Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー剱伎衆かむゐ('08年10月号)

目撃せよ、これが最強最速の剣舞!

2008.10.01

剣にこだわり、その高度な技術と既成の枠にとらわれない表現方法で、独自のスタイルを築いた殺陣スペシャリスト俳優集団「剱伎衆かむゐ」(以下、かむゐ)。映画『KILL BILL』の殺陣指導・振り付け・出演で一躍脚光をあび、国内はもとより海外でも大きな評価を受けているかむゐが、先月のエディンバラ公演凱旋として約1年ぶりにロフトプラスワンで自主公演を開催する。今年結成10周年を迎えたかむゐのリーダー島口哲朗にこの10年を振り返りつつ、今後の意気込みをお聞きした。(TEXT:加藤梅造)

殺陣でコミュニケーションしたい

──まずかむゐ結成についてお聞きしたいんですが、そもそもなんで島口さんはかむゐを作ったんですか?

その頃僕がテレビの時代劇のトップクラスの現場で仕事をしていた時に感じたのが「失望」だったんです。たとえ今すぐにではなくても、自分たちだったらもっと全然違うものを生み出せるんじゃないかと。それが「剱伎衆かむゐ」を結成した動機です。もちろん時代劇だけに出るということであれば、ああいった世界に入って、彼らの元で同じ仕事をするというのが手っ取り早い方法だとは思うんですが、そうしたチャンバラのプロって結局は「斬られ役」なんですよ。斬られ役が悪いというんじゃなくて、そもそも「斬り役」「斬られ役」と分かれていること自体がおかしいだろうという単純な疑問があった。僕らは殺陣でコミュニケーションをとっていると思っているんですが、時代劇の現場の多くは、会話に置き換えると、斬り役というのはしゃべるだけ、斬られ役というのは聞くだけという一方方向なものなんです。それはコミュニケーションとして全然いいとは思えなかった。僕らは殺陣でもっと豊かなコミュニケーションをしたかったんです。それは時代劇という世界だけに留まらず、それこそ、ロフトでバンドと一緒にコラボレーションしたりといった、いろいろな世界の人たちと殺陣を通じて交われる可能性があるんじゃないか、と。それは漠然とですが強く確信していました。だから食えない時代もあったんですが、僕らはかむゐをやってきて本当によかったと思います。

──いわば、かむゐはそれまでの既成概念を打ち破ったんですね。

そうであると信じたいですね。

──結成してすぐにL.Aに行ってストリートパフォーマンスをしたそうですが、これはどういった経緯で?

時代劇には縄張りもあって日本で仕事がなかったというのもあったんですが、正直、なんで行ったのかあんまり憶えてないんですよ(笑)ストリートパフォーマンスのやり方もわからなかったから、いきなり警察から怒られて、その後市役所にいって許可をとってまた再開したりとか。思い出すことと言えば、1日1食たまごかけご飯を食べて、1日に7〜8ステージぐらいやって、そこで興味を持ってくれた業界の人に食らいついてアポとったりしてました。簡易カメラで撮った写真を切り貼りして資料を作って、それをコピーして配ったり。

──そんなかむゐの転機の一つとしてはやっぱり『KILL BILL』に出演したことが大きいですよね。

確実に大きな転機でした。多くの人に知ってもらえる機会になったし、今でもMCで『KILL BILL』に出たことを言うと客席から歓声があがりますからね。

──時代劇の古いしきたりから飛び出した島口さんにとって、タランティーノ監督の映画に出ることは絶好の機会でしたよね。また『KILL BILL』の世界観である、アクション、殺陣、ロックといった要素は、まさにかむゐの世界観に通じてますから。

そうですね。僕は学生の頃から普通に布袋寅泰さんのファンでしたが、まさかその後自分が布袋さんがメインテーマ曲をやっている映画に出られるとは思ってませんでした。しかも、『KILL BILL Vol.2』の公開記念で、布袋さんとかむゐが一緒にコラボレーションできたことは本当に嬉しかった。かむゐをやってなかったらこんな機会はまずなかったと思います。

──また『KILL BILL』といえば、かむゐがロフトプラスワンでイベントをやるきっかけでもありましたよね。(註:かむゐが初めてロフトプラスワンに出たのは2003年11月のイベント『剱伎衆かむゐのWe are Japanese!!―KILL BILLのあの殺陣シーンはこうして生まれた!―』だった)

