30派のスタンスを示した「走らないけど止まらない」
──「三十派行進曲」みたいに全員が持ち回りで唄う曲を締めに持ってくる辺りにも、4人の結束の強さやバンドの一体感が窺えますね。
ソウタ:あの曲も新しい試みですよね。キーがどんどん変わっていくのも新しいですけど(笑)。
修豚:みんな自分のキーじゃないと唄えないからな(笑)。音を合わせてるうちに「みんなで唄ってみるか?」ってことになったんだよね。仮タイトルが「三十派ドリフ」だったしさ(笑)。
──やっぱり。ちょっと「ズンドコ節」みたいな曲調だし、修豚さんが長さんばりにマーフィーさんにツッコミを入れるところもあるし(笑)。しかも、歌入れ前日の深夜に修豚さんが追加の歌詞をメンバーにメールしたそうで。
修豚:そうそう。「最後に速くなる部分の歌詞を変えたほうがいいんじゃない?」ってサトパーに言われたのを急に思い出して、夜中の2時ぐらいにみんなに慌ててメールしたんだよね。
ソウタ:「泣いて泣かされまた泣いた〜」以降の、修豚さん、サトパー、僕が唄うパートですね。
修豚:リハでは一度も唄ってなかったもんね。レコーディングで一発勝負。
ソウタ:メインで唄うのは初めてでしたけど、ドリフみたいにドタバタやるイメージが頭のなかにあったので気負いは特になかったですね。メンバー一人ひとりの味と色が出せればいいなと思ってたぐらいで。
──「走らないけど止まらない! 走れないから止まれない!? 走るどころかすっ転がって! やめられないから16年!」と全員で唄うパートは軽いけどちょっと重くて、グッときますね。
修豚:そこが一番のキモだったからね。
ソウタ:「走らないけど止まらない」ってフレーズは昔から言ってる30派のスローガンで、我々のスタンスを分かりやすく表してるキャッチコピーなんです。
──そういうミドルエイジの大合唱でも、シミったれた男の純情や未練がましい恋心を唄った歌でも、バッキバキのメロコア・サウンドと上手く調和するんだから不思議なものですよね。
ソウタ:不思議ですよね。と言うか、新しいですよね。って、もう16年やってるんですけど(笑)。でも、他にいないと思うんですよ。これでなんで売れないんだろう? って思いますもんね。
修豚:それは売る気がないからだろうな(笑)。
──(笑)このタイミングで『AMERICA UDON』のリマスター盤を出すのはどんな理由からですか。
ソウタ:売り切れて廃盤状態だったからです。再発して欲しいという声をずっといただいていて、有り難いことに新しいアルバムと同時期に出せることになったんですよ。
──“AMERICA UDON”というタイトル自体が30派の特性を物語っていますよね。US直系のパンキッシュ音だけど、うどんの出汁がよく効いた和の部分もちゃんとある、みたいな。
修豚:そこまで深く考えてない(笑)。“AMERICA UDON”って言葉は、そもそも俺の言い間違いなんだよ。亀戸ハードコアでライブをやった時、お客さんに言われた「亀戸餃子」って言葉が「アメリカうどん」に聞こえちゃったんだよね(笑)。
──それに比べたら、本作『SENTIMENTAL PUNK ROCK』はタイトルからして本気ですよね。
ソウタ:殊更に気負いがあるわけじゃないんですけどね。でもさっきも言ったように、気持ち的にはデビュー・アルバムみたいな作品を出したかったのは確かなんです。
──せっかくこれだけの会心作を完成させたわけですから、レコ発ライブもどんどんやっていただきたいですが。
修豚:CLUB PHASEでの恒例のワンマンが5月にあるけど、それ以降はいつもながらのマイペースだろうね。1年ぐらいかけて、5ヶ所ぐらいでやるかな(笑)。
──ドーン!と打ち上げ花火みたいに行かないところが30派らしさと言いますか…。
ソウタ:花火は打たないでしょうねぇ。そもそも花火の打ち上げ方もよく分からないし、「走らないけど止まらない」バンドですから(笑)。