剥き出しの感情が綴られた「バンドの今」を感じる作品
── リリースまでまだ2ヶ月ありますが、ワンマンでは11月にリリースされるアルバム『MONSTER』からも少し聴けるんですか?
左迅:それはもちろん考えてます。ギルガメッシュの今も、過去も、未来も全部見せたいというのもあって、今の俺たちが過去の曲をやったらこうなる、未来のギルガメッシュはこうだよというセットリストを考えてます。
── そのアルバムの話ですが、SHIBUYA WWWでも演奏された『Drain』、『Resolution』、『INCOMPLETE』を含めた全12曲が収録されていますが、このアルバムはЯyoさんの自宅スタジオで制作されたものなんですよね。アルバム制作の作業とは2011年1月にリリースした『GO』以来となりますが、ひさしぶりの作業はいかがでしたか?
Яyo:ギルガメッシュとしてのアルバムの作業はひさしぶりでしたけど、沈黙していた期間にも他のバンドのレコーディングを手伝ったりもしていたので、その感覚は忘れてなかったんですよ。だからギルガメッシュとして稼働して作業に取り掛かった時に「あぁ、懐かしいな」って思いました。左迅の注文は相変わらずうるせぇなって(笑)。でも、「ああ、この感じ、この感じ」って思って。
── どういう注文が多いんですか?
Яyo:歌を録る時のコンプレッション具合とかですね。ある程度圧縮しないとテイクも見分けられないというのもあって、圧縮し加減とかリバーブの足し加減とか。うっせぇな、面倒くせぇな、でもこれぞ左迅だなって(笑)。
── そこは今までと全然変わらず?
Яyo:変わってなかったですね(笑)。
左迅:前よりも増してたかもしれないですけどね(笑)。
Яyo:そのぐらい慎重にやってるんだなってのが伝わってきたから、お互い気持ち良く出来たなって思うし。
── 再始動の1枚目にして今のギルガメッシュを詰め込んだ最高傑作だと思いますが、みなさんの手応えはいかがですか?
愁:現時点で最高のアルバムが出来たという自信と確信はあります。
Яyo:音に関して言えばすごく納得のいくものになりましたね。
左迅:今まで出してきたアルバム5枚と『MONSTER』を比べると、ギルガメッシュの痛みを注ぎ込んだ作品なので、早くみんなに聴いてもらって、ライヴで何回も演奏して歌って、このアルバムに込めたフラストレーションを全部出し切りたい。それで、改めて楽曲聴いて歌詞を読んだ時に、こんなこともあったなって笑い飛ばせるような状態になりたいなと思ってます。そしたら、またバンドもレベルアップしていくと思うし、いろんな展望も出てくると思うので。
── 今作は今のギルガメッシュを出したいというところから曲を考えて作っていったんですか?
Яyo:何も考えてないですよ。かっけぇなって気持ちを最優先にして作曲に挑んだので。だからアルバムの流れも面白いと思うんですよ。今まではコンセプトに沿ってたりとか自分の中で枠を作っていたんですけど、全部取っ払ってやりたいと思うものだけを突き詰めて作りました。
── 1曲目の『Intro』からラストの『ALONE』まで流れもすごく良いですよね。曲順はどのようにして決めたんですか?
Яyo:曲順は作曲の段階で考えてます。2曲目の『Drain』は1曲目の『Intro』からの流れを絶対に変えたくなくて、ここから始まるよっていう入り口にしたかったので、最初に『Drain』が出来て、次どういう音が良いかなというのを想像して次の曲、その次の曲を書いていって。俺の中で音のストーリーっていうのがあって、それをメンバーと話しながらバランスをとって進めていきました。アルバムの前半と後半ではたぶん雰囲気が全然違うんですよ。吹っ切れた時に作った曲と、吹っ切れる前に作った曲を違和感のないバランスにしたくて、アレンジの幅も広いので聴いていて飽きないと思います。
左迅:シングルの曲は別として、活動をストップしてた時とその前後の葛藤だったり、辛さだったり、出来事だったりを凝縮して全てを注ぎ込んでます。このアルバムを聴いて歌詞を読んでもらったら、ギルガメッシュがどういうことを思って何をしてたんだっていうのがわかると思うんです。喜怒哀楽が全部入っているし、この10年の歩みも見えると思う。今回は書きたいことだらけで、これでも足りなかったぐらいで。ほんとに怒ってる部分もあったし、一気に書けました。
── 3曲目の『VOLTAGE』の歌詞はそうとう怒ってる感じがありましたね。
左迅:怒ってますね。
弐:荒れてたね(笑)。
左迅:歌詞の通りなんですけど、ある人物にバンド内も引っかき回されましたしね。でも、そいつのおかげでバンドが変われた部分もあって。おかげなんですけど、絶対に許さないっていう気持ちもあります。でも、そいつがいたから、このボルテージを保っていられる感じもあって…どうもありがとうって。
── 今すごく憎しみがこもった顔してましたけど(笑)。
弐:ありがとうとか言いたくないですから(笑)。
左迅:そういう歌詞です(笑)。でもそこで落ち込んでたら意味がないんです。ムカつくことがあっても、それをバネにして生きていかないと自分のためにもならないという思いを込めてるので。だからお客さんもライヴでムカつく奴を思い浮かべながら暴れて欲しいですね(笑)。
── 反骨精神がギルガメッシュの原動力になってるとよくおっしゃってますよね。
左迅:それがこのバンドのエネルギーだと思うんで。
── アルバムの前半は怒りがありますが、後半は歌詞が明るくなっていきますよね。
左迅:最初は本当に葛藤して怒っていて、時間軸というわけではないんですが、アルバムの最後の方には自分たちなりの答えを見つけたというストーリー性を出したいと思っていた部分があったんです。
逃げるぐらいなら切腹しますよ(笑)
── アルバムタイトルは何で『MONSTER』になったんですか?