そうですね。かむゐにとってロフトプラスワンや新宿ロフトでのパフォーマンスはすごく重要なもので、活動の幅や交流関係がすごく広がりました。

──ライブハウスでのパフォーマンスは、かむゐの原点であるストリートパフォーマンスと近いものがありますよね。

ストリートもライブハウスも、やっぱり究極のライブなんです。例えば映画だとカット割りでいくらでもごまかせますが、ライブハウスのようにお客さんが目の前にいるような状況だと絶対にごまかしはきかないですから。ある意味真剣勝負でもありますし、かむゐをすごく鍛えてくれた場所だと思います。お客さんの目の前でごまかしのきかないパフォーマンスをするというのはまさに生きたコミュニケーションだと思うし、撮影スタジオでは絶対に味わうことができない感動があると思いますね。だからお客さんにもそういった感動を味わってもらえたら嬉しいですね。今度10月16日に久しぶりにロフトプラスワンでライブがありますが、僕らもすごく楽しみですし、こうした活動は常に続けていきたいと思っています。

苦しくても自分たちの力でやるべきだ

──かむゐ10周年公演の『閃』を僕も観させていただきましたが、まさにかむゐの10年の集大成といった圧倒的なパフォーマンスだったと思いました。

1部が邦楽の生演奏をバックに春夏秋冬を意識したきれいな形式の殺陣をやって、その次に、声優の名塚佳織さんにも出て頂いて無セリフの芝居とパフォーマンスを約40分、その後でちょっとしたコントを挟んで、最後は『KILL BILL』のテーマをはじめアップテンポなロックを中心に出演者全員のパフォーマンスでしめるという、ある意味、これまでのかむゐの活動を総括するものになっていました。

──例えば1部のいわゆる時代劇的なチャンバラが好きな人にとって、最後のロック的なパフォーマンスはどのように映るんでしょうか?

観に来てくれた時代劇の作家の方が言っていたんですが、むしろ3部のショーがセンセーショナルだったそうです。1部の時代劇、日本舞踊、狂言といった演目は、予想できる範囲のものなんですね。それを2部の芝居で裏切って、さらに最後には一大パフォーマンスで盛り上げるというのは「え、剣で踊るの?」という衝撃があったみたいです。やっぱり日本人の美意識として、「間」の美しさというのがあると思うんです。刀を使っているんだけどそれが総じて美しく迫力があるものを見せるというのはかむゐのテーマですね。

──先月は、2006年に引き続き2回目のエディンバラ公演がありましたが、これはどういった経緯で開催されたのですか?

2年前は海外を中心に活動している奈良の太鼓チームから依頼があって振り付けとキャストで行ったんです。だけどやってみたら感覚が合わなくて、これは自分たちだけでやったほうがいいと思ったんです。それはある意味かむゐの原点に戻ったとも言えるのですが、ギャラをもらって不本意なものをやるのではなく、苦しくても自分たちの力でやるべきだと。そして今年、自分たちの公演として、会場の押さえからプロモーション、ホテルの手配まで全部やって、演者8人、スタッフ1人、通訳1人の計10人で行ったんです。

──今回手応えはどうでしたか?

もちろん諸手を挙げて大成功とは言えないし、これからの課題も見えたし、進むべき道もみえたんですが、だからこそ今後も続けていこうと思えるものでした。

──かむゐ初年のL.Aストリートパフォーマンから今年のエディンバラ公演までを考えると、かむゐの海外志向が確実に具体化している感がありますよね。

当初のL.A行きの時は、絶対海外だというよりは、ある種ノリで行ったというか、熱い思いだけで行きました。そういう意味では、今回、ちゃんと事前に計画を立て明確な目標を持って海外に行ったことを考えると10年の年月を感じますよね。10年前の渡米がなかったら今はもっと違うことをやっていたと思うし、逆に言えばなるべくしてこうなったというか、今後もこの方向でベストを尽くしていきたいと思います。

──では最後に10月16日ロフトプラスワンについて

恒例のお客さんの目の前で繰り広げるかむゐならではのパフォーマンスに加え、今年はかむゐ10周年記念でもあるので、10年間をトークと映像で振り返ってみたいと思います。あとエディンバラから帰ってきてから初めての一般公演なので、そのへんの裏話もしてみたい。他にも殺陣に興味のあるお客さんには実際にチャンバラ体験もしてもらおうという企画もあり、かなり盛りだくさんな内容になると思います。かむゐを知っている人はもちろん、チャンバラに興味がある人にも是非観て欲しいです。

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LIVE INFOライブ情報

10月16日(木)
Kamui 10th Anniversary
「剱伎衆かむゐのサムライスピリット・リターンズ」
【出演】剱伎衆かむゐ、他
Open18:30/Start19:30
¥2000(飲食別)
場所:ロフトプラスワン

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