Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

Who the Bitchという名のめくるめく音の万華鏡

2010.11.02

最愛の人を失くした経験で得たもの

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──そんな『L.O.V.E.』とは対照的に、ハーモニーの美しさが光る『マシュマロ』はehiさんの実体験から生まれたハードな1曲ですね。

ehi:これは去年、最愛の人を失くした私の体験を元にした歌なんです。乗り越えられないような逆境の中にいると、誰かのことを恨んでしまったり、妬ましく思ってしまうことが時にはあるんですよね。だけど、それは人の情けや深い愛を感じ取るチャンスだし、実際にそう感じ取れたことが私の中では凄く大きくて、それを歌にしたかったんですよ。彼が闘病している時に支えてくれた家族や仲間たちのこと、彼がたまに弱音を吐きつつも必死になって高い壁を乗り越えようとしていた姿をそのまま書きたかったんです。

──如何にピンチをチャンスとして捉えられるかという普遍的なテーマも『マシュマロ』には盛り込まれているように思えるし、それは誰しもが共感し得るものですよね。

ehi:どっぷりマイナスに入り込んじゃうと抜け出せなくなるほどの泥沼にハマってしまうけど、そんな時は少しだけ見方を変えればいいんですよね。ちょっと視線をズラしただけで、こんなにも近くに支えてくれる人たちがたくさんいたことを私は知ることができたし、そういう経験ができたことが自分の糧になったんですよ。この曲が今逆境の中にいる人にとって前へ一歩踏み出す勇気を持ってもらえるきっかけになれば嬉しいし、そういう思いで唄ってます。

──シリアスでハードなテーマを"マシュマロ"というソフトな言葉が和らげているようにも思えますが。

ehi:"マシュマロ"は使ってみたかった言葉だったんですよ。彼から見た私と仲間や家族という視点で書いたんですけど、病気が進行するにつれて不安も増すし、誰かに甘えたくなるものじゃないですか。そんな彼の姿が『カリスマヒーロー』のテーマにも通じる意外な一面でもあったんですけど、それでも彼は病魔に立ち向かっていこうとしたし、そんな過酷な状況だからこそ知ることのできた仲間や家族の愛というのがあって...。愛とは何なのかを普段じっくりと考えることもなかったし、そういう経験ができたのは良かったと思うんです。それと、病院の一室で人と人が繋がっていく瞬間を垣間見られたのは得難い経験でしたね。彼を応援する気持ちが知らない人同士をも繋げていく瞬間があって、人と人の絆っていいなと純粋に思えたんです。それはどうしても歌にしたかったんですよ。

──どれだけ失意のどん底に叩き落とされた経験でも、それを歌にせざるを得ないのは表現者としての業とも言えますね。

ehi:そこを避けて通ったら自分の音楽は成り立たないと思ったし、表現者の端くれとして"書きたい"と言うよりも"書いていた"という感じですね。気がついたらこの曲を作っていたと言うか。それに、Bitchには『カリスマヒーロー』や『L.O.V.E.』みたいな純粋にノリのいい曲もあるけど、『マシュマロ』や『Chicken Heart』のように生きていくことに対しての思いや前向きな気持ち、ちょっとでも勇気を持てば明日があるんだっていうメッセージ性を込めた曲もあることを知って欲しかったんです。ライヴもそうで、ドンチャン騒ぎだけで終わらない何かを残したいんですよ。ウチらがステージに立てて、みんなと出会えることの奇跡や喜びを共有したいし、そこにみんなの最高の笑顔があることの素晴らしさを分かち合いたいんです。ライヴでもCDでも、ウチらの出す一音一音で一緒に何かを共有できたら最高だと思うんですよね。

Who the Bitchらしさとは何か

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──テーマはヘヴィですけど、そこはポップでキッチュであることを信条とするWho the Bitchだけあって、親しみやすく普遍性のある楽曲として仕上げているのはさすがだなと思いましたね。3曲ともアレンジがよく練られているし。

Nao★:『マシュマロ』は割とハードめにしたかったんですよ。ゴリッとした感じの中であの歌詞を聴かせる方向になっていったんです。

ehi:特に『マシュマロ』はライヴで見てもらったほうがハードな感じに映ると思うんですよね。レコーディングは綺麗な感じに歌が仕上がったので、ライヴではCDにはない歌の強さみたいなものをちゃんと出したいと思ってるんです。

──『L.O.V.E.』は初期の頃からアレンジが変わったんですか。

yatch:基本的に変わってないですね。バカっぽさ全開なのは一貫してますから(笑)。

──結成当初の曲を唄うことにてらいみたいなものはありませんか。

ehi:『L.O.V.E.』に関しては全くないですね(笑)。

Nao★:全然ないな。そこがこの3人の感性が合ってる部分なんですよ。恥ずかしいとはちっとも思わずに「それ、エエやん!」って感じてる部分が(笑)。

ehi:ライヴで『L.O.V.E.』を始める時に、「ア、最初の字は〜"L"!」「"L"!」「次の字は〜"O"!」「"O"!」って掛け声を最近またやり始めたんですけど、それは自分でやりながら恥ずかしかったですね(笑)。

yatch:ああ、あれは恥ずかしかったんだ? 凄いノリノリでやってたし、あそこが一番グルーヴが出てたじゃん(笑)。

ehi:恥ずかしかったけど、私が恥ずかしくなって照れてるところを見て笑ってるお客さんがいるからやったほうがいいなと思って(笑)。

──エンターテイナーの性ですね。でも、海援隊の『JODAN』や西城秀樹の『Y.M.C.A.』の系譜を継ぐ曲を唄えるロック・バンドもそうはいないし(笑)、楽曲のレンジの広さはWho the Bitchの大きな強みじゃないですか。

ehi:ただ、最近曲作りで心懸けてるのは散漫にならないようにすることなんですよ。割と器用貧乏みたいなところがあって、「こんな感じの曲を作ろう」と思えばできちゃうほうなので。今は結成当初の匂いを大事にしたくて、原点に返ろうとしている時期でもあるんです。その辺を踏まえつつ、新たなチャンレンジをしていきたいと思ってるところなんですよ。

