Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー佐藤 大(Rooftop2014年2月号)

今だからこそ語りたい!ぼくたちのゲーム史!

2014.02.01

 昨年末、ゲームとドラマを融合し、世間を興奮させたテレビドラマ【ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜】のブルーレイ&DVDが2月4日についにリリースされる!! 1983年から2013年までの30年間のゲームを一気に振り返りつつ、ドラマを極上のラブストーリーとSFに仕立てあげた、【ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜】の原案、シリーズ構成、脚本を務めたのが弊誌では「団地団」のコラムでもお馴染みの佐藤大さん。今月10日にネイキッドロフトでゲーム史を語るイベントに出演してもらう事も決定している氏に、ドラマについて、ゲームについて、とことん話を伺った!(interview:小柳 元/Naked Loft)

ドラマの主役はゲームセンター

——【ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜】は放送をリアルタイムで観させていただいたのですが、ゲームをテーマにしたドラマは観たことがなかったので新鮮で、とても感動しました。なぜゲームをテーマにした作品を作ったのですか?

佐藤:ゲームはずっとやりたかったテーマで、もともとは今のテレビドラマという形態でなくて、映画の企画として考えていました。79年くらいから84年までのゲームセンターを舞台にした青春物の映画をやりたいと思っていたんです。84年に風営法が施行されて24時間のゲーセンが終わってしまう日の前日に、都内近郊のゲーマーたちみんなが新宿の24時間のゲーセンに集まったという実話があるのですが、その話を映画の最後にするつもりでした。まさにその日から、実際ゲーム自体が色々変わっていくんですけど、その直前の黎明期の面白さを描けたらいいなと思っていたんです。その企画を実現するために、脚本開発を1年くらいやっていました。その後、テレビ東京の『湯けむりスナイパー」や『まほろ駅前番外地』などのプロデューサーをやられていた五箇さんとお会いして「映画じゃなくてテレビドラマにしませんか?」と言われたんです。それが確か2年くらい前の事でした。

——今はゲームの歴史をを振り返る時期に来ているのでしょうか?

佐藤:そうですね。振り返るという意味ではコンシューマーのゲームはある程度定着してきていて、古いファミコンカセットであえて遊んだりする人たちもいますが、アーケードゲーム文化は失われてしまっている。ゲーセンもここ数年でどんどん潰れていて、振り返ることができない。古いアーケードの基盤を大事に持っていても意味がないだろうし、だったらそれらをドラマに登場させて振り返るというのは、意義はあるんじゃないかなと思いました。

——文章ではなく、ドラマだからこそ当時の空気感が表現出来るというのはありますよね。

佐藤:そうですね。あのドラマはゲーセンワタナベという場所自体が主役なんです。まあスケジュールと予算の問題でシーンを限定して撮っていかないと無理だった、いう理由が大きいですが(笑)。でも、結果的にはそういう制限があったことで、よりゲーセンが主役になったのかなとは思っています。

 

ゲーム、ドラマ化への道のり

——ドラマで使用していたゲームのチョイスは、どの様な基準で選ばれたものなのですか?

佐藤:ジャンルです。シューティング、RPG、アクション、落ち物パズル、恋愛シミュレーション。色々なジャンルからエポックなタイトルを選んでいきました。最初はみんなで出したいタイトルを自由に出していったんですけど、それぞれの価値観が違いすぎて喧々諤々になってしまい、頭打ちになっちゃったんです。じゃあ一旦リセットしてみようとなって、ジャンル分けをすることで決まっていきました。そこから許可取りに動きました。

——あのタイトル数の許可取りは大変そうですね。

佐藤:そこが一番時間かかりました。ちなみに一番最初にバンダイナムコさんがOKを出してくれました。それが企画として本当に大きかったです。早い段階で一話から三話目までナムコタイトルの決定稿を各会社の皆さんに読んでいただけたので、企画への理解が早くなり、短い期間での許可取りができたんだと思っています。みなさん協力的に許可をいただけて、本当に感謝しています。許可が取れたら脚本を書き始めるのですが、時間も少なくなってきているなか、スケジュールギリギリまで許可が下りなかったタイトルもありました。すでに脚本は書いていましたが、もし許可が出なかったら別のタイトルに差し替えようと。でもそのタイトルが使えなかったら、このドラマ自体が成立できなかったかもしれなかったので、許可を頂けたときは本当にスタッフみんなで喜びましたね。

——裏話だけでも、本に出来そうですね。

佐藤:そうなんです。また現場でも、筐体も基板も全て本物を使ったのですが、もちろん古いものも多くて、なかには30年選手とかもいるんですよ。それが撮影で使っていて突然「ボン!」と壊れたり(笑)。2日前まで動いていたのに、当日になったら動かないとか、そういう事故はたくさんあって、ゲーム本体が一番の大御所役者みたいな感じでしたね(笑)。撮影があと10年遅れていたら、全員壊れてしまって実現していなかったかもしれないです。

 

今でもかっこいいSF【ゼビウス】

——今回は何といっても、『ゼビウス」が物語の大きな主軸になっていますよね。『ゼビウス」というのは佐藤さんにとってやはり特別なゲームだったんですか?

