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高 英起(デイリーNK 東京支局長)×カルロス矢吹(ライター)×りむ・ちゅぬんトンム(先軍女子)(Rooftop2015年3月号)

 新宿ネイキッドロフトで、もうすでに4回開催されているイベント『K-POP vs NK-POP』。そこで出演者から熱く紹介されている北朝鮮のポップス「NK-POP」がいよいよ一冊の本にまとめ上げられ、3月に出版されることが決まった! イベントの出演者でもあり、今回の本の著者でもあるデイリーNKジャパン編集長、高 英起さんとライターのカルロス矢吹さん。そして、北朝鮮の文化を愛する先軍女子、りむ・ちゅぬんトンムを交え、NK-POPの奥深さについて話を伺った。(interview:小柳 元[NAKED LOFT])

北朝鮮をカジュアルに楽しむための「NK-POP」

──まずは、なぜ世間にNK-POPを紹介するようになったのか、その経緯をお話ししてもらいたいんですが。
カルロス:高さんが最初にNK-POPを紹介したのは、北朝鮮を撮影している写真家・初沢亜利さんのネイキッドロフトのイベントでゲストに来ていた時でした。あの時に、高さんが紹介したモランボン楽団の映像が衝撃的で、お客さんが凄い盛り上がっていましたよね。
高:あの時はモランボン楽団の曲と「自力更生行進曲」という曲をかけたんだけど、ああいう公の場でかけたのは初めてだったね。それまでは、そんな曲を一人で唄ったとしても、周りからは白い目で見られてた(笑)。
カルロス:そのイベントを仕切っていた平野悠さんも凄く面白がっていて、それで『K-POP vs NK-POP』ってプロレス的にやったら面白そうだねという話になって、僕が声をかけてイベントが始まったんでしたよね。
高:もともとロフトプラスワンとかネイキッドロフトで『北朝鮮祭り』というイベントをやっていたから、そういうイベントをやることにはあまり抵抗がなかった。でもあの時期、『北朝鮮祭り』はほぼ壊滅状態で、お客さんが来ても20人くらいだったかなぁ。中身は面白いんだけれども、オタクの品評会みたいな感じになっていて、僕自身がそれを物足りなく思っちゃったんだよね。その前後にここにいるりむ・ちゅぬんトンムとか、カジュアルに北朝鮮を楽しむ女子が増えてきたこともあって、もうちょっと明るくて、普通の人でも来られるようなイベントができたらいいなと思っていて。それで絶対無理だとは思っていたんですけど、北朝鮮の音楽を「NK-POP」として紹介してみようということになったんです。やってみたら、凄い盛り上がって驚いたな。確か1日目は満員で、10人くらい入れなかったんじゃないかな。ちゅぬんトンムは実際にイベントを体験してみてどうだった?
ちゅぬんトンム:行く前は、半分マスクをして顔を隠していかなきゃいけないくらいのイベントなのかなと思っていたんです(笑)。
高:確かにツイッターなんかでは、待ってました! とばかりに過激な言葉で、「南朝鮮をキャタピラーで踏み潰してやる!」とか、「最終音楽兵器で南朝鮮を火の海に!」なんて、エラい盛り上がっていたからね。イベントでもチョソンクラスタ(北朝鮮マニア)が、ミサイル発射の映像になるとウワーってスタンディング・オベーションで応えたりして(笑)。
 

南北朝鮮の音楽も純粋に楽しめばいい

ちゅぬんトンム:でも、そこで初めてチョソンクラスタの人たちと出会って、こういうふうに盛り上がればいいんだって学んだし、音楽ってこんなふうに純粋に楽しんでいいんだって思いましたね。チョソンを応援するつもりで行ったので、韓国の音楽には全く興味がなかったんですけど、K-POPも面白いじゃんって思いました。
カルロス:そうですよね。K-POP側の出演者、大石(始)さんやまつもと(たくお)さんも言っていたんですけど、K-POPは日本では流行っているけど、あの二人が本当に好きな韓国の音楽ってなかなか紹介しづらかったりするらしいんです。だから、その手段を模索していた時に『K-POP vs NK-POP』で対決風に韓国の音楽を紹介してみて、こういうふうにすればいいんだって発見することも多かったみたいですよ。お客さんも凄い盛り上がっていましたからね。
ちゅぬんトンム:私の入り方とは逆に、NK-POPに興味を持ってくれる人がいても面白いですよね。
高:ちゅぬんトンムには3回目にNK-POPに合わせてステージで踊ってもらったんだよね。
ちゅぬんトンム:踊りましたね(笑)。
高:K-POP側なら、「踊り」なんかしようと思ったら、いくらでもできると思うんだけど、あえてしてなかったですよね。そこで、NK-POP側がある意味「禁じ手」で闘ったことが、ポイント高かったと今でも思っているんだよ。本来だったらK-POPが派手にやるところを、逆にNK-POPのほうが派手にやるという逆転現象、「ねじれ現象」が起きてしまったというのが、ちょっと面白い感じがしますよね。
──じゃあ、今度出版されるお二人の著書についてもお伺いしたいんですけど、今回はNK-POPがメインなんですよね。
高:もうそれのみですね。それを専門にウォッチしている人から見れば、物足りない内容かもしれないですけど、どっぷりはまってない人が歴史を踏まえて解説するっていう感じです。マニアックな本に見えるけど、実はそうじゃないという。
カルロス:北朝鮮に興味がある人だけでなく、ワールド・ミュージック好きの人が買ってくれればいいなと思っているんです。いろんな国の音楽を聴くっていう人たちがいるんですよ。僕はその辺の人たちの趣向がある程度分かるんで、そのワールド・ミュージック的な観点から言うと、北朝鮮ポップスはどのように見えていて、実際、北朝鮮の人たちにはどう見えているのかっていうのを本で高さんにぶつけている感じです。朝鮮の歴史を縦軸で追いつつ、その横に音楽の知識を折り込んでいく構成になっているんですけど、あくまでも音楽の本として作ったつもりです。ディスクガイドとしても使えるようになっていると思いますよ。
 