──Who the Bitchらしさは何なのかを改めて考えるようになったということですか。

ehi:ライヴの中でのBitchらしさとも言えるんですけどね。それを出すにはyatchが持ってくる速い曲が凄く活きてくるし、初期の頃はその手の曲が多かったんですよ。

yatch:僕が持ち寄るのはガレージ色の強い曲なんですけど、そこにehiのポップなメロディがバチッと噛み合うとBitchらしさが出るんですよ。

ehi:そうだね。そういう曲をまたガッツリやりたいし、踊れる曲もちゃんとやりたいし、メッセージ性のある曲もしっかりやりたいんです。その上で、如何に散漫にならないようにするかが今の課題なんですよね。

──Nao★さんからアイディアを提案するようなことは?

Nao★:あまりないですけど、この感じとこの感じが合わさったら面白くなるっていうのは何となく感覚で判るんですよ。この2人のアイディアが上手いこと合致すれば自ずと曲が走り出していくので、そこは全面的に信頼を置いてますね。

熱い何かが漲るライヴをやりたい

──Nao★さんはミクスチャー畑出身だから、その辺の混ぜ合わせ加減の嗅覚が優れているんでしょうね。

Nao★:どうなんでしょう? でも、ラップっぽいパートのある曲がこの先もっと増えたら面白いと思うんですよ。ベースを置いてラップに専念するみたいな(笑)。

ehi:Nao★が入った時はラップ調に唄うような曲を意識して作ってたんですけどね。

yatch:『Hi! Jack!』とかね。

ehi:うん。Nao★のヴォーカルの良さを引き出すにはそういうのがいいかなと思って。

──Nao★さんのベースは今や『カリスマヒーロー』で和音を弾いてボトムを支えるまでに成長を遂げて(笑)。

Nao★:あれはホントに苦労したんですよ。凄くシンプルな曲だけにベースの高い音で味付けをしなくちゃいけなくて、一番味付けを任せてはいけない私が和音を弾いたりしたんです(笑)。でも、それによって広がりのある楽曲になった気がしますね。

──向かうべき方向性がより明確になってきたし、"Superstar vs カリスマヒーロー TOUR"がますます楽しみになってきましたね。

Nao★:これまでの構成とは違ったものにしたいし、その完成型をファイナルのロフト・ワンマンに集約するつもりです。ツアーの集大成でもあるけど、いろいろ経験してきたこの1年の集大成でもあるんですよね。

ehi:ウチらもいろんな出会いと刺激を各地でもらうだろうし、そこで吸収したものをロフトで全部発せられればいいですね。

yatch:新曲もご披露するので楽しみにして欲しいですね。今まで攻撃的な曲はいくつかあったんですけど、今度のは"超攻撃的"なんで。

ehi:さっきも言ったように、ドンチャン騒ぎをしながらも熱い何かが漲るようなライヴをやりたいんですよ。まずは自分らが楽しめればいいってところから始まって、5年目にしてやっと伝えることに対して意識的になったのかもしれません。

yatch:それはやっぱり、去年のいろいろな経験が活かされてるんじゃない?

ehi:そうだね。『マシュマロ』を書くきっかけになったあの経験がなければ、ここまでバンドに対して意識的になることもなかった気がするし。

Nao★:その中でも初期衝動を忘れたくないっていう部分もあるし、今はバランスが凄くいいんですよ。

──ehiさんが病室で見た人と人の繋がりは、ライヴという一期一会の瞬間でも十二分に体感できますからね。

ehi:そうなんですよね。見ず知らずの人同士がウチらの音楽で一体になるなんてホントに奇跡だと思うし、ステージの上からフロアを見ると、一人一人の人生のリアルさを実感するんですよ。みんなそれぞれに喜びや悲しみを抱えていて、その人たちがひとつの目標に向けてライヴ会場に集まってるわけじゃないですか。その場でお客さんが純粋に楽しんだり感動したりする機会をウチらは与えられる立場だし、一本一本のライヴに足を運んでくれる人たちの時間をいいものにしたいんです。Bitchのライヴが明日を生きる勇気に繋がれば嬉しいし、そういうものにしなくちゃなと思いますね。そのためにも、まだまだ音楽はやめられないんですよ。

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カリスマヒーロー

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01. カリスマヒーロー
02. マシュマロ
03. L.O.V.E.

LIVE INFOライブ情報

Superstar vs カリスマヒーロー TOUR
10月28日(木)下北沢 SHELTER[vs Scars borough 2マン公演!]
10月29日(金)名古屋 ell SIZE
10月30日(土)京都 MOJO
11月1日(月)松山 サロンキティ
11月2日(火)高松 DIME
11月3日(水)広島 BACK BEAT
11月5日(金)岡山 Creazymama 2nd room
11月8日(月)長崎 DRUM Be-7
11月9日(火)福岡 DRUM Be-1
11月10日(水)梅田 Shangri-La
11月12日(金)仙台 CLUB JUNK BOX
11月21日(日)札幌 BESSIE HALL

TOUT FINAL ワンマン・ライヴ
11月26日(金)新宿 LOFT

OPEN 19:00/START 20:00
ADV 2,800yen/DOOR 3,300yen(別途1D:500yen)
ぴあP:115-645/ローソンL:73109/イープラス
問い合わせ:新宿LOFT 03-5272-0382

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