カセットテープでしか聴けない「おまけ」の内容とは……
──「君がいても、いなくても/目が覚めれば朝が来る」と唄われる「グッドモーニング」は、「それでも結局、夜明けに日は昇る」という歌詞がある「ライジング」と相通ずる世界観がありますね。
猪股:ああ、なるほど。このEPのなかで1曲、正統派のロックンロールが欲しくて入れたんですよ。
高橋:かなり直球な感じのね。「Rock'n' Roll 難民」もそういうテイストの曲だったんですけど、それを思い出させる直球さを目指して。
猪股:俺が昔から好きだったパワーポップとかポップパンクみたいな感じにしたかったんですよ。“音頭”系もこのバンドの要素のひとつではあるんですが、それはかなり工夫してやっているので。根っこにあるのはポップパンクなんです。
──正統派のロックンロールって、構造がシンプルだから逆に難しくないですか。
猪股:まぁ、前はそんな感じでしたからね。
高橋:このEPのために10曲くらい持ち寄ったんですけど、まさか「グッドモーニング」が採用されるとは思わなかったんですよ。
小石:グッとくる曲は他にもあったもんね。
高橋:俺的には「こんなあっさりした曲を入れちゃうの!?」って思ったかな。
星野:選曲の基準は、テープっぽいか、テープっぽくないかだったよね。
猪股:そうそう。いわゆる“B面感”みたいな感じ。「グッドモーニング」はB面の1曲目にもってこいだなと思って。A面にするにはちょっと地味っていう、絶妙な“B面感”があるなと。これはたとえじゃなくて、ホントにテープのB面ですからね(笑)。
──インストゥルメンタルの「ドクターダウナーのテーマ(ロングバージョン)」は、同じくカセット音源だった『Rock'n' Roll 難民』にも収録されていましたよね。
猪股:そうです。あの時も「ロングバージョン」だったんですけど、当時は俺がベースで星野がギターだったんです。『Rock'n' Roll 難民』を出した後にパート・チェンジをしたので、今の編成で録り直してみたんですよ。
高橋:パートが変わっても、ずっとやり続けてる曲だもんね。
──アウェイなライブでもお客さんを掴むキャッチーさがありますよね。
星野:掴むんですけど、たいてい一番最後にやる曲なので。
高橋:掴み逃げですね(笑)。
猪股:世に出回ったCDとしては、STEP UP RECORDSのオムニバスに入ってるバージョンでしか聴けないので、ここで改めて音源化しようと思ったんですよね。そのオムニバスも今やCDショップに置いてないみたいなので、ライブ会場だけでも出回る音源として録っておこうと。
──ライブの定番曲なのに、どうしても普通に買えるCDには収録されない運命なんですね(笑)。
猪股:ライブでは毎回やってる曲を、あえてこういう形態で出すのもいいかなと思ったんです。
──そこも“B面感”ならではの良さと言うか。
猪股:“B面感”と言うよりも“物販感”ですかね(笑)。
──“物販感”は、カセットでしか聴けない「おまけ」にその本領が発揮されていますね。みなさんがパーソナリティを務めるラジオ番組という体なんですが(笑)、これは誰の発案だったんですか。
猪股:俺です。実は、前にやってたバンドでも同じことをやったことがあったんです。今はQomolangma Tomatoでドラムを叩いている大工原幹雄、ケイちゃん(高橋)、俺の3人でやってたバンドなんですけど。
高橋:あれはかなり好評だったと思うけどね。まぁ、クオリティは今回と全く同じだったけど(笑)。
猪股:レコーディングの合間に、凄い低いテンションで録ったんですけど、それはテープじゃなくCDに入れました(笑)。そういうのをまたいつかやりたいと思ってて、やるなら今だなと。CDじゃまずできないし、カセットで音源を出す今しかないって。
──うどんを土鍋で煮込みながら話しているというのも、かなり自由なシチュエーションですよね(笑)。
猪股:最初はおでんだったんですよ。
高橋:おでんにうどんを投入したんです(笑)。だけど、あんなに音が鮮明だとは思わなかったね。
猪股:今回はウチのリビングで録ったんですよ。テーブルを四方で囲って、カセットコンロと鍋を真ん中に置いて。
高橋:鍋の真上にマイクを吊るしてね。もしマイクが落ちたら出汁が出ちゃうからドキドキしたね(笑)。
猪股:あの「おまけ」は、全部で3時間録ったんですよ。それをかいつまんで3分に編集したんです。あとの2時間57分は意味のないことを延々話してるだけだったので(笑)。
星野:呑みながらだったから、途中から記憶がないもんね。恥ずかしくて聴き返したくないよ(笑)。
猪股:まぁ、細かい内容はテープを聴いた人だけのお楽しみってことで。CDのほうにはあえて入れてませんからね。万が一、iTunesに入れられちゃったら困るし(笑)。