Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューPANORAMA FAMILY(Rooftop2013年5月号)

安らかな気持ちになるヒップホップ。様々なジャンルを取り入れ柔軟に発信し続ける彼の魅力に迫る

2013.05.01

 毎年阿佐ヶ谷LOFT Aにて開催されているNiw!Recordsの『おしゃべりセッション』に今年3月ゲストとして出演してくれたヒップホップアーティストPANORAMA FAMILY。元々パンクが好きだったが、オリジナル曲を作ろうと他のジャンルを色々聴いていった中にヒップホップがありハマったというラッパー兼トラックメイカーのゴメス。
 今回は、2010年にレーベルNiw!Recordsに所属してからの環境の変化や、今年3月にリリースされたアルバム『LIFE NOTE』について、制作や活動についてなど、精力的に新曲を発表し続ける彼に話を伺った。加えてNiw!Recordsへの所属とMIXX BEAUTY(渋谷Organ Barで毎月開催されているパーティー)への参加を誘った松田"chabe"岳二(CUBISMO GRAFICO)と、現在バックDJを務めるMUG-ROCKにも話を訊いた。(interview:須田舞未/Asagaya Loft A)

1人になることが予想外だった。

── PANORAMA FAMILYは、2009年に3MCからゴメスさん1人になって活動していますが、1 人になってからのライブは3人で活動していた時とはどう違いますか?

ラップは歌と違って分かりやすいサビがないので、3人だと大勢でラップすればサビっぽく聞こえるんだけど、1 人だとそれができないから最初はすごく苦労しました。

── どう改善したんですか?

トラックで工夫して派手にしたり、逆にサビの音をすごく少なくしたり、サビの部分のラップを分かりやすいフレーズにしたりとか考えて、それが大変でした。

── 1人になってから初めてのアルバム『SCAMPER TOKYO』(2009年)はどの辺を意識しましたか?

1人になることが予想外だったから、その頃はライブするのもどうしよう…って悩みすぎて、ライブよりスケボーをやってました(笑)。その中で自分の中にフィードバックされたものを歌詞にしたので、スケボーの歌詞が多いアルバムなんですけど。音は好き勝手やろうと思ってラ○—ンズの曲を勝手にサンプリングしたりとか。その頃はヒップホップシーンはヒップホップで固まっちゃって自由じゃないと思って、パンクシーンとすごく絡みたかったんです。バンドもやってたのでそちら側の人にも聴かせられるアルバムというのを意識しましたね。

── Niw!Recordsにも他にヒップホップのアーティストがいないからちょうど良かったですか?

実は俺の前に1人だけヒップホップアーティストがいて、イーモトロールさんっていう人が1枚だけ『Niw! Rec Roll』っていうのを出しているんですよ。その作品がすごく良いんですよ。

── だから“TWO” (『Niw!Rec Roll Two』(2010年リリースのNiw!のアーティストの曲を再構築してゴメスがラップを乗せているアルバム)なんですね! このアルバムはヒップホップを聴かない人への入門編のようで聴きやすいですね。

それはすごく意識した。Riddim Saunterの曲でまるまるやっているのもあって。そういうヒップホップを聴かない層にも聴かせないとっていうのは最近特に意識していて。ヒップホップがちいさくまとまってしまうのが嫌なんですよね。

── Niw!に入って環境が変わりましたか?

Niw!のお客さんはバンドのお客さんだから、最初はそこにうけることをやったりもしたけど、最近は全然気にしないで自分のやりたい音をやってもそれなりに反応があるようにはなって来てる。ちょっとずつだけど、MIXX BEAUTYのお客さんがつなげてくれてるんだと思う。Niw!の人はみんなヒップホップ好きっていうのがあるんですよ。あと、所属している人たちに同年代が多くて刺激になるし、変わったバンドが多いから面白いです。太一くん(ex.Riddim Saunter/KONCOS)がいてくれたっていうのはすごく大きい。
 

パノラマは3.11で変わった。

gomes_2_new.jpg── 2011年リリースされたアルバム『MELLOW SUMMIT』は3.11がなければできなかったアルバムだと思いました。生活にとけ込むような作品ですよね。

そうそう、そういう感じを目指しました。パノラマファミリーは3.11で考え方ががらっと変わって。それまでは攻撃的だったり他と違う事をやってやろうっていう意識がすごく強かったんだけど、3.11以降は「好きなことをやろう」「自分の中から出る自分の好きな音楽で、“今”心地よいものを出していこう」っていう感じになった。この時は3.11があって親戚や家族が何人か亡くなったり、産まれた場所や家がなくなったりしたから、自分の中で消化してなくてもろに出すようなアルバムになっていて。気分的にも落ち込んでいるところはあったので、暗いっていうのではないけど、落ち着いたアルバムになりました。

── そして今年3月にリリースされた『LIFE NOTE』。夜のパーティの曲が多いですね。

2012年から2013年にかけては突然親父が甲状腺がんになっちゃったんです。それまでは元気だったのに急にあと何か月ですって言われて、僕も休みの日には常に実家に帰って、生活って突然変わるんだなって、死っていうのをすごく考える年だった。だからこそパーティをするときくらいはワーっとなった方が良いんじゃないのって思ったんです。死とパーティは隣り合わせで刹那的ではあるんだけど、そこには人間の美しい部分があるんじゃないかなと思って。だからパーティの曲を多めに入れました。単純にパーティが好きだっていうのもあるけど(笑)。

── フリーDLなどリリースが多く、あのスピードで歌詞を書くのはすごいなと思うのですがどうやってインプットしているんでしょうか?

