Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー赤城晴康(「幻影ヲ駆ケル太陽」原案・原作)/Rooftop2014年4月号

ギャップを楽しむ世界観

2014.04.01

深く作り込んだ世界観

── オリジナル作品ですと意識共有が難しいと思うので、どうやっていたのかというのは気になっていました。

赤城:最終的にどういう形になるかの過程も作り込みました。タロットカードをコンセプトとした大人向けの作品にしたい、ただシリアスな展開が続いたとしても最後はハッピーエンドになるようにとは意識はしました。

── 世界観にタロットが深く関わっていますが、元からお好きだったんですか?

赤城:そうですね、田中も好きでしたし僕も興味はありました。深く知るのは作品を作り始めてからです。タロットのもつ意味を元にキャラクターを膨らませていきました。

── あかつきさんのイメージを受けて、設定にプラスされた要素もあるんですか?

赤城:キャラの設定をかなり作り込んでからデザインをお願いしたので、そんなに大きなブレはなかったです。もちろんあかつきさんからの提案をいただいて変更・追加された要素もあります。

── 世界観がきちっと出来ているから、イメージもしやすかったんですね。

赤城:出身国やイメージカラーも作っていました。田中はゲーム畑出身なので、キャラクターの作り方がゲーム的なんです。なのでゲームユーザーにすごく受け入れられているらしいですね。2年半以上設定には時間をかけたので、いろいろと深く作りこんでいます。

── キャストの方もかなり初期から決まっていたんですか?

赤城:そんなことないです。あかり役の門脇舞以さんだけは、初期の頃からお願いしていたので長いですけど。

── 門脇さんにお願いした経緯は?

赤城:たくさんの方のボイスサンプルを聞いて、一番イメージに近かったからです。作品テーマとして“ギャップ”という部分が強かった訳ですが、門脇さんのファンが持つイメージは「ほんわかした女の子」。でもゲームなどでは男の子役もこなしていたのでお願いできるんじゃないかと考えました。徳井(青空)さんも元気なキャラが多い中、お淑やかなキャラを演じていただいたのも1つの狙いです。

── 普段演じることの多い役と違う事で、キャストの方も楽しかったんじゃないでしょうか?

赤城:「普段演じるキャラとは違うので、すごく面白かった」と言っていただけました。

── 新人方が多いですが、どのように選ばれたんですか?

赤城:オーディションです。オリジナルタイトルということで期待もしていただけて、凄い数の方に応募していただいたんです。勿論、門脇さんにもオーディションしていただいてます。

── 特に印象に残った方はいらっしゃいますか?

赤城:メルティナ役の東山(奈央)さんですね、とても演技のお上手な方です。監督も「若いけど凄い優秀なので、これから伸びて欲しいですよね。」と言ってました。

── ギャップということですが、発想の元はなんですか?

赤城:田中と2人で意見を出し合ってですから、お互いが影響を受けた作品が混じりあったという形になるのかもしれませんね。

── これだけ練りこんだ内容を作るとなると、ぶつかることも多かったんじゃないですか?

赤城:僕が出した意見を田中が上手く設定に練りこんでくれたので、いわゆる「大きな衝突」というのはありませんでした。

── 舞台のモデルを長崎にした理由は?

赤城:タロットカードが日本のものではないので、異国情緒のある街がよかったんです。候補に横浜も上がったんですが、最終的には長崎がモデルになりました。

── かなり綿密なロケハンをされたんですか?

赤城:現地に足を運んで取材していただいたそうです。僕は都合が合わずご一緒できなかったんですけど、1月後位に行ってきました。初めて行きましたけど、長崎いいところです。

── 変身しても服装が変わらないのはこだわりがあってなんですか?

赤城:一番こだわったところです。変身して戦うというのはビジュアル的に一番わかりやすいと思うんですけど、一般的な魔法少女モノにしたくはなかったことと、「タロットの力が憑依した」ということを表したかったんです。その結果、表情の変化が一番わかりやすいんじゃないかという結論に至りました。基本的に魔法陣なども極力使わないようにしています。タロットカードが「魔法使い」のメルティナだけは使用していますが。

── 本編も肉弾戦や武器を使って戦いますよね。

赤城:いわゆる「特殊能力系」なので、コスチュームの変化が必要がないんです。一見魔法少女に見える作品で、そういった展開を見せることは面白いんじゃなかなと思ったのが企画の最初の段階です。「もう魔法なんていらない」ってキャッチコピーはどう? って思っていた時期もありました(笑)。

── スタッフの方々にも愛されている作品ですね。

赤城:「またやりたいです」と言っていただけているので、とてもありがたいことです。イベントもお客さんに盛り上がっていただけて、何らかの形で第4夜のようなイベントもやりたいと考えています。

── 新しい展開も考えられているんですか?

赤城:やりきれなかったことも多いので、何かしたいなとは思っています。イベント内で紹介した新キャラをTwitterで公開したところ「なんで、このキャラアニメで出さなかったの」というありがたい声もいただいてます。

── 幻影ファンも良い人ばかりですね。

赤城:紳士的で美しいですよね。作品に対する愛を持って、純粋にイベントを楽しみに来てくれてるんだなと感じました。

── 今後も愛されていく作品ということですよ。最後にファンの方々にメッセージをお願いします。

赤城:僕らが「本当に作りたい作品を作ろう」と思ってこの作品を作りました。放送が終わって半年たっていますが、根強いファンが付いていただいていることはイベントでより一層熱として感じることができました。応援していただける事はパワーとなるので、今後ファンのみんなに向けて何かしていかなきゃいけないなという思いは回を重ねるごとに感じています。これからも愛していただけるとありがたいです。

(※1)アニメーションの企画・制作会社。代表作「破邪大星ダンガイオー」「天地無用!!シリーズ」など(※2)赤城晴康と共に「幻影ヲ駆ケル太陽」原案・原作を担当
(※3)バンクシステムの略。映像作品などで特定のシーンの動画・あるいは背景を保存し、別の部分で流用するシステム。

Blu-ray&DVD
「幻影ヲ駆ケル太陽」全7巻

Blu-ray完全生産限定版:¥7,000+税
DVD完全生産限定版:¥6,000+税
DVD通常版:¥5,000+税

COMIC
「幻影ヲ駆ケル太陽」全4巻(ガンガンコミックス ONLINE)

原作/sole;viola 作画/加藤コウキ
1・2巻:¥571+税 / 3・4巻:¥562+税

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