Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューperfect piano lesson('09年10月号)

『Wanderlust』と名付けられたニュー・アルバム。
perfect piano lessonが描いた詞世界への旅。

2009.10.01

聴く人を常に裏切り続けなければいけない"。perfect piano lesson(以下ppl)が、2nd.ミニアルバム『Wanderlust』をリリースする。緊張感のあるギター、感情豊かで個性的なベース、キレのあるドラムで、耳に残るメロディーと勢いのある楽曲を聴かせる3ピースバンド。ライブではこの勢いはむしろオーバー気味で、駆け抜けていくように疾走感のあるライブを見せ、息つく暇も与えないといったところだろうか。
 常に新しいことに挑戦し、聴く人の心に必ず何かを残していく彼らに、ようやくお話を伺うことができた。(text:やまだともこ)

"ジャンル"を意識しない曲作り

──8月に3ndとのスプリットepをリリースされていますが、この数ヶ月間でリスナーからの反応など手応えは感じていますか?

大屋 卓朗(Ba):スプリット発売後、cinema staffのレコ発、残響祭の東名阪と4回ライブしたのですが、物販での手売りでスプリットが結構売れました。興味を持ってくれている人が少しずつ増えてきているなと感じてます。3ndも僕たちもアルバム未収録曲を1曲ずつ収録して4曲入り1,000円だからポイント高いと思います(笑)。

──ppl としては、『terra incognita』から約1年ぶりのリリースとなりますが、この1年で音楽的に成長したと感じるところはどんなところですか?

大屋:知らず知らずのうちに楽曲の幅が広がったこと、幅が広がってもどれもpplらしい曲となっていることが大きな成長だと思います。このバンドを始めて8年半が経っていて、各々の音楽的経験や普段生きている中で感じたことなどが時間とともに巡り巡って、このような楽曲になったのだと思います。

──pplらしい曲というと?

勝谷 晋三(Dr):良い点は楽器のアンサンブルの構築やボーカルの透明さ・中性的さ。その点は多少意識していますが、"pplらしさ"は良い点も悪い点も含め、ひっくり返して行きたいなと考えています。常に良い意味で聴く人を裏切り続けなければいけないなと。ずっと同じようなことをやっているのは、僕たちもつまらなくなってくるので。今作では若干裏切れているのではないかと思っています。

──今作のタイトルが『Wanderlust』ですが、"旅に恋焦がれる心"という意味で音楽を通して世界各国で旅をしたいという野望はありますか?

勝谷:現状では世界各国でツアーというのは無理ですが、一度は他の国で演奏してみたいという気持ちはあります。myspaceなどで曲を聴けるようになっているんですが、様々な国の方から反響を頂いているので、実際にその地でライブをしたらどういう反応が返ってくるのかというのは興味があります。特にどの国というのはないですが、意外とアジア圏から反響が来てたりするので、個人的には行ってみたいですね。

──今回のレコーディングはかなり過密スケジュールで行われたそうですが。

勝谷:別の仕事と兼業でレコーディングを行なっていて、土日だけとなるとどうしても時間が足りなくなり、平日の夜にも録音を行なっていました。その結果、非常に過密なスケジュールとなってしまい、家に帰る時間も惜しいのでスタジオに泊り込む日もありました。久々のレコーディングだったので、慣れてくるのに時間がかかったり、レコーディングが始まると工夫したい点が多々出てくるので、過密スケジュールがさらに輪をかけて過密になってしまったんです。

──それだけ極限状態になっても、創作意欲をかきたてたものは何ですか?

勝谷:色々ありますが、結局今の僕たちが出せる音の完成形を聴きたいという気持ち・好奇心に尽きますね。

──なるほど。楽曲を作るにあたり、毎回どんなことを心がけてますか?

勝谷:何かしら特徴がある曲を作ろうとは思っています。メロディーを押し出したり、リズムやリフが面白いものであったり、それらの特徴を混ぜてみたり。また、"ジャンル"を意識しないようにしています。リフがあり、メロディーがあり、リズムがあり、曲の展開がある。それらを純粋に最良と思える形に構築していくこと。それを毎回心がけているので、結果出来上がったものが例えばバラードに聴こえることもあるかもしれないですが。

計算して曲が作れるような器用なバンドではない

──『Parallels』のサビはライブでお客さんと一緒に歌えたらということですが、ライブを意識しながら曲を作られることが多いですか?

白根 佑一(Gt & Vo):何かを意識して曲作りをすることはないです。でも、お客さんがライブで一緒に歌ってくれたり、手拍子してくれたりってすごく嬉しいんです(笑)。一方通行じゃないんだ、みんな楽しんでくれてるんだなっていうのが伝わってきて、演奏してて自分も単純に盛り上がるというか。それぞれが一番楽しめる方法で楽しんで頂けたらと思います。

──歌詞の和訳を読むとすごく良い言葉でしたが、なぜ英語で歌おうと思ったんですか?

白根:もともと洋楽育ちだからだと思うんですが、僕が思いつくメロディーって全部英語がのりやすい歌になっちゃうんです。でも日本語をのっけたらどんなバンドになるのかなっていう好奇心はあるので、次回作あたりでトライできたらとこっそり考えています。

──9曲目『Sugar cubes on the rainy avenue』の歌詞は、映画のワンシーンを見ているようでもありましたが、歌詞を書くために映画を見たり参考にしているものはありますか?

