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INTERVIEW

トップインタビューPLEGLICO('08年4月号)

売れてる音楽っていいな 売れてる音楽って何だ?

2008.04.01

ファーストミニアルバム『guten burger』をリリースした当時のPLEGLICO(プレグリコ)はニューウェーブ的だの捻くれた感じのポップだのと言われてましたが、今回発表されるセカンドミニアルバム『Invader Shop』はそんなイメージから"突き抜けた感じを出したい"と意識して作られたもの。自分たちにしかできない音で、自分にしか言えない言葉を追求してできた『売れてる音楽』は、20年間音楽をやり続け、紆余曲折を経てきたna-bonaだからこそ言える言葉で表現されている。今まで誰かが言ってそうで言ってなかった言葉。もしかしたらこの歌を歌うことによって嫌われるかもしれない。でも、自分にしか言えない言葉を貫いたら、それは一番正直で嘘偽りないものなんだと思う。メンバーも固まり、2枚目にしてバンドとして確立してきたPLEGLICO。彼らの新境地となった『Invader Shop』をぜひ聴いてほしい。(interview:やまだともこ)

突き抜けた感じを出したかった

──前回のインタビュー(2007年1月)以降、ベースに相馬さんが加入し、ようやくメンバーも無事落ち着いたと思いますが、今回リリースされる『Invader Shop』は今のメンバーでは初音源となるんですよね?

na-bona(ナボナ / vo.gu):そうです。ようやくメンバーも固まり、『guten burger』でやり切れなかったことをやろうというのがありました。あの時もメンバーチェンジの直後だったんですが、音を追求するとか深いところまでやりきれなくて、メンバー自身も納得できていない部分があったんです。だから『Invader Shop』では、自分たちがやりたいことをやる、PLEGLICOはこういうバンドですというのを作りたかったんです。

──1枚目で出来なかった、音を深いところまで追求するというのは具体的に言うとどんなことですか?

susu(スス / gu.syn):バンド感ですね。『guten burger』のレコーディングはアンプで音を出せなくてラインで録っていたところもあって、音は綺麗に録れているんだけど小綺麗にまとまっているというか、俺たちはこんなんじゃないのにって思うところもあったんですよ。今回、個人的なことを言えば、ギターは1テイクで録ってるしミスも多いんですけど、全部通して雰囲気が出てるからいいかって思ったんです。

──音の話が出ましたけど、アナログ的な音作りは意識されました?

na-bona:今回はアンプで鳴らして、荒削りでもいいから突き抜けた感じを出したかったんです。ハードコアの人たちが使うようなスタジオを使ったんですけど、アナログ機材を使っていてすごく太い音が録れるんですよ。前回の小綺麗なデジタルの音じゃなくて、生の感じを出したいと思っていたらちょうどいいスタジオがあって、そこでやってみようと思ったんです。

──温かい音になりましたね。前回より聴きやすくなった印象を受けました。で、ジャケットはボヤけた猿ですが...。

na-bona:(笑)わざとチープな感じを出したんですよ。最初は綺麗な感じで撮ったんですけど、もっとザラッとした感じにしたくて加工しているんですよ。

──なるほど。ところで、1曲目に入っている『売れてる音楽』はタイトルからして衝撃でしたね。

na-bona:最初にアルバムを作ろうっていう時には、『売れてる音楽』と『溺れたクジラ』(M-3)はできていなかったんです。だけど、どこか突き抜けたい気持ちが強くて、自分たちがやりたいことと言いたいことを全部やっちゃおうと思った時に作れたのが『売れてる音楽』なんですよ。

──それにしても、ここまでストレートな表現もなかなかないと思いますけど...。

na-bona:これって誰もが思うことだけど、言葉には出さないですよね。そんなことを今更言ってもしょうがないとか、かっこわるいとか、いろいろ理由があるから口にはしない言葉だと思うんですけど、俺の年齢と経験で今これを言いたいという気持ちになったんです。だから歌詞をちゃんと聴かせたいということもあって、PLEGLICOの曲にしてはアレンジもシンプルなんです。最初はいろいろとやりたかったけれど、俺たちにしかできない音で、俺にしか言えない言葉で表現したくて、アレンジもOKが出るまで何回もやりましたね。でも、このメンバーで出した音がPLEGLICOになっていると思うので、すごくいい具合のシンプルなアレンジになりました。

