Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー「Wake Up, Girls!」村上貴志(エイベックスプロデューサー)×竹内宏彰(プロデューサー)/(Rooftop2014年1月号)

「アイドルってなんだろう?」
山本寛の提示するアイドル像

2014.01.01

一般からのキャスト公募、1月10日よりTV・劇場の同時公開----。今までにない新しい試みが話題沸騰中の、仙台を舞台に7人の少女たちがアイドルを目指す物語『Wake Up, Girls!』。アイドル好きとしても知られるアニメ界の奇才「山本寛」がつくるアイドルアニメとはどのような作品なのか。作品の根幹を作り上げる、2人のプロデューサーに訊いた。(interview:柏木 聡 / Asagaya/Loft A)

それぞれのアイドル像を昇華させる

——『Wake Up, Girls!』(以下:WUG)企画スタートの経緯をお伺いしたいのですが。

村上:監督の山本寛(※)さんと脚本の待田堂子(※)さんとで、アイドルものをやりたいよねっていう話がでたところがスタートですね。そのお話を『スケットダンス』『プリティーリズム』でお仕事をさせていただいたタツノコプロ(※)の田中修一郎社長から「こういう企画があるんだけどもどうでしょうか?」というご提案をいただいたことがキッカケです。アイドルと音楽は切っても切れない関係ですし、僕らもアイドルアニメをやってみたいという思いはありました。また山本さんという優秀なクリエイターの方と作品作りができる機会は中々ないことなので、ぜひということでアニメに向けて動き出しました。

——この作品の特徴として一般から公募したキャストを起用という点がありますが、どのような形で7人は選ばれたのですか?

村上:81プロデュース(※)と一緒に行っているアニソンボーカルオーディションがあったんです。そのオーディションは歌える声優を主軸に選んでいるところがあります。第2回目ではWUGのキャストを選ぶという側面もあったので、その作品の世界に合う方ということで7人が選ばれました。

竹内:山本さんと一番喜んだのは、エイベックスとガチンコでやれるってところです。やろうと思って出来ることじゃないので、スタートするときはワクワクしましたね。

——世代としてはどういった層を意識していますか?

竹内:深夜ということもありますのでターゲットは高めの層になります。かといって若い世代の人たちにはどうなのかというと、私は十分通用すると思います。そういう意味では正統派のアニメーションを作ろうというところから出発しています。

——待田さんや神前暁(※)さんが参加されていることもあり、『アイドルマスター』を意識される方も多いと思うのですが?

村上:意識しないというと嘘になります。「アイドルってなんだろう」というフレーズにあるとおり、山本さんの考えるアイドル像を表現しています。みなさんそれぞれがお持ちのアイドル像があると思うんですが、そこに「アイドルってどういうものなんだろう」と投げかけている、今までとは少し違ったアイドル作品になっています。

竹内:山本さんが模索する「アイドルってなんだろう」という定義の答えを探す作品です。たくさんのアイドルアニメがありますが、何かを意識してというのはないです。それぞれのアイドル像は違うので、それをどうやって作品の中で昇華させるかが今回1つのテーマになっています。

——アイドルアニメというよりは、まさにアイドルをつくるという感じですか?

竹内:そこまで大きく構えているわけではないです。作品としてはかなり最後発に近いですし原作のないオリジナルですから、胸を借りるつもりで制作しています。そこにエイベックスさんというアイドル業界に強い味方がいるのは心強いかぎりです。

村上:ありがたいですね(笑)。キャストがイチから成長していく様子と作品の中でキャラクターが成長していく様子をリンクさせていくというのは、山本さんが一番こだわっているところですから、そういったところを感じて頂けるように頑張っています。

 

夢に近づくサクセスストーリー

——ご当地アイドルを設定に活かすという点が、さすがアイドル好きの山本さんが作っているなと感じています。

竹内:2012年の初め頃には仙台を舞台にしてやろうというのは決まってました。以前、山本さんが監督された『かんなぎ』が仙台を舞台にしていたこともあり、震災直後から何回もボランティアなどで現地に足を運んでいました。そんな中、聖地巡礼ではないですが、作品を見た人達が現地に訪れて現地が活性化するというちょっとしたお手伝いができるんじゃないかという考えに至りました。幸いにして山本さんの作品は海外の方にも見ていただいているので、作品を通してこの想いが世界中の人に伝わればいいなという思いもあります。ただ説教臭いモノを作っても面白くないので、元気で底抜けに明るく楽しい作品にしてやろうと頑張っています。

——やはり東北が舞台ですと「震災」というワードはどうしても絡んできてしまうと思うんですが。

村上:舞台は現代なので震災があったという事実は絡んでくるんですけど、7人の女の子達の明るく元気な姿を描いている作品になっています。震災の描写も今後あるかもしれないですが、そこをテーマにするのではなく頑張っている女の子たちを描くことを打ち出したいなと考えています。

——主役達が中学生と高校生ですが、青春群像劇もありますか?

