Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューa flood of circle(Rooftop2015年11月号)

波瀾万丈なバンドの歩みと佐々木亮介の半生を5分間の歌に昇華した「花」、結成10周年を目前に堂々の完成!

2015.11.02

 シングルとしては通算7作目となるa flood of circle(以下、AFOC)の『花』。そのタイトルトラックは来年の結成10周年を見据えた彼らの新たな代表曲となり得るバンド史上最強のエモーショナル・ナンバーであり、AFOCの核となる魅力が余すところなく凝縮した屈指の名曲である。幼少の頃から根無し草のような生活を送り、バンドというやっと見つけた自分の居場所も相次ぐメンバーの失踪や脱退、レーベルや事務所の移籍など波瀾万丈の道程を強いられる。そうやって常に茨の道を歩んできた佐々木亮介(vo, g)の半生を綴った「花」は、まさに彼の自伝と言うべき赤裸々すぎる歌だ。なぜそこまで自身と対峙して歌を紡ぎ出さねばならないのか。なぜ満身創痍になりながらもバンドの業を背負い込むのか。その答えは、紆余曲折を経た20代を総括するように語るこの佐々木のインタビューの中にある。(interview:椎名宗之)

遺書のつもりで書き始めた歌詞が自伝のようになった

──ニュー・シングルのタイトルトラック「花」は亮介さんの半生を回顧した歌で、まるで自伝のような歌詞ですが、こうした重厚なテーマの曲をこのタイミングで発表したのはどんな意図があったんですか。
佐々木:来年、結成10周年を迎えるにあたって、新しい代表曲が欲しかったんですよ。尚かつ、『ベストライド』やその前の『GOLDEN TIME』では2ビートものがリード曲だったので、もっとAFOCらしい、自分の中から沸き上がるものだけでバンドの核になるような曲を作りたかったんです。それを持って10周年に向かうイメージがあったんですね。今やシングルを出すのも厳しい時代だけど、ここで決定打みたいなシングルを出すことで10周年の口火を切りたかった。
──曲調は正調AFOC節と言うか、小手先の技巧に頼らないストレートなロックンロールですね。
佐々木:この手のストレートな曲をシングルにしたのは、実は初めてなんですよ。遡れば「Buffalo Dance」や「Human License」、「Dancing Zombiez」や「KIDS」も普通のロックンロールのビートじゃないビートにしようと意識していたんです。今年はギタリストが3人も変わったり、事務所が変わったりと流れがいろいろあったんで、ここで自分たちの筋を通す感じの曲を作ろうと思って、それが自伝みたいなテーマにつながっていったんですよね。
──図らずも己の身の来し方がテーマになったのか、最初からそれをテーマにしようと考えていたのか、どちらなんでしょう?
佐々木:いきなり自伝っぽくなったわけじゃなく、自分を追い込んで作っていったら出てきたテーマですね。たとえばライブでは「シーガル」という曲をずっとやってきて、それは自分たちにとって大事な曲であり誇りでもあるんだけど、次の10年に向かう上で新しい代表曲がないとダメだなと思って。それで「自分の核となるものって何だろう?」って探り出したら凄く時間が掛かっちゃったんです。今までで一番曲作りに時間が掛かりましたね。歌詞も曲もどちらも。その過程の中で、今まで自分の身に起きたことを全部書いてしまおうと思いついたんです。俺も来年は30になるし、バンドは10周年を迎えることもあって、ここまでの道程を5分間の歌に詰め込めたら面白いなと思って。
──とは言え、紆余曲折があるにも程があるAFOCの軌跡を振り返るのは、かさぶたを剥がすようなところもありますよね。
佐々木:確かに。たとえばメンバーの失踪や脱退は別に俺がクビにしたわけじゃなくて、俺がその都度フラレてきたわけですよ。そんなフラレてきた歴史を歌にするわけだから、なんて泥くさい生き方をしてるんだろうと自分でも思ったり(笑)。
──「散った青春も飯の種にして」きたわけですからね(笑)。
佐々木:最初は遺書にしようと思ったんです。未来のことを歌にしようと思ってたのに、自分がだんだん追い詰められちゃって、これでダメならそれでもいいやって遺書のつもりで書き始めたんですよ。そしたら、遺書っていうテーマが出てきたら逆にスラスラ書けるようになって、だんだん前向きなモードになれたんですね。2番に差し掛かった頃には「まだ死ねないな」と思うようになって、結局は自伝のようになったんです。
──幼い頃から引っ越しで各地を転々とした亮介さんが「どこにも故郷がない人は/土に還るまでが遠足です」と唄う冒頭の歌詞はかなりヘヴィだなと思って。
佐々木:バンドを始めて、これが自分のホームグラウンドだと思ったら、そのバンド自体が転がりまくっているという(笑)。でも、「居場所はここに作るしかない/ここが戦場で スウィートホーム」という歌詞は10年近くバンドをやってきてやっと実感できたことなんです。どれだけ居場所が変わろうとも、結局大事なのは人の縁なんですよ。レーベルにせよ事務所にせよ、どこに移っても熱い人たちに囲まれているのは自分たちが掴んできた結果だし、そんな人たちと携わっていれば、自分が何を唄うべきか、どんな歌を作るべきかがブレないんです。帰るべき居場所は確かに失ってしまったけれど、自分の歌が鳴る場所があればそこで生きていける。まぁ、「土に還るまでが遠足です」って言葉が出てきた時は自分でも笑っちゃいましたけどね。めっちゃ重いなと思って(笑)。でも、借り物の言葉じゃなく自分の言葉で書けたのは満足してます。
 