何個かあるんですけど、昔は映画、最近はMIXX BEAUTYとかでの会話や、見て思ったこととか。映画と会話と観察、ですね。あとはフリースタイルしていて出てきた言葉とか。あんまり自分で考えないからわからないんだけど。

── 新宿LOFTで開催の“ザ・ロフト飲み会”にも参加していますね。

俺たちの仲間が中心にやっていて、音楽前夜社、ジャポニカソングサンバンチは福島出身だし、震災の仲間というか、そいつらが頑張って他と全然違う事をやろうとしているっていうのが面白い。

── ライブハウス新宿LOFTはどうですか?

LOFTでは2回くらいやったんだけど両方ともバースペースで、あそこはマイクの返し(ステージ上のモニター)がないからやりにくいのかなと思ったらめっちゃやりやりやすかった(笑)。望月さん(新宿LOFTブッキング)も優しいし。あとSHIN-JUKEとか東京ロンドン化計画とか攻めた事をやっているなっていうイメージですね。

── ではずばり! HIPHOPとはなんでしょうか?

最強の音楽であり文化であり…とにかく最強のもの! これに勝る価値観はないっていうものです。

── これからの展開は?

もう一個上のステージに行きたいですね。同業者の人からの評価はあっても、一般の人からの知名度は低いのでそこにも食い込みたいです。売れたいです(笑)。

 

【チャーべさん、マグロックさんのインタビュー】

松田"chabe"岳二が語るPANORAMA FAMILY

 MySpaceで気になって聴いて、そのトラックセンスが異様にいいなと思って、このトラックセンスなら僕らの周りにいると新鮮だなと思ってライブを見に行きました。やっぱり面白いな、一緒にできたらいいなと思ってライブに誘って。その時にPANORAMA FAMILYが1人になって、毎月同じ場所でやるって意味があるからMIXX BEAUTYを修行の場にするために誘いました。太一とかとも仲良くなってほしかったし。
 今のパノラマの動きがいいんです。がんばって続けてきて同じように活動して来た仲間が自然と周りに集まってきて横で見ていて、居場所を見つけるのは大変だろうけど好きなようにやっていてかっこいいなーと思います。ここ1年くらいでちょっと扉が開いてきているような気がしていて。パノラマってすごく独特。ゴメスの歌詞とラップと声って独特で武器だなと思っていて。なんか切なくなる。切なさがあるのがいい。自然な『人の魅力』を持っていて、元々それをどうやって出したらいいかわからなかったと思うんだけど、どういうところが自分の武器かわかりはじめきている感じがしていて。そろそろ次の世界観が現れそうな気がするので楽しみです。新しくできた物もかっこいいトラックばかり。どうしても耳に残る。それも武器だなと思います。僕らはゴメスを自慢したい! 仲間だから世間に知らせたい。近い人はわかってる格好良さだから有名になってほしいです。

 

MUG-ROCKが語るPANORAMA FAMILY

 運命的な出会いとかはなくて、気づいたらいた(笑)。パノラマがMIXX BEAUTYに出入りするようになって徐々に2年くらいかけて仲良くなりました。フリースタイルする中で自由ですごく面白いし、やりやすいなと思って、1曲やろうってなってそれから一緒にやるようになりました。
 ヒップホップだけのところから出てきたんじゃない音っていうのが新鮮です。構造的で柔軟。聴いた物を消化して自分の色を付けて出してくるのが早いんです。トライ&エラーを恐れないのでレスポンスが早い。出る度にクオリティーも上がって進化していて「あっまた変わった」って思います。特に今の時代に合っていてモチベーションをキープできるのも才能だと思います。人間の三大欲求に負けないだけの音楽欲求がすごい! 常にやる、やってる。期待してます。
 あと、妊娠している友達が胎教にいいって言ってました。安らかな気持ちになるって。胎教にいいヒップホップみたいです(笑)。

 

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PANORAMA FAMILY / LIFE NOTE

NIW92 / 2,940yen (tax in)
IN STORES NOW
Niw! Records

『LIFE NOTE remix E.P.』5月下旬iTunesにて配信予定

『STAR ROMANCE E.P.』feat.大久保潤也(アナ)free download
http://www.mediafire.com/?07m4c7respb833i

LIVE INFOライブ情報

5/7(火)渋谷 Organ ber“MIXX BEAUTY”
5/9(木)渋谷 Organ ber“MEGA”
5/18(土)宮城県気仙沼市半造レストハウス“just in time”
5/31(金)渋谷clubasia“Niw! Records 10th Anniversary -Niw! Standard-”
w)BACK DROP BOMB / 80KIDZ(LIVE SET) /circle darko/MONTBLANC

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