どこかでギリギリの緊張感を持っていないと続けられない気がしている
── アレンジで言うと、みなさんで考えてやっていくという感じですか?
「基本的に俺がデモを作って、今回は俺がアレンジに対してなべちゃんや姐さんにもっとオーダーするようになっています。2年半同じメンバーで転がっている俺たちなりの答えをちゃんと見せないといけないとか、ただ続いているのではなく上を見て続けていることが大事で、それこそ広げようという気持ちを持って活動をしていることを証明しなければいけないので、なべちゃんにもすごくいろいろ求めるようになりましたね。シングルでリリースした『Dancing Zombiez』のダンスビートとか、『月面のプール -Naked ver.-』のバラードとかはなべちゃんのルーツにはない苦手なこともやってもらったし、『All The Young Rock'N'Rollers』もオーダーしまくってビートを作るのに時間かけて、すごく細かい変化の積み重ねでもとにかくこれまでとは違うことをやってみようって、ストイックに求めるようになって。さっき楽しくなったって言いましたけど、どこかでギリギリの緊張感を持っていないと続けられない気がしているから、なべちゃんにもギリギリを求めたし、一緒に乗り越えてきたから何も言わなくてもわかるよねじゃなくてズバズバ言うようになってきていて。バンドが楽しいと同時に追い込むことをやるようになってきました」
── 渡邊さんもバンドのことを考えるように音を作るようになったと。
「それはみんなでわからせたというところもなくはないですけど(苦笑)。なべちゃんの変化はデカいと思います。すごく不器用なので、一歩ずつ自分なりの答えを探していくというタイプですが、その姿勢がないと絶対に成長しないというのがあるから、曲作りは楽しかったんですけど、その辺はバチバチやってました。どういうアレンジをしたかというよりは、どういうふうにアレンジをしていくかという、せっかく成長するチャンスがあるんだから、もっと求めようというのはありましたね」
── メンバーみなさんがスキルアップしていくと、亮介さん自身もどんどんいろいろな曲のイメージが湧いて来ますね。
「それこそバンドのために曲を書けるようになったというのもあって、『Diamond Rocks』はなべちゃんをイメージしたし、『Beer! Beer! Beer!』は姐さんをイメージしたし、どの曲もバンドとしてのクオリティーを高めようという感じはありましたね。ギターの音にもこだわっていて、ギターソロはこれまでで一番自信があるぐらい良いものが録れました。弥吉淳二さんがプロデュースしている『Dancing Zombiez』と『理由なき反抗』は弥吉さんが弾いてくれてますけど、他は俺がソロを弾いてます」
── 『The Future Is Mine』のギターソロは艶っぽくて良かったですよ。
「ギターのメロディーに自分の意志をもっと入れられるようになったんです。ボーカルギターの俺が弾いてる意味があるギターをもっと入れたらなっていうのがあったので、その辺のこだわりを自分でも追い込んだし、音色やメロディーもミュージシャン的なところを突き詰めてやったんです。この曲は、岡庭(前Guitar)が使っていたものと同じレスポールのギターをLUNKHEADの壮さんからお借りしたんです。今まで意識的なのか自分でもよくわかってないですけど、当時っぽいからという理由でレスポールの音を排除していたんです。でも、バンドの状況が変わってきたし、自然ともっと音が伝わるものは何だろうかとか、もっと強くて広い音はないかって考えるようになったんです。何のギター使ってるかなんてCDを聴いてもわからないと思いますけど、この歌詞のためのギターってなんだろうかって考えて音に出来たかなと思っています」
── 『オーロラソング』では鉄琴を使っていますが、これまでにはなかったですよね。
「そうですね。昔なら絶対に鉄琴なんか入れないと思ってたけど、この音が必要な曲だから入れたというところで。ポーズとか態度でそういうのを排除しないようになりました。今なら革ジャン着て鉄琴買いに行っても良い感じに笑い話で終われるんじゃないかなって(笑)。それはすごく良い変化というか進化だと思います。『FUCK FOREVER』の時のように気持ちが内側に向いていたら出来てなかっただろうし。『FUCK FOREVER』はすごく直線的なアルバムで、本当に思って書いてることが地道に伝わったなというのがロフトでファイナルをやったツアーだったんです。それが正しかったという感じが今回のツアーまで続いていた気がしていて。それは本当に作れて良かったなと思います」
── また、『理由なき反抗 (The Rebel Age) -Never Mind The Bollocks ver.-』でホーンが入るというのも新しい試みですね。
「その前から勝手にしやがれと対バンをやらせてもらい、武藤(昭平)さんと仲良くさせてもらうようになって、昨年のフジロックの時に2曲一緒に演奏させてもらったんですけど、それがめちゃくちゃ楽しくてレコーディングもしましょうねって言っていたら今回ようやく実現して」
