それでも諦めないための口実が必要だった
── 『あんたへ』はアルバムのタイトル曲になっていますが、どんな思いがあってこの曲を書き始めたのでしょうか?
自分を励ましたい気持ちがあったからだと思います。その頃の曲を書く動機は殆どそれでした。
── この曲の「必死に生きるのは得てして無様だから 人に笑われても気にすんな」という歌詞を読んだ時に、10代の時に聴いていたら自分の価値観がもっと変わったのかもしれないと思ったんです。秋田さんはどんな世代をイメージしてこの曲を書かれたのでしょうか?
これは自分に言い聞かせているんだと思います。報われなかったっていう気持ちが常にあって、それでも諦めないための口実が自分に必要だったんだと思います。世代関係なく、そういう人達に伝わってくれたら嬉しいです。
── 必死に生きることが無様だとこの曲では言っていますが、秋田さんがこれまで生きてきた中で、無様だとご自分で思うほど必死になったこととはどんなことがあげられますか?
やっぱり音楽をやってて嘲笑される事も多かったですし、amazarashiの様な音楽は特に。いつまでも音楽をやってないで就職しろとも言われましたし、そもそもミュージシャンって社会的地位が低いですし。
── 『匿名希望』は、音楽活動をしていく上での、どうしようもない怒りと、それを乗り越えて進んでいくというストーリーになっていると受け取りました。「やりたい事をやり続ける為に あがき続けて半死半生だ」という歌詞がとても印象的でした。この曲は秋田さんの今を歌ったそうですが、どんなにあがいても曲を作り続けている秋田さんの思いとはどのようなものでしょうか?
音楽をやっていく上で無視してもいい所だと思うんですけど、そこに何かしらの感情が生まれてしまうと書かざるを得ないというか、そこまで大人になれないというか。実際僕自身も文句ばっかりの人間だったし、それでも結局自分がやるしかなくなって、苦しんだりしつつなんとかここまで来たので、そういうものが伝わったらいいなと思います。
── 『あんたへ』と『匿名希望』は9月30日の恵比寿リキッドルームでのライブで披露された曲ですが、発売前の曲を初めてライブで披露する時はどんな思いでしたか? お客さんがどのように聴いてるかが気になったりはしますか?
そうですね。お客さんの反応も演奏的にも凄い怖かったんですけど、絶対いい曲だからって思って歌ってました。
── 『ドブネズミ』は歌詞の中に「渋谷の果て」という言葉があり、秋田さんの曲には「渋谷」という場所がこれまでにも出てくることがありました。秋田さんは渋谷にどんなイメージを持っていて、どんな場所なのでしょうか?
昔東京でバンドをやっていた時、渋谷のライブハウスでよくやっていて、打ち上げが終わって夜が明けそうな渋谷のイメージが“渋谷の果てに地平線”です。
楽しかった思い出が多いんですが、都会だけになんとなく田舎を思い出してしまう、遠くまで来ちゃったなっていう、寂しいイメージがあります。
── 『0.7』に弾き語りで収録されていた『終わりで始まり』のバンドバージョンが今作に収録されていますが、弾き語りは飾り気がなくストレートに胸を打つ感じがありました。バンドバージョンは曲の表情が明るくなり弾き語りとは聴こえ方が違ったのですが、秋田さん自身はバンドバージョンが完成し、どんな手応えを感じてますか?
歌に寄り添ったアレンジで、凄く伝わりやすいと思います。結構難しい歌で、歌録りも苦労したんですけど、曲の表情がより明確になったと思います。はやくライブでやりたいです。
── 今作を制作するにあたり、秋田さん自身が曲作りや演奏の面で新たに挑戦したことはありますか?
リリース数が増えてきたっていうのもあって、今まで通りやってもな、っていう気持ちが出てきました。インタールード的なポエトリーリーディングも今回は違うものにしたいなとか、『冷凍睡眠』の様なちょっと変わった曲とか。
── ボーカリストとしては、いかがですか? 今作でも歌声に様々な表情があると感じましたが、歌い方で気にしたことはあるのでしょうか?
歌に関してはあまり意識してないです。歌に表情をつけない方が伝わる気がします。自然に歌ってそれが表情になればいいなと思います。
── レコーディング中に何かトラブルやハプニング等があったら教えて下さい。レコーディングは終始和やかな感じなのでしょうか?
終始和やかですよ。僕自身がピリピリした感じが嫌いなので。録音は真面目にやりつつ、空き時間は無駄話したり、楽しくやってます。
お客さんに心を開けてる感じは以前よりもあります
── 今年は5月に東名阪でツアーがあり、夏には初のフェスとなる“RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO”に出演し、9月30日はTK from 凛として時雨さんとの初のツーマンイベントにも出演されました。ワンマンではなく、イベントに出演することで得られたものや、刺激を受けたことはありましたか?
刺激はいっぱい受けました。当たり前の事なんですけど勉強になりますね。フェスのモニターの作り方とか、ライブの起承転結の付け方とか、いろいろ盗もうと思います。
── 野外フェスやツーマンイベントを経験し、ライブに対するご自身の気持ちに変化はありましたか?
楽しさが分かってくる分難しさも分かってきて、いろいろ大変なんですけど、ライブメンバー全員で成長できてる実感があるので、それが楽しいです。
── amazarashiの初ライブは2011年6月の渋谷WWWでしたが、その最初のライブと今とではステージに立つ前の思いや気持ちに変化はありますか? 緊張することは変わらないとか、緊張はするけど少しだけ慣れて来た等あったら教えて下さい。
緊張はたぶん一生すると思います。でも、お客さんに心を開けてる感じは以前よりもあります。
── 本番直前の秋田さん、そしてメンバーみなさんの雰囲気はどういった感じなのでしょうか?
僕が緊張してるので皆気を使ってる気がします。みんな緊張してるでしょうけど。でもあんまりピリピリはしないですね。
── 来年は東名阪・福岡・札幌でのツアーが決定しています。このツアーで挑戦したいことはありますか?
今はまだ曲順を考えてる段階なんで何も言えないんですが、いろいろ吸収したものを出せたらなと思います。
── ツアーでいろいろな土地に行くにあたり、ライブ以外に楽しみにしていることはありますか?
いろんな場所に行くんですけど、遊んだり観光する時間はあまりないんですよね。楽しみは打ち上げで美味しいものを食べられる事くらいです。
── では、ツアーを楽しみにしているみなさんに一言お願いします。
amazarashiはライブが少ないんですけど、その分一回一回のライブで凄く成長できてると思います。バンドとしてメンバーとも団結していい感じなので是非楽しんで下さい。
── amazarashiとしての来年の目標を教えて下さい。
今まで通りマイペースで、人と比べず、自分の音楽を作ります。
── 余談ですが、最近の秋田さんのブームって何かありますか?
夏はドライブにはまってましたけど、最近は特にないです。