ホームレス、新興宗教、腐乱死体......ありとあらゆる禁忌に好奇心ひとつで飛び込む村田らむ。コアチョコ、大島てる等、プラスワンのイベントでもその存在感を遺憾なく発揮する奇才が、来たる2月11日に満を持して開催する『ゴミ屋敷ナイト』。
常軌を逸した汚部屋の数々を肴にお酒が呑める飲食店はプラスワンだけ!!(聞き手:小林タクオ、構成:マツマル /LOFT PLUS ONE)
Welcome to theゴミ屋敷!!
── さっそくなんですが、今回『ゴミ屋敷ナイト』を開催しようと思われた経緯についてお聞かせ願えますでしょうか?
らむ:やはりこの度の、『ゴミ屋敷奮闘記』の出版記念、という意味合いが大きいですね。本当は去年の夏頃には完成していたはずなんですが、いろいろな現場を回っていると、もっといいネタが出てくるんじゃないかと期待してしまって。…まあ、めんどくさがりの性分も災いしてはいるのですが(笑)。
── いまも実際に清掃業者でバイトされてるんですよね?
らむ:はい。ゴミ屋敷はずっと気になっていたテーマだったんですが、ある時に「孫の手」という清掃業者さんに取材の交渉にいったところ、有難いことに快諾して頂けたんです。ただ、はじめての現場が「けっこう汚い大学生の部屋」ぐらいなもので、どうにも収まりがつかなくなってしまいまして、以降、取材も兼ねたアルバイトとして様々な現場のお手伝いをさせて頂くこととなりました。
── 印象に残るお部屋はありますか?
らむ:色々ありましたが、ゴミが部屋の天井にまで達してしまったので、やむを得ず車上生活をすることになった依頼人のところに行った際は、ゴミの山から合計千本ぐらいの尿の入ったペットボトルが出てきまして…それら全てを窓から外に投げ捨てる作業は心身ともにキツかったですね。それと、ゴミ屋敷のゴミは法律的に何に分類されるのか? というのも実は大きな問題で、糞尿は産業廃棄物には該当しないので、ウチの業者では他のゴミと一緒に処分することができなかったんです。ですから業務としてはそのまま置いていくしかなかったところを、その方に正しいゴミの捨て方をレクチャーしながら、一緒に尿入りペットボトルを一本一本丁寧に捨ててあげました(笑)。
── それは親切ですね(笑)。他にもあれば是非。
らむ:インパクトがあったものだと、踊り子さんのお宅に伺ったときですかね。ご本人がお客さんから貰ったチップを部屋にハダカでバラ撒いたまま生活していたようで、汚部屋を片付けながら、発掘したお札を一度洗ってから段ボールに一枚一枚貼って乾かしていったんですが、作業が終わって数えてみたら230万円ぐらいになったので、それで掃除料金の足りない分を支払ってもらいました。その子の場合、預金通帳も作らず、お金を床に放置しているのはさすがに不用心過ぎる、ということで、我々も銀行に同行して口座の作り方から教育してあげたんですが、乾かしたお札が全部ぐしゃぐしゃで機械を通らなかったので、閉店後に銀行の方々と一緒に一枚一枚手作業でお札を数えて、めでたく口座開設となりました(笑)。
── アフターケア万全の、良心的な業者さんですね(笑)。
らむといえばホームレス?
── らむさんと言えば、ホームレスの研究でも有名ですが、『こじき大百科』などの著書が労働団体から苦情を受けて発禁になったという話は本当だったんでしょうか?