村上:そうですね。彼女たちはアイドルですが、将来の不安を抱えている年頃の女の子達でもあります。そういった点も描かれているところではあるので、青春群像劇的に見える部分もあるかなと思います。

——作中の「グリーンリーヴズ・エンタテインメント」という架空の事務所のHPを作った意図は何ですか?

村上:彼女たちがまだ新人なので、見ていただく方に知っていただくためにアニメとの連動は欠かせないだろうなという考えからです。作中で登場するのであれば、この事務所のHPを立てて、作品の中で生きているアーティストのように見てもらおうということですね。

竹内:あと、実際に活動しているアイドルがいますので、それが1つの中に混在すると混乱してしまうので、事務所のHPにはキャストの情報、作品のHPには作品情報だけにするという風に分けているんです。

——アイドルということですと、楽曲が重要な位置を占めていると思います。神前さんが担当されていますが、どういった感じの曲になりますか?

村上:制作途中なのでなんとも言いがたいところではあるんですけど、アニソンとアイドルソングがうまくミックスされた曲になっていくと思います。ほとんど山本さんが神前さんに発注されているのを僕らはふむふむと聞いている感じなんですけど、いろんなオーダーが出てますね。彼女たちの成長に合わせて曲も作られているので、今後も進化していきます。

——WUGはライブ活動をもう開始してますが今後もイベントをされるんですか?

村上:そうですね。彼女たちをリアルなアイドルとして考えていった時に握手会や店頭でのイベント等を経験させることで、より役に入っていくんじゃないかという意見を山本さんから頂きました。その意見を僕らの方で検討させていただいて、握手会やイベントを企画させていただいているので、ご要望があればイベントは定期的に何か企画できればと考えてはいます。

——そういったイベントと脚本がリンクしたりということは考えていますか?

村上:そうなれば最高だとは思っています(笑)。

——物語のテーマが「夢に近づくサクセスストーリー」ということですが、この作品やWUGの目標や夢は?

竹内:そこはネタバレになってしまうので本編をお楽しみにということで(笑)。ただ夢を追うだけのドラマ構造ではないです。普通の女の子達がアイドルになっていくとはどういうことなのかを、見る人も一緒になって考えて頂ける作品になればいいなと考えて制作しています。

村上:作品としての目標はヒットすることですね(笑)。

——最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

村上:後発なアイドルアニメですが非常に中身は濃く、深く、7人の女の子の活き活きとした姿が描かれています。アイドルアニメは見飽きたよという方でも違った角度で楽しめる作品なので、ぜひ見ていただければと思っています。

竹内:山本さんはこの作品にかつてない力を入れて、楽しんで制作しています。こういった萌え系や山本さんの作品を見たことない方々にも是非見ていただきたいです。WUGはいろんな入口を持った作品なので、リアルなアイドルが好きでその延長として見る方や、単純にいろいろなアイドルアニメがある中でもこういうスタイルがあるんじゃないかっていうのもあります。いろんな違うジャンルの作品を作って来た皆がひとつのところに向かって作っている作品なので、新しい発見がある作品になると思っています。

 

※山本寛:アニメーション監督。代表作「フラクタル」「かんなぎ」など
※待田堂子:脚本家。アニメ「THE IDOLM@STER」ではシリーズ構成を担当
※タツノコプロ:アニメーションの企画・制作会社。代表作「ガッチャマン」「タイムボカンシリーズ」など
※81プロデュース:日本の声優事務所
※神前暁:作編曲家。「涼宮ハルヒの憂鬱」「THE IDOLM@STER」などの作品へ楽曲提供

 

放送局情報・劇場情報

WUG_MKV_mini.jpgTVアニメ『Wake Up, Girls!』
2014年1月10日(金) テレビ東京他にて放送開始
劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』
2014年1月10日(金)よりロードショー

 

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