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INTERVIEW

トップインタビューOLEDICKFOGGYドキュメンタリー映画『オールディックフォギー / 歯車にまどわされて』公開記念座談会 伊藤雄和×渋川清彦×川口 潤

公開記念座談会 伊藤雄和×渋川清彦×川口 潤
バンドの実像を浮き彫りにする現実と虚構のパラレルワールド

2016.08.01

芝居のアドリブはセッションみたいなもの

──やっぱり、どこかでハプニングが起きないかと雨乞いをするみたいな感覚もあったんですか。

渋川:誰かがパクられるとか(笑)。

川口:もちろん思ってましたけど、これがひとつも起きないんですよ。ローディーがバンドと揉めていなくなっちゃうのはありましたけどね。

渋川:でも、そこは一瞬で切ってましたよね。

川口:そこがフックになるとは思わなかったし。まぁ、椅子が飛んでたりはしてましたけど(笑)。

──フィクションとノンフィクションをあえてぶつけ合うことでOLEDICKFOGGYの実像を浮かび上がらせる手法はとてもユニークだし、川口監督の新機軸ですよね。

川口:そういうアプローチがハマる気がしました。伊藤くんは佇まいが画になる人だと思ったし。でもギャグとかコントとかではない、映画として意味のあるものにしたかったんですよね。きっかけは「シラフのうちに」のPVで、その曲を聴いたら街の景色が流れていく画が浮かんだので、「タクシーの運転手役で芝居をするのはどうかな?」と伊藤くんに提案したんです。そしたら「面白いですね。いろんな人が乗ってくるのがいいっすね」って話になって。そこでそれまで半年間、密着して撮り続けていた時に僕がぼんやりと考えていたニュアンスを脚本に注入した感じですね。純粋なドキュメンタリーではない要素を入れ込んであるけど、それでもちゃんとドキュメンタリーのストーリーの流れに沿ってるし、そこは自分でも上手く表現できた気がします。

──芝居の部分は一見アドリブのようにも見えますけど、ちゃんと脚本があったそうですね。

川口:筋書きはありましたけど、それ以外は自由にやってもらいましたね。

渋川清彦.jpgTezuka Takehito.jpg──それにしても、あの運転手はハマリ役でしたね。伊藤さんの演技も板に付いていたし。

渋川:こっちがアドリブを振っても乗ってくるんですよ。意外に芝居も上手いし。

川口:本物の役者さんが言うんだから間違いないですね(笑)。

渋川:いや、上手いですよ。伊藤もどんどんアドリブを出してくるんです。ある程度筋があって、それ以外は好きなようにやらせてもらって面白かったですね。

川口:その筋っていうのは、映画的にここだけは外さないで欲しいというニュアンスと言うか。たとえば「無名のインディーズ・バンドのドキュメンタリー映画なんて、誰が見るんですかね?」というKEEくんのセリフは僕が言わせたかったんです。そういうのが要所要所であったんですけど、伊藤くんに至ってはセリフがほとんどなかったので、彼がその場で思いついたことをアドリブで返してるんですよ。そんな伊藤くんのセリフの面白さにKEEくんが乗ってくれたんですね。

伊藤:タクシー・ドライバーは「乗せる」のが仕事ですから。

渋川:うるせぇよ(笑)。

川口:伊藤くんとKEEくんはすごく楽しそうに演技をしていたんです。席を交代するのは脚本にあったんですけど、帽子を交換することまでは書いてなかったんですよ。

渋川:そうですね。そこは伊藤のアドリブで、セッションみたいなものです。

川口:その辺はお任せでしたね。演出に厳しい監督ならあり得ない芝居ですけど(笑)。まずはPVとして成立させるのが第一目標だったし、自分が落としたくないニュアンスさえ守られていればいいなと思ったんです。でもホントに、伊藤くんの芝居は味があって良かったですね。

伊藤:ちゃんと練習しましたからね。でも、一番練習してた出発進行の合図がカットされてたんですよ。

川口:PVでもカットされてたもんね(笑)。

伊藤:俺が唯一、「もう一度やらせてください」とお願いしたところなのに。

川口:ごめん。その思いは知らなかった(笑)。

サブ3.jpgサブ10.jpg──旧知の仲である伊藤さんと渋川さんの共演は今回が初めてですか。

伊藤:豊田(利晃)監督の『クローズEXPLODE』で一度共演してますよ。

渋川:そうだね。彼らはバンドの演奏シーンだけで、絡んではなかったんですけど。

──そもそもはどんなきっかけで仲良くなったんですか。

渋川:ロス・ランチェロスのバンジョー山本さんが共通の知り合いだったんです。CLUB WIREの店長だったヤツが上原でレコーディング・スタジオを始めて、そこでOLEDICKFOGGYが『ナキニッシモアライズ』を録ってたんです。それを山本さんがプロデュースしていて、「すごくいいバンドがいるよ」って教えてもらったのでスタジオに遊びに行ったんですよ。肉まんを買って行ったのをよく覚えてますね(笑)。

伊藤:俺も覚えてる(笑)。

渋川:『ナキニッシモアライズ』は何年だったの?

伊藤:2006年かな。それからKEEくんのイベントに呼んでもらって、フライヤーの受け渡しをパチンコ屋でしたりとかして。俺が打ってる横にKEEくんが来て、そこでフライヤーを渡されて。

渋川:伊藤にバイト先を紹介してもらって、ビルの窓拭きの仕事をしたこともあったね。

──今回の映画にも窓拭きのシーンが出てきますね。

伊藤:あのシーンに映ってる人たちはみんな最初は同じ会社で働いてたんですよ。そこにKEEくんもいて。

渋川:そうそう。その後に独立したんだよね。俺も一度だけロープで降りて窓拭きをやりましたよ。慣れてる人はあんなの余裕だからすごいですね。

 

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【伊藤雄和が敬愛する作家・西村賢太氏よりコメントが到着!】
音楽で人生を棒にふる──かような一途バカも、そのポーズだけなら容易いことだ。
だが実践となるとやはり並大抵の意思でできるものではなかろう。
それをごく自然体に、当たり前のような顔をしてやってのけているこのバンドの面々は、ちょっとこれは……どうにも稀有の、見上げた落伍者たちだ。
      ──西村賢太(芥川賞受賞作家『苦役列車』)

主演:OLEDICKFOGGY(伊藤雄和、スージー、TAKE、四條未来、yossuxi、大川順堂)
出演:渋川清彦、仲野茂(アナーキー)、増子直純(怒髪天)、NAOKI(SA)、TezukaTakehito(LINK13)、HAYATO(CROCODILE COX AND THE DISASTER)、中尊寺まい(ベッド・イン)他
監督・撮影・編集:川口 潤
製作:「OLEDICKFOGGY」映画製作委員会(ディスクユニオン+日本出版販売)
制作:アイランドフィルムズ
エグゼクティブプロデューサー:廣畑雅彦、小松賢志
プロデューサー:広中利彦、近藤順也
©2016 OLEDICKFOGGY Film Partners
ビスタ|ステレオ|カラー|デジタル|99分|2016年|日本映画
宣伝:VALERIA
配給:日本出版販売
8月11日(木・祝)よりシネマート新宿にて公開決定! 以降、全国順次公開!

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