── 『理由なき〜』も『月面のプール』も、これまで発表していたものとは違うアレンジになって、どんどん変化していくというのも面白いですね。
「1回リリースしたものを再録する面白さもあると思うし、アルバムの中で役割がちゃんとはっきりしているというか、『月面のプール』がシングルに収録したものと違う大きい部分としては、シングルはエレキをダビングしたり、俺も自分でギターソロ入れて、弥吉さんがハープを吹いて、やれることを全部詰め込みましたけど、あのままアルバムに入れるとボリュームがありすぎるなと思って、今回は『月面のプール -Naked ver.-』と呼んでますけど、AFOCの3人とストリングスというバランスがアルバムの中で生きていると思っています。最後の『理由なき〜』でのハッピーなホーンもアルバムのために作りましたし、良いアルバムになりました」
── 今のAFOCの音をいろんな角度から楽しめるという意味で、アルバムの役割をちゃんと果たしたアルバムですね。
「楽しむ余地があるアルバムですね」
続けていることに意味を見出しています
── また、『God Speed You Baby』の渡邊さんのドラムはスピード感があってすごく良いですね。
「この曲はなべちゃんが功労賞です。ドラムはなべちゃんのアイディアで、俺もすごく気に入ってるんです。歌詞は気仙沼で出会った小学生の男の子と話したことがきっかけで生まれた曲なんですが、軽快なロックンロールにしたいというのをすごくわかってくれて。これと『All The Young Rock'N'Rollers』のドラムはハードルが高いと思うのでライブで頑張ってもらわないと(笑)」
── 『All The Young Rock'N'Rollers』は2013年のサーフロックがテーマだそうですが、AFOCがサーフロックをやるとこういう感じになるんだなぁと。
「なべちゃんが一番しんどかったやつですよ。新しいパターンを考えて。ドラムは全然サーフロックじゃなくて、複雑な凝ったビートで勝負してやってみようよって。前のなべちゃんなら絶対にやってなかったと思います」
── 渡邊さんにも変化があり、バンドとしてももっとこれから変化していくかもしれないってことですよね。
「そうですね。さっき言ったように、自分たちが高め合いながら追い込んでないと、絶対に一歩ずつ進んでいくことなんて出来ないですから」
── 『Blues Never Die (ブルースは二度死ぬ)』では途中で曲調がガラッと変わりド・ブルースのパートが入ってきますが、これがすんなり聴けるというか。よく亮介さんが言ってる“ロックンロールを手軽に渡す”という感じのアプローチにしているんだなって。
「ホントそうで、そういう感じで楽しんで欲しいし、その前後はドラムを打ち込みで録って、アコギを歪ませたりとか変な作り方をしているんですけど、真ん中はストレートに。これがブルースだなんてわからなくても、楽しさを感じてくれたら嬉しいし、そういう意味があるんです。それを感じてくれたら良いですけどね」
── AFOCの音楽は根底にブルースやロックンロールが揺るぎない存在としてあって、そこに亮介さんの独特の声が乗るといろんなジャンルをミックスしたとしてもAFOCの音になる感じもありますよね。
「今は、“AFOC印”をどこからでもつけられる自信があるので、もっとロックンロールを広げるという1本目が『I'M FREE』で、さらに次に行くための作品。それがちゃんと新しい作り方で広がったものが出来ると、今付いてきてくれる人にもっとデカい景色を見せられると思うし、ロックンロールに興味がない人にもロックンロールって面白いなってきっかけが出来るんじゃないかと思ってます。次はそこを提示していきたいですね」
── ロックンロールを広めていきたい?
「大きくしたい。AFOCのおかげでロックンロールを拡大解釈出来るようになったと言われたいと思ったりもするし、勝手な使命感ですけど、偉大な先輩の後を継いでると思ってるし。ロックンロールバンドだからこういう曲をやらなきゃという感じは全然なくて、それこそ大きなフェスに出させてもらった時に、ロックンロールって思っていたよりも間口が広いものだとわからせられたらいいなと思っているし、所謂シーンの真ん中に行くのに時間がかかるバンドというのも知ってるけど、良い曲を書けていればそれを証明出来るというのも感じ始めていて、その挑戦権を持っていると思ってるから、それを見てみたいんです」
── AFOCのロックンロールの核にあるものって何ですか?
「今は、やらなきゃいけないバンドになっていると思っています。続けていることに意味を見出していて、それがロックンロールのロールの部分。転がり続けるという意志をいかに自分が知ってるロックンロールやブルースを手段として表現出来るか。それをロックンロールと呼んでるし、それさえあればアレンジとか表現の仕方は自由で良いんじゃないかと思っています」