らむ:はい、まあ本当のところは発禁というか、自主規制というのが近い表現かもしれませんが。
── タイトルが既にヤバいですもんね(笑)。
らむ:当時の出版社の社長からは『こじき』っていう直球なタイトルでいけと言われたんですが、さすがに酷すぎるので、僕自身の優しさで『大百科』も付けました(笑)。その後、『こじき大百科』のファンだった別の出版社の編集さんに、「ウチなら大丈夫ですから!」と誘われて『ホームレス大百科』を出したんですが、結局ダメという(笑)。それを経て、昨年の『ホームレス大博覧会』の出版に至るのですが、相変わらず非難の声はありますね。
── らむさんの今後の展開もお訊ねしたいのですが。
らむ:いわゆる「サブカル」な体験誌みたいなものが減りつつあるので、WebやKindleでの自主出版も考えてます。やはり自分も紙の世代の人間なので、紙へのこだわりはありますが、Webの方が話題にも上がりやすいし、新しい土地を開拓していかないといけないな、という気持ちもありますね。ただ、「サブカル」っていうと、みうらさんあたりのイメージがあるんですが、僕はもうちょっと「アウト」なラインを攻めていきたいです。
── 本のタイトルからしてアウトですしね(笑)。
らむ:この前、『ホームレス大博覧会』で、某AVメーカーからインターネット放送のオファーを頂いたんですが、直前になって「やっぱり倫理的に問題が…」と言われて出演中止になりまして…。「俺の本、そんなにアウト!?」って、愕然としました(笑)。
── 今春、『Loft PlusOne West』と称して、ロフトのトークライブハウスの新店舗がいよいよ大阪に進出することとなったんですが、『村田らむと行く、西成ツアー』とかいかがでしょう。
らむ:いいですね! 寿あたりの映像を持ち込んで、『ドヤ街東西対決』とかどうでしょうか(笑)。ただ、西成も高齢化の影響で福祉も増えて、少し大人しくなってしまったかな、という印象はありますね。山谷なんかはもっと元気がなくて、今度のオリンピックでどうにかなってしまうのではないかな…少し寂しい話ですが。
断捨離にNO!!
── ホームレスの他にも、宗教団体「O」に突撃したりと、まさに決死のルポが多いらむさんですが、わざわざタブーに踏み込んでいくのはなぜでしょうか?
らむ:単純に好奇心ですね。いいことも言ってみたいけど、一般的なモラルよりも「見たい」という気持ちの方が勝ってしまうんです。ゴミ屋敷にしても、ゴミが積もってるさまって、何となくカッコいいじゃないですか。大友克洋さんとかに描いてほしい(笑)。やはり本物の、ゴミを何年間も蓄積した結果、ゴミの地層ができてしまうまでに成長してしまった汚部屋を見ると、これはフジテレビのドラマとかでは絶対に再現できないな、と感動すらしますね。
── そこまで汚い部屋にしてしまう人の、メンタル的な共通点とかはあるんですかね?
らむ:「大人しくていい人」というのが意外に多いですね。案外、部屋がきれいな人って、分別せずにポイポイゴミを捨てたりするんですが、ゴミ屋敷の住人はそれで大家さんに怒られたりして捨てられなくなってしまうケースもあって。ウチは掃除料金の分割払いも承っているんですが、代金を踏み倒す人は全くいませんし(笑)。
── 『ゴミ屋敷奮闘記』はどんな本になるんでしょうか。
らむ:最近は割と「断捨離」とかの「お片付け」系の本が多く出ているとは思うんですが、僕の本はそれとは一線を画してますね。「HOW TO」ではなくて、ガチの現場で体験した「実戦系」の本なので、レベルが全然違います。
── 2月11日の『ゴミ屋敷ナイト』にご来場されるお客様にメッセージがありましたら是非お願いします。
らむ:テレビだと、「このような片づけられない人を、これ以上増やしてはいけない」なんていう、きれいな落としどころをつけなければいけない義務感もあるんですが、そこはロフトプラスワンなので(笑)。「エグいものが見たい!」という方には是非足を運んで頂きたいですね。それと、僕のライブのお客さんは意外と淡白で、すぐに帰ってしまう人が多いような印象があるんですが、楽屋でお茶を飲んでる間に会場に誰もいなくなっていたりすると、とても寂しいので、気軽に声を掛けてもらいたいです。
── らむさんの風貌的な恐さもあるんですかね?
らむ:あるみたいですね(笑)。でも中身は恐くないですから。サインも喜んでしますし。
── 見た目だけでなく、やっているお仕事も恐ろしいらむさんですが、実際は本当に気さくで優しい方だとお客さんにも教えてあげたいですね。
らむ:だから全然恐くないですってば(笑)。