「苦しいほうを選べよ」ともう一人の自分が耳元で囁く

──これ、お世辞でも何でもなく、この「花」という曲はAFOC史上五指に入る大名曲だと思うんですよね。
佐々木:自分でもそれだけの手応えはありますね。新曲を出すたびに前の曲を乗り越えることを意識してきたんですけど、この「花」はこれから大切に育てていきたい気持ちのほうが強いんです。すでに花を咲かせた人の曲じゃなく、まだ咲かせていない人の曲だから余計にそう思いますね。
──近年のAFOCは生きることへの執着や、どれだけ辛酸を舐めても砂を掴んで立ち上がっていく心意気を主軸に据えた曲が増えてきたように感じるし、「花」という楽曲はその集大成みたいな部分もありますよね。
佐々木:そうですね。たとえばレーベルの大先輩である怒髪天のライブを見てると、増子(直純)さんを始めメンバーの生き様を感じ取る瞬間があるじゃないですか。それって、「これが自分の生き様です」って説明できるものじゃないけど、この「花」という曲は自分が生きてきた証だと胸を張って言えます。それを自信を持って書き上げられたし、自分たちの代表曲だと思って作り上げられたから頑張って良かったなと思いますね。何か別のジャンルから音楽的要素を借りてきたり、自分の外にあるテーマで曲を書いたり、中途半端なことをしたらここまでの曲にはならなかっただろうし。自分の過去と向き合うのは辛かったけど、向き合って辛い時間を過ごすことに意味があると思ったし、敢えて苦しい道を選んだのが結果的に良かったですね。曲作りをしているもう一人の自分が「苦しいほうを選べよ」って耳元で囁いてるような感じだったし、実作業は辛かったけど、自分にしか唄えないことが必ず出てくるはずだと信じて取り組みました。
──歌詞の推敲も過去随一だったのでは?
佐々木:ノート一冊分は余裕で行ってると思います。いつも作曲ノートを持ち歩いてるんですけど、そのページの減り方が今までで一番早かったので。
──400カットを超えるロードムービーのような「花」のMVも素晴らしい出来ですね。
佐々木:新宿ロフトで知り合ったクドカン(宮藤官九郎)さんにMVのURLをメールで送ったら、「凄いね! これ、どこで撮ったの!?」って返事が来たくらい、映像を作ってる人が見てもびっくりしてるんですよ。
──あの撮影はツアーの遠征先で撮り溜めたものなんですか。
佐々木:いや、あのMVのために二泊三泊の強行撮影をしたんです。いつも俺たちの映像を撮ってもらってる映像スタッフさんにRADWIMPSとかを撮ってる監督を紹介してもらって、その監督とスタッフ、マネージャーと俺の4人で朝の4時に集合して夜中まで撮って、呑んでまた次の日の早朝から撮るみたいな感じで。宮城県からだんだん下って東京までずっと撮り続けていったんです。「七転び八起き」じゃ済まなかったから「百転び百一起きでどうにか育ってきた」って歌詞を書いたんですけど(笑)、それが自分でも気に入ってたので、100カットがバーッと変わりまくるMVはどうですかね? って提案したんですよ。それが結局は4倍のカットになってしまったという(笑)。
──ひりひりとした歌の世界観が見事に投影された、亮介さんが七転八倒ならぬ百転百一倒する様がにじみ出た秀逸な出来だと思いますよ。
佐々木:最小限のチームで二泊三泊のハードな撮影を強行すると自ずと仲良くなるし、撮影ハイって言うか、ナゾのグルーヴが生まれるんです(笑)。そんな経験は初めてでしたね。今回の撮影で監督が日芸の先輩だってことが分かって、距離がグッと近づいたりして。撮りながらどんどんアイディアが出てきて、最初は予定してなかった血を流すシーンも急遽撮ったんです。凄くライブっぽい撮り方でしたね。
──ボトルに入った泥水を頭から被るのもインパクトがありますね。
佐々木:あれは最初、墨汁を掛けられそうになったんですよ。次の日ライブだから落ちませんよってことで調整したんですけど(笑)。あと、革ジャンのまま海に落とされたり、自動車の廃棄工場へ行って並べた廃車の上をダッシュさせられたりして、バンドマンってこんなこともしなくちゃいけないのかな? って思いましたね(笑)。でも面白かったですよ。あんなに濃い撮影をしたのは初めてだったんで。自分でもAFOC史上ベストMVを作れた気がします。
 
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「花」

初回限定盤(CD+DVD):TECI-380/2,000円+税
通常盤(CD):TECI-381/1,200円+税
2015年11月4日(水)発売

amazonで購入

ディスク:1
1. 花
2. 鬼殺し
3. Dreamers Song
4. Trash Blues -Band ver.-
ディスク:2
1. ~Tour Rehearsal~ (AFOC presents What’s Going On Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”)
2. One Shot Kill (AFOC presents What’s Going On Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”)
3. スカイウォーカー (AFOC presents What’s Going On Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”)
4. Buffalo Dance (AFOC presents What’s Going On Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”)
5. Boy (AFOC presents What’s Going On Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”)
6. ベストライド (AFOC presents What’s Going On Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”)
7. GO (AFOC presents What’s Going On Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”)
8. ベストライド (Music Video)
9. ベストライド (MVオフショット)&「ア・フラッド・オブ・サークル賞」ドキュメント映像

LIVE INFOライブ情報

AFOC presents VS tour “BATTLE ROYAL 2015”
2015年11月20日(金)なんばHatch
OPEN 18:00/START 19:00
with:グッドモーニングアメリカ
 
2015年11月22日(日)名古屋DIAMOND HALL
OPEN 17:00/START 18:00
with:HEY-SMITH
 
2015年11月27日(金)Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:00/START 19:00
with:9mm Parabellum Bullet
 
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