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杉本恭一(Rooftop2016年11月号)

 "音楽とアートの融合"をテーマに、情景が目に浮かぶイマジネーション豊かな音楽を標榜した自身初のソロ・アルバム『ピクチャーミュージック』の発表から20年。杉本恭一の通算8枚目となるアルバム『STEREO 8』は、彼の盟友であるカメラマン、デザイナー、ストリート・アーティストとのコラボレーションを経て生まれた、アートの素粒子がコラージュのように随所に散りばめられた傑作だ。アートと言えども肩肘を張る必要はまるでなく、変幻自在のサイケデリックなインストゥルメンタルあり、ソリッドかつタイトな純正ロックンロールあり、夕暮れ時の情緒溢れるナンバーあり、全国各地のオーディエンスがコーラスと歓声で共演したパッチワーク的ロデオ・チューンあり、誰もが好きなおかずばかりを詰め込んだ幕の内弁当のような内容である。レピッシュの結成から30年以上にわたりしなやかに軽やかに自分らしい音楽を紡ぎ出す、決して枯れることのない杉本の創作意欲の源を辿った。(interview:椎名宗之)

絵の浮かぶような音楽を展覧会で形にしてみたかった

──今回の『STEREO 8』というアルバムは、今年の春に開催された展覧会『STOWAWAY』と夏に行なわれたアコースティック・ツアー『アコギな夜 2016』を経て生まれた作品と言えますよね。

杉本:そうだね。故郷の熊本が大地震に見舞われて、それに対する自分のいろんな気持ちを歌にしてみようかと最初は思ったんだけど、結局そんな気にはなれなかった。あくまでも『STOWAWAY』を始まりとして完成に至ったアルバムだね。

──“音楽とアートの融合”をテーマに、盟友アーティスト《フォトグラファー=緒車寿一、デザイナー=SKULLPOP(川崎義記)、ストリート・アーティスト=JELL-O》と共に開催した『STOWAWAY』ですが、そもそもどんな経緯でやることになったんですか。

杉本:アートに音楽をつけてみたい気持ちが昔からずっとあってね。仲間のアーティストたちと呑んでる時にたまたまそんな話になって、みんなもアートと音楽が融合する試みはやったことがないからぜひやろうってことになったのが始まり。彼らの作品を見てもらう、自分の音楽を聴いてもらうという興行の面では反省点が残ったけど、展覧会自体はなかなか面白いことができたと思う。「ANAGRA」というギャラリー自体も面白かったしね。大音量で音楽を常時ガンガン鳴らすなんて、普通の美術館とかギャラリーじゃ絶対にできないから。あと、カセットテープというアナログ・メディアをあえてテーマにしたのも面白かった。

──いままた人気が再燃しているメディアですね。

杉本:オブジェとかアート作品を作るためにカセットテープを1,000本近く買い集めてね。中古のカセットテープは日本でまとめて見つけたんだけど、作品にするためのカラーカセットは海外で入手したんだよ。そのカラーカセットはアー写にも使ったんだけどね。

──『STOWAWAY』(密航者)という呼称は、1979年にウォークマンがイギリスで発売された当初の商品名だとか。

杉本:そうそう。なんで「密航者」なんて物騒なネーミングにしたのかよく分からないけどね(笑)。

──『STEREO 8』にも収録された「Stowaway」、「Byway」、「Doorway」という3曲のインストゥルメンタルは、もともと展覧会で発売されたカセットに収録されていたんですよね。

杉本:うん。今回、「Stowaway」だけバンド・バージョンで録り直したんだけどね。

──「Stowaway」はアルバムの幕開けに相応しい、スペイシーかつサイケデリックな疾走感溢れるナンバーですね。

杉本:「Stowaway」は通常の曲作りと違ってコラージュ感があると言うか、設計図に則って組み立てていくみたいな感覚だった。ここでこういう景色があって、ここでこういう音が鳴って…みたいなさ。インストの3曲は全部そんな感じだったね。

──「Stowaway」の終盤でギターの音が左右に振り分けられてぐるぐる回る音像は、アルバム・タイトルにも用いられている“ステレオ”感がありますよね。

杉本:『STEREO 8』の「ステレオ」は単純に好きな言葉で、タイトルに大きな意味はない。「8」は8枚目のソロ・アルバムってことだしね。意味のあるタイトルをつけようとすると、ちょっとできすぎな感じになるって言うかさ。そこを軽くしないと自分の作品っぽくならないんだよ。

──アルバムのアートワークは展覧会でコラボレートしたアーティストの方々がサポートしているし、“音楽とアートの融合”が実を結んだ形ですね。

杉本:今年は『ピクチャーミュージック』というソロのファースト・アルバムを出してから20年経つから、当時目指していた“音楽とアートの融合”を形にしたいということで『STOWAWAY』を開催してみたんだよね。自分の音楽を“ピクチャーミュージック”=絵の浮かぶような音楽だと能書き垂れたんだから、実際にそれを形にしてみようと思ってさ。

──20年前から絵の浮かぶような音楽を標榜していたんですね。

杉本:その発想自体はレピッシュの頃からあったんだけどね。若い頃から音楽とアートには強い衝撃を受けたし、自分のなかではそれを分けてとらえることができない。

──思春期の頃に音楽とアートワークの両面でとりわけ衝撃を受けたバンドと言えば?

杉本:やっぱりセックス・ピストルズの『Never Mind the Bollocks』だね。パンクはアートやファッションと密接な関係があったし、その周辺の文化も含めてすごく影響を受けた。ジェイミー・リードだったり、ヴィヴィアン・ウエストウッドだったり。

 

STEREO 8

TECH-28494
定価:2,593円+税
2016年11月16日(水)発売

【収録曲】
01. Stowaway(Band Ver.)
02. 電撃
03. NEW1
04. Tour
05. Byway
06. Dusk
07. 屋上
08. パレード
09. ラオラウ
10. Doorway

Live info.

Tail Peace Tour 2016
11月3日(木)新潟GOLDENPIGS BLACK STAGE
11月4日(金)仙台LIVE HOUSE enn 3rd
11月6日(日)青森Quarter
11月8日(火)札幌COLONY
11月16日(水)岡山PEPPER LAND
11月18日(金)福岡INSA
11月20日(日)高松TOONICE
12月10日(土)名古屋ell. SIZE
12月11日(日)大阪ROCKTOWN
12月23日(金・祝)下北沢GARDEN
《サポートメンバー》
Bass:有江嘉典VOLA & THE ORIENTAL MACHINE
Guitar:奥村大wash?
Drums:中畑大樹syrup16g / VOLA & THE ORIENTAL MACHINE