──この曲は音楽業界に盾突いている感じですけど、メロディーがのんびりと流れていくので、不思議とそこまで嫌みに聴こえないんですよね。

ケイニッヒ(dr):敢えて主張するかしないかのテンションで歌っているから良いのかもしれないですね。

na-bona:昔は政治的な歌を歌っていた時期もあったんですが、どんなに凶暴な歌を歌っても嫌みに聴こえないと言われていたんです。俺はこういうことを歌っても許されるんだな、だからそんなに耳につくような感じにはならないんじゃないかなっていう自信があったからやったっていうのがデカイです。あと、歌で言いたいことを言って嫌われたとしてもいいと思っているんですよ、今は。自分の中ではやりたいことをやったつもりなので、万人に受けなくてもいいかなって思うようになりましたね。

ケイニッヒ:今までの歌詞はパッと聴きひねくれているというか、解釈の仕方が何通りもあるという感じでしたけど、これはシンプルだから1曲目に合ってる曲だと思いましたよ。na-bonaさんの初期衝動的な感じがしました。

na-bona:音楽だけに限らず、言いたいことが言えなかったり、当たり前のことだと思われているから言わないことってあるじゃないですか。言いたいことがあるなら言っていこうよって思うんです。それを言っちゃいけないんじゃないかって自分の中の壁で言わなかったりするけど、まずは争っても良いから自分の気持ちを伝えようという気持もあるんです。でも、実際ライブで歌って、絶賛してくれる人もいれば、鼻につくんだろうなっていう人もわかりましたよ。

susu:それだけ思わせる何かがあるんだなってことですよね。

くそまじめにロックをしたくない

──3曲目の『溺れたクジラ』も面白いですね。いろんな音が入っていますが、何種類ぐらい楽器を使っているんですか?

na-bona:そんなに使ってなくて、やろうと思えばライブでそのまま再現はできるんですよ。

susu:すごい練習しないとダメですけどね(笑)。60年代っぽい音の意識をしました。

na-bona:最初はアレンジが全然違っていて、普通にベース、エレキギター、鍵盤、ドラムだったんですけど、何回アレンジをしても全然しっくりこなくてボツにしようと思っていたんです。で、『売れてる音楽』が1曲目に来た時に、最初のアイディアで相馬が「ロックっぽい音にしなくても、アコースティックでやったらいいんじゃないか」って言っていたんです。それでドラムもベースもエレキもやめて、アコギにして、そこに木琴とか笛を入れたらすごく良い感じになりましたね。

相馬(ba):もともと木琴が好きで、強引に木琴を買っちゃえば入れてくれるかなって思ったんです(笑)。

ケイニッヒ:僕はアレンジが決まってないまま録りました。

na-bona:彼だけ決まってなかったんですよ。

ケイニッヒ:ギリギリでした(笑)。同じ事はできないです。

相馬:でも自由に叩いていたよね。

──PLEGLICOならこういう音が合うんだろうなっていうのはあるんでしょうね。

ケイニッヒ:そうですね。自然に出てきました。

na-bona:最初は話し合ったり、PLEGLICOはどういうものかって手探りでやっていたんですけど、今はメンバー全員がだいたいわかってますからね。

──アレンジって1曲に対してどれぐらい時間がかかります?

na-bona:俺らは、かかりますねー。

susu:今思い出したんですけど、ファーストとセカンドの一番の違いは、ファーストの頃はna-bonaにこっちが考えたフレーズを提出して添削をしてもらっていたという感じだったんです。PLEGLICOはna-bonaのソロプロジェクトで始まってますからね。でも、今は任せてもらえているから自由度が全然違う。だから、アレンジでバンドの煮詰まりというのはあんまりないです。その代わり、個人的には煮詰まりますね。だから、アレンジの時間も使い方も前とは違います。個人的にはお客さんにとって聴きやすいアレンジでは録ってますけど、ライブでは変えてます。遊べるポイントを作っていて、サラッと聴けるけど、よく聴くとフックがあるというのは今回も意識してますね。

──サラッと聴くこともできるけど、深く追求しながら聴くとどこまでもいけますね。

ケイニッヒ:味がある感じですね。

na-bona:そういうのが好きなんです。何回か聴いて中古屋に出されちゃうような、飽きちゃうCDにはしたくないんです。自分で何回聴いても飽きないのを作りたい。

susu:あと、気に留めているのはライブに来たら違う演奏が聴けるところですね。

──基本的にライブと音源は変えたいというのはあります?

