反骨精神がバンドの起爆剤
── 『INCOMPLETE』は、“未完成”という意味がありますが、それを1曲目に持ってきたということにも意味がありそうですね。
左迅:満を持してのシングルが“未完成”で、なんだおまえらという感じかもしれませんが(苦笑)、戒めというイメージが強いですね。以前、ある人に「甘っちょろい考えでバンドやってるんだったら今すぐ辞めて就職しろ」と一喝されたことがあって、その時に見返してやっから見てろという気持ちになったんです。その気持ちがあったから、こうやって気持ちが再沸騰して良いバイタリティで活動出来ているので、その時の気持ちを絶対に忘れないようにという思いを込めてこの歌詞を書いて、この歌を歌うたび、演奏するたびにその時のことを思い出しながら、「常に自分たちは未完成なんだから高みを目指して突き進んでいこう」というメッセージを込めたんです。
── ちょっと話が逸れちゃうんですけど、みなさん思っていた以上に体育会系なんですね。
左迅:そうかもしれないですね(笑)。結成した当初から反骨精神だったり今に見てろ! という気持ちが起爆剤になっているんです。反骨精神を燃やして活動していくのがギルガメッシュらしさだったりもするので、そこがなくなっちゃうと、もう何もなくなっちゃう(笑)。音楽ってそういうもので作られてると思うし、熱い思いがなくなってしまったら音楽をやってる意味がないと思うので、そういう部分は常に燃やし続けて生きていきたいなというのはありますね。それに誰かに言われてやると、失敗してもそいつらのせいに出来ちゃいますけど、それが甘えだったり逃げ道のひとつだったりするんです。その逃げ道を自ら断って、自分たちで答えを出して、失敗しても自分たちでケツを拭くというのがこのバンドを動かす原動力で、それを大事にしたいですね。
── 『INCOMPLETE』のサビで、「未完成なら 今すぐ言えよ〜いつだって そうやって生きて行くんだよ」という歌詞がグッと来ますよね。
Яyo:誰にでも当てはまりますからね。こいつ(左迅)俺にケンカ売ってるのかなと思いましたよ(笑)。でも、すごく戒めになるなと思いました。
── 人生に対してとか、生きるということに対しても覚悟を感じますよね。
左迅:個人個人気持ちが落ちていた期間にいろいろ考えることも多かったですから。2014年に10周年を迎える時に俺は30歳を迎えるんですけど、あとどのぐらい歌えるんだろうとか、何回ステージに立てるんだろうとかを考えていたりもして、そういう思いが反映されている感じもしますね。常に熱い思いを歌っていきたいという、ボーカリストとして、バンドとしての気持ちを反映させてます。
── 楽曲を通して、自分たちの生きざまを見せたいという気持ちはありますか?
左迅:そうですね。ギルガメッシュ自体、何かに立ち向かって乗り越えていくバンドだと思うし、それが真髄だと思うので、そういうのを見て、あいつらでも頑張ってるんだから、俺も頑張ろうかなって思ったりしてもらえたら一番良いかなと思いますね。俺たちを見てバンドを始めるというヤツもどんどん増えて欲しいですし。
──もうひとつ聞きたかったのが、今回のアーティスト写真は繋がれた鎖から解放された状態になってますが、その写真が公開される前は、メンバー4人が鎖で繋がっているものだったんですよね。
左迅:これまではいろんな柵に囚われていて、それを手錠で繋がれているというイメージの写真にして、そこから解放されたという意味で手錠が取れた写真になり、ここからギルガメッシュを再スタートさせるという思いを込めた写真だったんです。すごくメッセージ性のある2枚になりました。
Яyo:解放というよりは、自分たちで答えを出したというほうが近いですね。
── PVもメンバー4人が自分たちと向き合いながら歌うというものになって。
左迅:鎖に縛られていて、もがきながら歌って演奏してる中で答えを見つけるというもので、バンド対バンド、ギルガメッシュ対ギルガメッシュという感じで、オマエらそんなもんじゃねえだろ! という思いをお互いでぶつけ合うというものを表現したかったので、ああいう形になったんです。
── また、通常盤には『INCOMPLETE』の他に『Limit Break』と『takt』の2曲が収録されますが、『takt』はピアノの音色が美しい曲ですね。
Яyo:『Limit Break』は昨年の夏のツアーでずっとやっていた曲で、今の吹っ切れた気持ちでリアレンジしてカップリングに入れました。『takt』は新しい試みとして、ダブステップとか今流行ってるシーンのものを取り込んだり。あと俺がバイオリンを弾いてます。昔習っていたことがあるんですけど、難しくて中学3年の時に挫折したんです。それで、ふとした時に楽器店に行ったら電子バイオリンというのが売っていて、面白そうだなって遊び道具として買ってきたんです。それで弾いていたら入れたいなって思い始めたんですが、練習から始めてワンフレーズを入れるのに3日ぐらいかかりました。今後はブラスバンド系もやってみたいと思ってます。
── そのうちボーカルもやり始めるかも?
Яyo:それは、最近やってるんです。今までは鍵盤で歌のメロディーを作っていたんですけど、どう歌って欲しいのかがうまく伝わらなくて、俺が歌えばいいんじゃね? って。これまでは、左迅がギリギリ出るかなという音域でメロを渡して、やっぱりキツイってなるんです。自分で歌ってないから、なんでこれがキツイんだろうというのもわからなかったんですけど、自分で歌ったら確かにキツイんです(笑)。それで仮歌を入れて渡すようにしたら伝わりやすくなって。今回そういうふうに曲を作ったので、メロのぶつかり合いとかもなくスムーズに行きました。
── 反対に『Limit Break』はラウドロック系のゴリゴリとした曲でしたが、こちらはライヴを意識されて作ったんですか?
Яyo:ライヴでの一体感だったりとか、ギルガメッシュ特有の暑苦しさとか、そういうのを表現したかった曲ですね。
── サウンドの勢いとしては、3曲ぞれぞれ昔の勢いに戻ったんじゃないかと感じたんですが、その辺はいかがですか?
Яyo:パッションを感じてもらえたんですね。今回、全部俺の家のスタジオでレコーディングして、エンジニアも俺がやっています。うちの電気代だけでレコーディングの経費はほとんどかかってないんです。これまででっかいスタジオに入ったり、すごいエンジニアさんと仕事してきたけど、自分が納得するサウンドになったことがなくて、でも自分にはノウハウがないから勉強して、初めて納得のいくサウンドに仕上がって自信はめちゃくちゃあります。
── ドラムからボーカルまで全部そこで録ったんですか?
Яyo:マスタリングに出すまでを全部です。何時だろうが爆音出せるので。あ! 俺、1回引っ越したんです。
── はい。
Яyo:…まぁ、引っ越しの話はどうでもいいんですけど(笑)。自分の音楽と関わる時間をもっと増やしたいと思って、ずっと実家だったんですけど音止めが22時だったんです。それに随分悩まされていたんで実家を出たんですけど、そこは左迅が鼻歌を歌っただけで苦情が来るようなマンションだったのでまた引っ越しをして、2畳のスタジオとボーカルブースを設置して、全部家で録ったんです。レコーディングってお金がかかるものだと思ってる人が多いけど、どれだけ作品に対する時間をかけられるかだと思っていて、今は何時でも爆音が出せるし、ストレスなくやれてますね。