サンジゲン10周年記念として制作された全編3DCGアニメ『ブブキ・ブランキ』。キャラクターや武器などにオタク心をくすぐる要素が満載!!重厚なストリートとキャラクター達はどのように生まれたのか。今作の魅力の一端を "小松田大全"監督に伺いました。(interview:柏木 聡 / Asagaya/Loft A)
人間関係を描くということ
――“ブブキ・ブランキ”制作の経緯をお伺いできますか。
小松田(大全):元々、4人のプロデューサーの方達が企画を立ち上げようとしていて、そこに5人目として監督の僕が入る形で動き始めました。企画書には最初から「“受け継ぐ”ということを作品のテーマにしたい」と書かれていて、ほぼ文字だけだったんですけど、一読してとても面白いと思ったんです。
――その企画書には物語の骨格のようなものもあったのですか。
小松田:いえ、全く。内容や物語は、これから決めるというという段階でした。ですが、書いた人の思いがこもっていたので、いまだに手元にとってあって、その企画書の「初心」から外れていないかを確認するくらいです。監督として参加してからは、プロデューサーの方々とチームとしてたくさん話をしました。そして、話し合いを重ねた後で、僕が物語の大枠のようなものを短いテキストにまとめました。それが「かつて二人の少女が争い合った。そして世代が移り、年を取らなくなった少女と、母となったもう一人の少女の子供とが争う物語」なんです。そのテキストの日付を見ると2013年の8月末なので、ちょうど今から丸3年前ですね。
――それがそのまま1期のあらすじになっていますね。
小松田:そうですね。「世代を越えて続いていく争いの物語」が、自分なりの“受け継ぐ”ということをテーマにした場合の切り口だったんです。スター・ウォーズが好きなので、その影響もあると思います。本編もそうですが、企画の作り方が特に好きなんです。
――企画の作り方というのは。
小松田:最初に上映されたエピソード4~6のその前後に、さらに物語があるというころです。それを聞いた時に、その物語を想像してものすごくドキドキしたんです。なので、ブブキ・ブランキの物語を考える時にも、(一希)東たちが主人公である本編の前後にも物語があることを意識してキャラクターを作っていきました。ゼロから作るキャラクターたちに存在感を与えたかったのもあり、プロフィールを考える上でその両親を考えるようにしました。東たち5人のうちで、画面に親が出てこなかったのは木乃亜くらいじゃないですかね?
――それ、本編でも出してほしいです。
小松田:僕も出したいんですけどね(笑)。親の世代の物語をちゃんと描く機会があれば、その時にでも。木乃亜のお母さんの巴さんとか、すごく好きなキャラなんですけどね。でも今回のテレビシリーズでは、東の世代に専念しようと決めて、全体を構成していきました。
――続編を制作をされることは最初から決まっていたんですか。
小松田:1期・続編というよりも、全体が二つに分割されて放送された形ですね。なので、半分のお話が終わったところで1期が終了となりました。
――1期はキャラクター同士でのブブキを使ったバトルが多かった印象ですが、続編のPVでは各国のブランキも出てきていましたね。
小松田:続編ではブランキに搭乗しての戦闘が一気に増えます。3DCGで良かったのはロボットを毎回出せることですね。手描きでのアニメーションの場合は、キャラクターに比べてメカは情報量が多いので、描くのが大変であまり出せないんですが、サンジゲンさんのCGディレクターの方に「ロボットの方がCGでは楽なんですよ」と言われて驚愕でした(笑)。3Dモデルを作成してアニメーションをつけるので、キャラとメカのどちらかが楽だというのはない、という意味ですが。続編は物語の核心に近づいていくということで、チーム戦・ロボットバトルが増えていきます。1期は各チーム・キャラの人間性・関係性を描写するためというのもあって、個人戦がメインになりました。
――1期がそうなったのは、どうしてですか?
小松田:人間関係が築き上げられていく過程を描きたかったからです。とくに東たち5人について。最初は同じ方向を向いていないチームが、だんだんとお互いを認めて心が1つになっていき、初めてブランキが真の姿を取り戻すということをきちんと描きたかった。それもあって、リーダーである心臓が手足を大事にしないとブランキがうまく動かないというのも、ブランキを一つの組織としてメタファーしていたりもします。
1期から続編へと、変わっていく物語の形
――1期だけでも4チーム20人が戦っていますが、それだけ多くのキャラをどのように作られていったのですか。
小松田:チームというのもあって基本的には色のイメージから入って、それに名前の音の印象を付けて膨らませていきました。そして、性格や趣味・癖などを描いた『キャラクターシート』を作って、コザキ(ユースケ)さんにどんなキャラクターかを伝えました。先ほども話に出ましたが、各キャラの親の設定もあって、誰が何時どこで戦ったという親世代の年表もあるんです。さらに、東たちのあとの世代の年表もあるんです(笑)。
――年表方式だと人格形成もわかるので画期的ですよね。
小松田:年表システムの成果かは分かりませんが、10話の完成画面を見た時に、東と汀が親子だなあと思えたのは面白かったですね。「人の話を聞かない親子だなあ」と(笑)。
――キャラクターの名前を始め、バックボーンや元ネタがある作品なので、そこを考察するのも楽しい作品でもあります。
小松田:細かい元ネタに気づいてもらえるのもうれしいですし、キャラクターの言動なども細かく追いかけてもらえると、意外な事実に気づいたりもする作りにもなっているので、実際にそうやって楽しんでくださるのはうれしいです。ブログなどで、こちらが考えている物語の真相とも言える部分を推理されている方もいらっしゃって、本当に驚かされました。
――続編は1期に比べ、どのような物語の展開になるのでしょうか?
小松田:続編は物語としては、もう少しシンプルな展開になると思います。1期は予想外に分かりづらいシナリオになってしまったので、続編はその反省を生かしました(笑)。エネルギッシュなキャラである(一希)薫子も入ってくるので、見やすい形になっていると思います。
――中々、悩まれていますね。
小松田:そうですね(笑)。初監督なのもあって、冷や汗の連続です。シリーズ構成とシナリオという物語に関わる部分のバランスをとったり、デザインを3DCGに落とし込む作業のチェックだったり、なにしろフル3DCGアニメーションの演出も初めてですしね。監督ってこんなにやることが多いんだということを、実際に監督をして初めて知りました(笑)。
――見ていて感じたんですが、色使いがすごくきれいですよね。各チームが5人ですし、戦隊ヒーローを意識されてということなんでしょうか。
小松田:色に関しては、コザキさんたちデザイナーの方々の力によるところが大きいです。コザキさん、吉川(達哉)さん、あさぎりさんたちのようなゲームのお仕事を多くされてきたデザイナーは、個々のキャラクターをデザインと色によって描き分ける設計ができて、かつ、作品全体の中でコントロールできるんです。とくにコザキさんは、キャラクターの骨格を考えてデザインしていて、中でも頭蓋骨の形へのこだわりが強い。例えば、「黒人系のキャラは黒人の人が見てカッコイイと思う黒人であって欲しい」とおっしゃっていて、海外にも受け入れられているゲームのデザインをされてきたコザキさんならではの視点に感心させられてばかりです。
――お話をお伺いしていると設定資料集が欲しいなと感じました。
小松田:ぼくも激しく欲しいです(笑)。東たちの物語はテレビアニメーションで描いたので、それ以外のキャラクターたちの物語も紙面で紹介できたりしたらいいですね。