susu:リリースしてからもっといいフレーズが浮かんだりすることってありますよね。この時はこうやったけど、このほうがいいなって思うこともありますし、それを上手くミックスして使えるところを使っていくという感じです。くそまじめにロックをしたくないんです。俺たちロックンロールですからっていうことは言いたくない。どこかでユーモアがないと疲れるし、佇まいもそうですけど、アレンジやサウンドもちょっとおもしろおかしい音にしているんです。

na-bona:決めすぎちゃうとおもしろくないかな。

susu:それは俺たちがやることじゃないからね。あとは、ファーストとセカンドを比べると確実に性格が違いますから、聴き比べてもらえたら嬉しいです。

何回聴いても飽きいない音楽

──前のCDの時は制作の時間が足りなかったと言われてましたけど、今回はどれぐらいかけてます?

ケイニッヒ:今回も時間はなかったですよ。

susu:金もなかったけど(笑)。

na-bona:結局時間はなくなるんですよ。性格的に追い込まれないとできない人間が集まってしまったので(苦笑)。

ケイニッヒ:でも、もっと作り込んだらどうなるかっていうのはあるよね。

susu:俺らが作り込んでいったら、いくら時間があっても足りないよ。

ケイニッヒ:自分だけのこだわりがあって、それぞれ変なところで執着するんです。だから、期限がなかったらいつまでも終わらないと思う。

──今は今でベストが出た感じ?

susu:できることはやりました。

──次でガラリと変わるとかは?

na-bona:ないですね。ファーストの時点で、自分たちが思っている以上にPLEGLICOはこういうもんだっていう形ができているので、次に作品を出す時は今までの曲の中から抜粋したり、新曲を入れたり、選び抜かれたものを取りそろえてフルアルバムを出したいです。

──新曲はできてます?

na-bona:ちょこちょこは出来てますけど、形にしてライブでやるまでは至ってないです。

──ライブもけっこうありますし、"kalintou tour!+α"も決まってますね。ライブって初めて見るお客さんもいっぱいいると思いますけど、どう感じて欲しいとか考えてます?

na-bona:意識してないですね。

susu:俺はポップバンドとして見られたい。

na-bona:腕組まれて見られるよりは自由に見てもらいたい。

──腕組んで聴く曲ではないですからね。のびのび聴いてほしいですね。

susu:いろんな人に聴いてもらいたいです。限定するつもりはないですからね。

──今後こうなっていきたいとか考えてます?

na-bona:みんなに聴いてもらいたいという意識は変わらないんですが、自分たちがいいと思うものを楽しくこれからもやっていければいいかな。あとは聴いてくれる人がいればやりたいし、聴いてくれる人がいなくてもやっていきたいですね。

susu:できれば楽しくやっていきたい。一生やっていけたらいいですね。

ケイニッヒ:何回聴いても飽きのこない音楽をやっていきたいです。

na-bona:あとは、同じメンバーでやりたいよね。今すごく固まって良い状態なんです。

相馬: ライブが楽しくてしょうがないんです。今一番いたい場所なんだなって思ってます。

na-bona:良いこと言うね(笑)。

──ところで、na-bonaさんって、あの癖のある歌声から想像ができない喋り声ですね。

na-bona:よく言われますね。普通に喋れるんだって言われます(笑)。

相馬:私も実は会うまでどんな声で喋るんだろうって思ってたんです。でも、喋ってました、普通に(笑)。


2nd mini album
「invader shop」

MT-115 / 1,150yen(tax in)
4.02 IN STORES

amazonで購入

M-1.売れてる音楽
M-2.space 45
M-3.溺れたクジラ
M-4.I like it
M-5.beee beee dance
~bonus track~真空管オレンジ

LIVE INFOライブ情報

Kalintou tour!+α
4.02(Wed)横浜リザード
4.08(Tue)千葉ルック
4.14(mon)宇都宮ヘヴンズロック
4.22(Tue)水戸ライトハウス
4.26(sat)前橋フリーズ
5.02(Fri)代々木Zher the ZOO レコ発ツアーファイナル
5.03(Sat)長野ネオンホール
5.04(Sun)新潟 CLUB JUNKBOX MINI

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