Яyo:これ、タイトル付けたの誰だっけ?
愁:………俺か。
Яyo:いきなり、「MONSTERでどうかな?」って彼(愁)が。ダブステップとかでよく使われているGrowl Bassという手法があって、最新のエレクトロ界ですごく人気なので、それを混ぜたら「音がモンスターの鳴き声みたいだ」って愁さんが言うんですよ。それで、「モンスターでいこう!」ってノリでした(笑)。
愁:あとその時は、メンバー内がまだピリピリしてた状態だったので、俺にはみんながモンスターに見えたんですよ(笑)。みんな敵に見えたというのもありつつ、曲調もすごいパワーを持っていてワイルドな感じがしたので、まさにこれしかないなって。活動をしていなかった期間、ここ2人(弐&Яyo)は曲を作ったりとか、左迅くんは別でバンド活動をしていたけれど、俺は常に1人でいて、その時にバンドのことばかり考えていたし、4人でスタジオに入った時にここが一番居心地が良いなとも思ったし。ここを邪魔するやつらをモンスターとして俺の中で位置づけて、やっつけてこうかなって(笑)。
── 戦い続けてますね。
愁:そうですね(笑)。やられるまで戦います。
左迅:やっぱり常に戦ってる状態が自分たちにも合ってると思うんですよ。
愁:逃げるぐらいなら切腹しますよ(笑)。
Яyo:逃げるぐらいだったらぶっ飛ばしますよ。攻撃は最大の防御なので、そのぐらいの気持ちで攻めます。
── アルバムも攻めてるので、ぶっ飛ばされる人がいっぱいいるでしょうね。全部だとは思いますが、どの曲が1番推し曲っていうのはありますか?
Яyo:どれも思い入れがあるんで、どれも推し曲ですけど。全部いろいろやってますからね。『Drain』(M-2)に関しては、ギルガメッシュらしさもありつつ、最新のエレクトロだったりとか、ブレイクダウンをふんだんに埋め込んだ、それでいて聴きやすいナンバーにもなってるし、『VOLTAGE』(M-3)は途中で3連符になったりとかライヴハウスがもみくちゃになるイメージ。『INCOMPLETE』(M-4)でさらにぶっ飛んだエレクトロをぶち込んでるし、『斬鉄拳』(M-5)は-MONSTER ver.-としてきれいに録り直してギターセクションが足されたりもしてるんです。『antlion pit』(M-6)は7弦の曲ですね。このアルバムで7弦の曲が3曲あるんですよ。『Intro』と『INCOMPLETE』と『antlion pit』が新しく導入した7弦ギターで作った曲で、最新のエレクトロもありつつ、ロック感もありつつ、7弦だし、サビのコード感とかも新しいし、プログレ的な要素も入れてるし、ちょっと早いテンポ感だと思ったら、いきなり男臭いゴリラノリになるし。楽曲として意味がわからないかもしれないけれど、かっこいいなと思うし。『Resolution』(M-7)では………。
左迅:全部紹介する気か、おい(笑)!
Яyo:全部推し曲なんだよ(笑)。被るところがないんですよね。『Resolution』に関してはオーケストラのような広がり方をバンドサウンドに組み込めたし、『Live is Life』(M-9)は今までのギルガメッシュらしい塊サウンドを活かしつつも、サビではあれだけの転調もするし。あと、『BAD END DREAM』(M-8)、『Another way』(M-11)、『ALONE』(M-12)は吹っ切れる前に作ったんですけど、その時に目指してたものを強く打ち出したくて。だから、何て言うのかな………とにかく全部良いんですよ(笑)。左迅の歌を重視して作った曲だし、それがよく活かされてるなと思いますし。