Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューよしむらひらく(Rooftop2013年2月号)

“よしむらひらくの真骨頂”を見せた新作『井の頭 EP』に込められた希望とは。

2013.02.04

自分がどういう人間かという事をどう伝えるか

──曲の構成も面白いよね。普通はあんだけ盛り上がる大サビがあれば、最後だけではなく、サビとしてもっと登場してきても良いとは思うけど。そこは、あえてなんだよね。

よしむら:あんまり熱量だけで押し切っても、って感じだし。というか、俺の個人的な好みで言えば、あの大サビはいらないんだよ。歌もののサビとかあまり好きじゃないひとだから。でも、2回ある方のサビの最初の方は、本当に好きで。本当はそれだけでいきたかった。なんだかんだ言って洋楽志向っていうか。最初に西田と話したってとこに繋がるんだけど、曲で盛り上げようとするっていうよりは、自分がどういう人間かっていう事をどう伝えるかってことを考えた時に、正直に自分を伝えようとすると、盛り上げようっていう気持ち自体が俺にとっては不自然というか。

西田:うん、分かる気はするな。でも、あの曲って、あの大サビで救われる気がする所もあるじゃん。楽になるというか。ライブとかでやっていて、ラストの大サビまではどう乗り切るか感しかないんですよね。でも、ラストにその大サビでアゲれるから救われるというか。ライブ中に演奏していてグッときたり、自分が昔好きだった人の事を思い出して辛くなったりするのは、1サビ2サビかな(笑)。でも、楽になるのは大サビ。

よしむら:あの曲はね、歌い出しの最初の一行さえ上手くいけば、全部上手くいく。でも、そこが難し過ぎて。だって、レコーディングであれを歌った後に、激痛で病院に行ったからね(笑)。

──そんな“井の頭”とは対を為すように軽やかなのが一曲目の“watarirouka”ですが。

西田:<頬にキス>でお馴染みの曲ですね。

よしむら:<ほお>じゃなくて<ほほ>っていう所が肝ですね。仮タイトルが“渡り廊下走り隊”だったから、レコーディング前に渡り廊下走り隊の動画をYouTubeで見たりして気持ちを高めようとしたよね。

西田:全然、高まらなかったけど(笑)。

──“井の頭”をEPではなく、シングルで出したとしたら、そのB面って感じがすごくする。

よしむら:うん、相性はいいよね。言うように、A面とB面で考えたら“井の頭”のB面は“watarirouka”かな。女房役って感じ。

──歌詞の雰囲気も他とは違うよね。優しい。

よしむら:そう、それこそアイドルに歌ってほしいですよね。

西田:何にも悩んでないもんね。

よしむら:そうだね、めずらしく。悩んでないって訳ではないけど、ネガティブではないよね。

西田:恋の悩みとかポジティブなね。

よしむら:瑞々しい! 十代感というか。

──よしむらひらくはこんなにも優しいのか、っていう。

西田:元々の人間性には近いんじゃない?

よしむら:本当にそうですよ。身内に対しては優しいからね。いや、優しくないか。

西田:うーん………優しいんじゃない(笑)?

よしむら:(笑)。基本は優しいんだよ。で、一周半して厳しいんだよ。人に優しく、自分に厳しくだよ基本は。生活習慣に関しては自分には甘いけど。基本的には自己犠牲の人ですよ、俺は。

──続いて“ソングフォーミー”。これだけストレートにロックな曲も珍しい。

よしむら:2年に1曲ぐらい、こういう曲が出来るんだよね。

──ライブでも本当にカッコイイ曲だよね。ガツンとくる。ひらくくんのライブを見てると、良い曲だなぁとか思う事はあるけど、かっこいいと思えるのは新しいなと。

よしむら:えー、でも、最初に新曲デモですって出した時に全く無反応だったじゃん。で、ライブでやった時にさ、「めっちゃ良いね」とか言ってきてさ。キレそうだったわ、本当。

──いや、デモじゃ分からなかったんだからしょうがないでしょ! デモでは魅力が伝わりきらなかったんです。

よしむら:はい、じゃー、良かったですねー(笑)。でも、ああいうアップテンポな曲はライブで必要だよね。なら、なんでもっと作らないんだろって話だな…もしかしたら、今までのデモの中にあるかもしれないな…デモじゃ魅力が伝わらなかっただけで。

西田:おっと、根に持ち始めたぞ(笑)。

──その逆もあるじゃない? デモは良くても、そこからあまり伸びないというかさ。

よしむら:うん、それは、メンバーのせいですね(笑)。

西田:自分に厳しく人に甘いやつが、何を言う(笑)。

よしむら:ま、冗談だけどね。

──ラストの“つきのうみ”。これは一番新しい曲だよね。

よしむら:俺は今回のEPで一番よく録れた音源だと思うな。音的な部分で。今回のEPのために完成した曲だからね。それこそ、デモの段階で収録する事が決まって、それで作ったかな。