「モランボン楽団を日本に呼ぶ会」を作りたい

──今後の展望や野望というのはありますか?
高:一番はモランボン楽団が海外公演を狙っているので、そこに有志を募って行ってですね、鉢巻をしてうちわを作って(笑)、そういう日本のアイドル的なノリを逆に向こうの人たちに見てもらいたいですね。ただ、そもそもモランボン楽団はアイドルとしてはちょっと年は高くて、20代中盤から後半の人たちばっかりだから、日本人の感覚から言ったら熟女に近いものがあると思うけど(笑)。
カルロス:ツアー組んだらいいじゃないですか? デイリーNKジャパンで。
高:モランボン楽団は東南アジアとかではやる気満々らしいんですよ。それはなぜかと言うと、日本では北朝鮮って言うけれども、東南アジアとか行ったら北とか南とかあまり興味ないし、関係ないんですよ。東南アジアでは、やっぱりK-POPとかって凄い人気あるんです。彼らからしてみればコリアンで唄っていて、それが韓国か北朝鮮かの違いなんて分からない。北朝鮮側はそういうマーケットを狙ってるんじゃないかと思うんですよね。それは極めて正しい戦略だと思う。ただ凄く洗練された歌を唄う人が「朝鮮半島から来た」って言ったら、意外と現地の人たちとかは受け入れるんじゃないかなぁ。実際、僕が去年の6月、カンボジアに行った時に、僕のパソコンのトップ画面のモランボン楽団の写真を見て、普通に喫茶店のお姉ちゃんが「オー! ビューティフル!(もの凄い可愛いねっ!)」ていう感じで声をかけてきたんですよ。だからやっぱり分かる人には分かるんだと思って。
カルロスやっぱり伝わるんですね。僕の野望としては、『K-POP vs NK-POP』のコンピレーション・アルバムを作りたいなと思っているんです。
高:交互にやるのはいいよなぁ。
カルロスこういう時は普通、DISC-1、DISC-2とかになるんですけど、北盤、南盤とかにしたいんですよね(笑)。
高:著作権的にはなかなか難しそうだけど、面白そうだね。
カルロスあと、モランボン楽団の来日公演っていうのもやりたいですよね。僕らがどうこうするのを超えたところにいろいろとハードルがあるので、それがクリアーされてからできることだと思うんですけど。
高:ある程度までいったら、「モランボン楽団を日本に呼ぶ会」とかを作って、一番最初に声を上げたんだということを、僕たちが入る余地がなかったとしても訴えていきたいよね。
──いろいろと興味深い野望がまだまだあるようで、これからも皆さんの活動からは目が離せないですね! 本日はどうもありがとうございました!
 
『北朝鮮ポップスの世界』

著者:高 英起 カルロス矢吹
発売日:2015年3月17日
出版社:花伝社
予価:1,500円+税

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Live info.

K-POP vs NK-POP 第4弾
〜朝鮮ポップス誕生の秘密だニャン〜
2015年3月22日(日)ネイキッドロフト
【出演】高 英起(デイリーNK 東京支局長)、大石 始(旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」ライター/編集)、まつもとたくお(K-POP番長/音楽ライター)、カルロス矢吹(音楽ライター)、りむ・ちゅぬんトンム(出演予定)
OPEN 18:30/START 19:30 
予約 1,500円/当日 2,000円(共に飲食別)
*ご予約はネイキッドロフト店頭電話(03-3205-1556)&ウェブ予約にて!!