラックスしたふたりの空気感が出せればなと思います。でも歌はやる気みたいで、ふわふわした感じでやるっていうよりも、しっかりアレンジを考えてやる予定です。やっぱりちょっと緊張しますね。シンガーソングライターなのでなかなかイベントをやる機会はないと思うので、バラエティみたいな面白いイベントにしたいです! 当日はシークレットゲストもいますので!
──いいイベントになりそうですね!
白瀬:はい! よろしくお願いいたします!