佐藤:そうですね。第一話はゼビウスにしたかったし、最終回もゼビウスにしたかったんです。本当にゼビウスが好きでしたし、自分の中で一番エポックな作品でしたから。今見てもかっこいいです。当時、背景が黒ではなく、高さがあるという所が新鮮でした。ザッパーとブラスターという2種類の武器があって、出てくる敵の軌道がそれぞれ違って、突っ込んでくるのもいれば避けるのもいたりする。当時のいろんな雑誌を読んだりすると、どうやらストーリーがあるらしいとか、パイロットがいるやつは避けるし、パイロットがいないAIで動いてるやつは突っ込んでくるとか。そういうSF的な要素があるという事がわかったりしてすごく斬新でした。宇宙人が攻めてきた!戦わなきゃいけない!みたいなゲームから、一気に飛躍したっていう感じが当時ありましたね。それと、噂で攻略が広がっていく感じというのはそれまでなかったんです。ゲーセンに置かれていた攻略ノートで、みんなと情報交換をしていました。

——そうした、ゼビウスの設定までもうまく取り入れていて、壮大なドラマとして素晴らしい仕上がりになっていたと思います。

佐藤:五箇さんから、TVドラマなのでサスペンス要素も入れて欲しいと言われていたんです。色々悩んだのですが、ゼビウスの攻略ノートをサスペンスのキーとして使いました。攻略ノートって現代のSNSやネット掲示板の原点だったと思うんです。そういった部分が物語のテーマとも、うまくリンクできたかなと思っています。あとゼビウスの原作小説『ファードラアウトサーガ』を改めて読み返したりしていたら、人類のために作られた人工知能が人類に逆襲する話だったんです。それを最終回のアイディアとして使わせてもらいました。それを脚本で書いた時、プロデューサーたちからはSF過ぎませんか?と言われたんですが、ゼビウス自体がSFだし、もともと終わりはSF的要素がある落とし方にしたいなとは思ってたんです。その部分を、特撮作品を長年撮られていた鈴村展弘監督は理解して頂けて、プロデューサーたちを説得してくれました。鈴村監督との出会いはすごく大きかったです。普通の実写ドラマとして考えて作っていくと、ゲームがないがしろになりがちなのですが「ゲームにコインを入れるっていうのは、仮面ライダーでいえば変身シーンですよね」とか、ゲームバトルが最初の3話は必ずあったのですが「あれは特撮でいえば、変身して怪人を倒すまでですよね」と言って頂けたり、鈴村さんじゃなかったら『ノーコン・キッド』はああいうドラマになっていなかったと思います。

 

人生はリセットもコンテニューもあり

——最後に主人公がコンテニューしようと誓うシーンがありますが、自分としては世間の悪者にされがちなゲーム用語で、人生のやり直しを決意するっていうシーンがとても感動的だったのですが。

佐藤:これは一般論ですけど、現代は若い人たちとって、なかなかセカンド・チャンスがない社会だと思うんです。でも僕なんか今、サードチャンスかフォースチャンスくらい(笑)。キャリアスタートは放送作家でしたが、諦めて作詞家をやっていた時期もありましたし、その後も何回も失敗もしていますし、会社も潰したりもしました。でも何となく生きていけている。生きていれば2回目、3回目のチャンスがあるはずなのに、それは無いんだと、自分で自分を追い詰めているような若い子たちを見ていると、すごく勿体無いなと思うんです。もう少し人生スチャラカでいいんじゃないかと思うので、駄目な人を主人公にしました。登場人物の礼治も木戸も世間的には駄目だけど、45歳になってもセカンド・チャンスあるじゃん、みたいな事を若い子たちに限らず、自分の世代の人たちにも、ゲームを通して感じてもらいたかったですね。だからゲーム用語の『リセット』や『コンテニュー』など、悪い意味に捉えられがちな言葉を逆手にとって、いいイメージに出来たらいいなと思ったんです。

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『ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜』Blu-ray・DVD

■発売日:2014年2月4日
■発売元:「ノーコン・キッド」製作委員会
■販売元:ハピネット
■価格:DVD-BOX 15,200円[税抜]6枚組(5DVD+1CD)/BD-BOX 19,000円[税抜]枚組(3BD+1CD)

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◎本編全12話
◎特典映像(予定):
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・あなたのお家がゲーセンに!珠玉のゲーム映像集
・番宣スポット集 ほか
◎封入特典(予定):特製ブックレット、オリジナルサウンドトラックCD
(C)「ノーコン・キッド」製作委員会

LIVE INFOライブ情報

2月10日(月)ネイキッドロフト
【僕たちのゲーム史】
【出演】佐藤大(『ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜』原案、シリーズ構成、脚本)、
岩崎啓眞(ゲームクリエイター)、
さやわか(ライター、物語評論家)、
池田稔((株)INH代表取締役社長、高田馬場ゲーセン、ミカド代表)、
キメラビーストの中の人

OPEN 18:00 / START 19:00
予約¥2000 / 当日¥2500(飲食別)
※予約はネイキッドロフト店頭電話&ウェブ予約にて受付中!!

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