トップ > コラム >戌井昭人の想い出の音楽番外地 > 第二十七回 アメリカのドライブでロードムービーの気分に浸れるカレン・ダルトン

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 旅行をしているとき、車を運転しているときに、なんとなく音楽を流していたら、そのときの自分の状況と、ばっちしなバックグラウンドミュージックになっていたということがありますよね。そんなときは、なんだか嬉しい気分になって、自分が映画の登場人物の一人になったように思えてきたことが皆様もあると思います。
 以前、サンフランシスコからラスベガスまで、車を運転していたことがあります。サンフランシスコに住んでいる友達のところに行ったとき、「よし、ラスベガスまで行こう」となって、向かったのです。さらに、そのまま向かうのもなんなので、途中、デスバレーという、ものすごく暑いところに寄ったり、帰りは、ルート66を走ったりしました。
 わたしたちは、持参した携帯音楽プレーヤーを車につなげて、ガンガン音楽をかけていましたが、どうもピンときません。そこで、やっぱラジオかと思って、切り替え、車は普通の乗用車でしたが、気分は『バニシング・ポイント』で走っていました。けれども、どうもピンとこない。
 わたしは、どうしても、いままで観てきたアメリカンロードムービーを思い出し、アメリカを車で走っているんだぞ、という気分に浸りたかったのです。もちろん、ステッペンウルフの「Born to Be Wild」もかけました。しかし最初は、盛り上がるのですが、すぐに、「これじゃないよな」という気持ちになります。
 道はハイウェイから、だんだん荒野のような感じになってきました。そのとき、わたしの、携帯音楽プレーヤーから流れてきたのが、カレン・ダルトンの『IN MY OWN TIME』というアルバムに入っている、「Something On Your Mind」でした。わたし鳥肌が立ちました、「俺、いま、アメリカ、車、ハンドル、走ってる、荒野」。まさしく、ロードムービー真っ最中の気分。以降、ずっとリピートして、聴きまくっていたのです。「Something On Your Mind」は、もともと原曲があって、カレン・ダルトンという人は、いろいろな曲をカバーしているのですが、掠れた声、気だるそうな唄い方、ずいぶん堂々としている雰囲気が漂ってきます。
 しかしながら声から想像はできないけれど、彼女自身は、ものすごい恥ずかしがり屋だったらしく、1960年代に、デビュー作のアルバム、『It's So Hard to Tell Who's Going to Love You the Best』を出し、次に、『IN MY OWN TIME』、そしてデビュー前のライブしか、音源がありません。つまり、二作品出して、すぐに音楽シーンからいなくなってしまったそうです。
 その後、80年には、ホームレスになっていて、アルコールとドラッグで亡くなったそうです。これらも含めて、アメリカといった感じなのですが、もっと活躍して欲しかった。
 とにかく、アメリカの荒野に車を走らせるとき、カレン・ダルトンを聴けば、だれでも、ロードムービーの気分に浸れると思います。運転中は、アルコールとドラッグ抜きで、お願いします。
 
戌井昭人(いぬいあきとprofile
1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。
 
カレン・ダルトン
「IN MY OWN TIME」

レーベル: LIGHT IN THE ATTIC/OCTAVE-LAB

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1. Something On Your Mind (Dino Valenti)
2. When A Man Loves A Woman (Calvin Lewis / Andrew Wright)
3. In My Own Dream (Paul Butterfield)
4. Katie Cruel (Traditional)
5. How Sweet It Is (Dozier/Holland/Holland)
6. In A Station (Richard Manuel)
7. Take Me (George Jones / L. Payne)
8. Same Old Man (Traditional)
9. One Night Of Love (Joe Tate)
10. Are You Leaving For The Country (Richard Tucker)


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