──『井の頭 EP』に収録される予定の他の曲を踏まえて。

よしむら:うん、そうだね。おかんが一番好きだって言ってた。

「そっか君も辛いんだね」

──さて、次はいよいよフルアルバムを出せたら良いなとは思いますが。

よしむら:そう出来たら良いけど、世間はそんなに甘くないからねぇ。でも、アルバムでやりたい音楽はかなり明確にあって。仮に俺が自主で出すとしたらという勝手な考えな元でなら、曲順も含めて出揃っている。曲も歌詞までほぼあるし。という状態だけど、でも、やっぱりそれを人に聴かせるっていう前提で組み直した時にどうなるのかっていうのをこれから詰めて話していきたい。気が早いかもしてないけど、俺としてはそういう段階にいます。

西田:『2012 EP』も『井の頭 EP』もかなりの意欲作だから、次をどうするのかって、難しいと思うな。逆に、次でどれだけ“ザ・よしむら”を叩き込めるかって事なんだとは思うけど。

よしむら:そう、意欲作である必要は全くなくて、逆に言えばまだよしむらひらくを全然出していないって思っているから、俺は。今年、それを出せたら最高ですね。

西田:デッロデロのドッロドロのやつを作りたいんでしょ。

よしむら:うん。今まで、よしむらひらくを知らなかった人が、これから聞いてくれるって事はベタだけど、すごく純粋に嬉しいし、その中の何人かとはたぶん音楽を通してすごく深く分かり合えると思うから、一万人聞いてくれたら、一人ぐらいは親友になれる人がいるんじゃない? っていう希望はあるかな。いや、もっといるし、たぶん、よしむらひらくの音楽を好きになる人は、俺は割とその人の事が好きだと思う。「分かってんじゃん」みたいな偉そうな意味ではなく、「そっか君も辛いんだね」みたいなさ。そういう結びつき方はあんまり好きじゃないし、依存はされたくないけど、でも、俺はそういう作り方をしているというか。人間として正しいと俺が思う音楽を作っているつもりだから、それを好きって事は、おそらく、俺はその人は良い人だと思うんだよな。弱さがあって、でも、強く生きて行こうとしている人だと思うのね。よしむらひらくの音楽を心底良いなと思ってくれる人は。そういう考え方が正しいのか間違っているのかは分からないけど、そういう人に、あ同じ事考えて歌っているひとがいるわって思ってもらえるっていうところかな。自分が生計を立てるっていう意味以外での音楽をやる意味は。

──あ、じゃぁ、俺は良い人だ!

よしむら:いや、俺の曲の事全然分かってねーじゃん。

──あ、そういう事言う。ひらくくんの音楽が好きだと言う人に、そういう事を言うのか? お前は分かってないじゃん、みたいなスタンスで(笑)。

よしむら:冗談ですけどね。

──それでは、最後に一言お願いします。

西田:『井の頭EP』を聞いて、これからもよしむらをお願いします、という事ですね。聞いてみて好きだったら、今後も見ていても楽しい人だと思うから。好きじゃなくても別に問題ないけど、好きだったら良い人生になる可能性があるかもしれないですっていう。

よしむら:今年出るアルバムを聞いてください。アルバムを楽しみにして下さい。もうね、そういう考え方でいかないと、若いアーティストはどんどんつぶれて行くから。宜しくお願いします!
 

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井の頭EP

RTSC-022 / 1,000yen (tax in)
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Song-CRUX

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1.watarirouka
2.ソングフォーミー
3.井の頭
4.つきのうみ

LIVE INFOライブ情報

3月5日(火)には下北沢SHELTERにて『井の頭EP』のレコ発イベントも開催。この日は、オワリカラのタカハシヒョウリによる初のソロCDも発売され、両者によるWレコ発イベントとなっている。よしむらひらくはスペシャルなバンド編成を含めた、最高の布陣で挑む予定なので、決してお見逃しなく。チケットはe+とローソンで発売中の他、出演者HPにてメール予約も受付中。
2013.3.05(火)下北沢SHELTER
よしむらひらく&タカハシヒョウリ Wレコ発イベント
よしむらひらく、タカハシヒョウリ

OPEN 18:30 / START 19:00
ADV. 2,000円 / DPPR2,300円(1D別)
チケット:ローソン(79255)、e+、SHELTER店頭、出演者メール予約
※来場者特典、北海道みやげ?あり!!

2.09(土)仙台FLYING SON
2.10(日)タワーレコード新宿店(観覧無料)
2.11(月・祝日)六本木Super Deluxe
2.13(水)札幌SOUND CRUE
2.14(木)札幌SOUND CRUE
2.19(火)新宿red cloth

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