白根:一番影響を受けてるのは漫画です。黒田硫黄、大友克洋、つげ義春、魚喃キリコ、西島大介とかああいう不思議な漫画が大好きです。メビウスというフランスの漫画家さんの『B砂漠の40日』が最近のヒットです。自分でCDジャケットの絵を描く時も、意味がわからないけどかっこいい絵が描きたいなって思って。まぁ足元にも及びませんが(苦笑)。

──楽曲のレパートリーが幅広いですが、曲はどうやってできていくんですか?

大屋:8割方の曲はセッションから基本形(テーマ)が出来ます。例えば、白根のギターのリフがいい感じなので、勝谷と僕でリズム体を考えてテーマを作ったりだとか、誰かのリフやリズムに合わせて他の2人が反応して音で返す感じ。それでテーマになると感じたものを録音しておき、ネタを増やしていく感じです。きっかけのリフやリズムは家で考える場合もあれば、スタジオで閃いたりもします。残り2割については、ある程度誰かが考えてきたものを基本にして進めることもあります。

──pplは音のダイナミズムや、アンサンブルが魅力のひとつだと思いますが、音の主導権を握っているのはどなたですか?

大屋:セッションで出来た曲については、特に誰かが主導権を握っているということはなくて、まずは3人が各々の役割(フレーズ決めと演奏)を果たした上で、気になる点は意見を出し合って変えています。これは曲作りの段階においても、ライブに向けての練習の段階でも同じですが、『Sunday Night』と『heart&heart』は白根が曲の基本形を作ってきたので、この2曲については作曲者のイメージを大事にして進めました。

──その中で、6曲目の『〜a day from Wanderlust〜』や7曲目の『Superstar』は、弾き語りやシンプルなアレンジの曲ですよね。ストレートな感情を歌う時は、シンプルな楽曲になるという傾向にあるんですか?

勝谷:若干はあると思いますが、必ずしもではないです。なんとなく3人でやっていて、これはシンプルなアレンジにした方がいいのでは、となっていった感じですね。他の曲がややこしいものが多いので、シンプルな曲もたまにはやってみるかとそういう曲にしたのが本音です。6曲目も最初の最初はギターとボーカル以外にも何か入れようとは言っていたんですが、なんとなく結局弾き語りがよかろうということになりました。

──ややこしいといか、良い意味でこだわりを見せすぎずリスナーの間口はすごく広いような気がします。

白根:それは意図的ではなくて、今回の作品はたまたまそういう曲の集まりになったという感じです。今回は今までよりメロディーの主張が強い曲が多いのは確かなんですが、基本的にやってることは楽器の面白さを最重視するって部分で今までと変わらないと思います。ただ、客観的に比べてみると、よりオープンな作品になったというのはあるでしょうね。

──レコーディング中にエンジニアさんやスタッフの方に言われて曲の雰囲気が変わったという曲はありますか?

大屋:『Sugar cubes on the rainy avenue』はなかなか共通のイメージがつかめずまとまりがなかったのですが、エンジニアの川面晴友さん含めて話している時に、川面さんからメインリフのイメージとして「スモーキー」って言葉が出てきて、そこで一気にイメージがまとまりました。雰囲気のある曲として表現出来たと思ってます。

──ボーナストラックに収録されている『 heart & heart (Bonus Track) feat. texas pandaa』は、texas pandaaナツボリさんとデガワさんによるキュートなコーラスが入り楽曲に花を添えたようでしたが、ポップな楽曲も今後は果敢に取り入れていく可能性はありますか?

白根:ポップな楽曲を意図的に作ろうとしたというのはないです。たまたま家でギターを弾いてるときに浮かんだ曲で、今回のアルバムはこのくらいポップな方向にフっ切れてる曲を入れてもいいんじゃないかなって思って。僕たちのバンドはこういう曲作ろうぜって計算して曲が作れるような器用なバンドじゃないんで、今後こういう曲が増えるかっていうのは正直わからないです。でもポップなのは好きです、個人的に。

──では最後に、Rooftop読者の皆さまに一言ずつお願いします。

白根:今回はツアーいっぱい回ります。なかなか地方にいけないバンドなんで、ぜひ足を運んで頂けると嬉しいです。Finalは初ワンマンなんですが、新旧織り交ぜてぶっ倒れるまでやるつもりです。ぜひ遊びに来て下さいね!

大屋:いいアルバムが出来ました。面白いと思います、ぜひ聴いてみてください!

勝谷:pplを聴いたことない方も多くいると思いますが、CDやライブなど機会がありましたら御一聴ください。ツアーがんばります。

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Wanderlust

ZNR-072 / 2,300yen(tax in)
10.21 IN STORES

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LIVE INFOライブ情報

10.24(sat)横浜 club Lizard
10.31(sat)仙台 PARK SQUARE
11.07(sat)大阪 ファンダンゴ
11.08(sun)名古屋 ROCK'N'ROLL
11.14(sat)札幌 mole
11.21(sat)金沢 VANVAN V4
11.28(sat)福岡 四次元
12.05(sat)京都 MOJO
12.06(sun)神戸 STARCLUB
12.19(sat)渋谷 O-nest 【※ワンマン】

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