トップ > コラム >おじさんの眼 > 第206回 変わりゆく新宿歌舞伎町

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歌舞伎町の怪しい風俗の看板コピーは天才的だ

新宿治安回復作戦(歌舞伎町ルネッサンス)は成功したか

 新宿歌舞伎町は「不夜城」「眠らない魔都」「非情の街」「漂流街」「欲望の迷宮都市」の異名を持ち、長いこと「日本一危ない都市」と呼ばれてきた。
 昼間から厳ついヤクザが地回りで大通りを闊歩し、ポツポツと外国人売春婦が街頭に立ち、「お客さん、いい子いますよ」なんて言う客引きの隣りでコマ劇場の歌謡ショーを観劇しに来た田舎の団体客が空き地で弁当を食べている、実に不思議な光景が見られた。
 ラブホテル街に囲まれて、洋品屋の隣りにソープ、居酒屋の隣りには風俗が同居。ちょっと傍目には怖いが、なんとも怪しい人間がたくさんいてスリルがあり、空を見上げれば奇妙な風俗の看板コピーに感動したりする。そんな世界的にも珍しい摩訶不思議な街だった。
 しかし、「暴力団排除条例」「東京都迷惑防止条例」の成立と強引な石原慎太郎都政、新宿区、歌舞伎町商店街がタッグを組み、警察、消防、入国管理局と連携した官民総掛かりの風俗店等の駆逐を目指した。この風俗敵視は昔の歌舞伎町商店街の「全共闘狩り」に似ていて、どうもいい感じがしなかった。
 

やはり怖い街だった

 ロフトが新宿に引っ越してきてからもう40年になる。いくら長いこと新宿の住人だからと言っても、私はなんだかんだ歌舞伎町にいる時はいつもどこか緊張していた。眼をギラギラさせた風俗狙いの連中やリアルなヤク中が街を徘徊するのを見ていると、ちょっと怖かったりもした。
 普通の街と比べるとやはり異様だし、確かにルールさえ守っていれば安心だという鉄則はあるが、酔っぱらって思わずヤクザの足を踏んづけて蹴りを入れられ、土下座をしたこともあったし、傘がヤク中に当たって突然ぶん殴られたこともあった。突然、警察の職務尋問で強制的にカバンの中を開けられることはしょっちゅうだった。だから歌舞伎町でちょっと他人とすれ違って肩が触れたら、すぐに「すみません」と言う癖がついてしまったくらいだ。
 
 
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世界一の歓楽街もフツーの街になってしまうのか…
 

歌舞伎町は歩きやすくなったか?

 今年4月、歌舞伎町は大きく変わった。歌謡曲の殿堂・新宿コマ劇場が解体され、そこにTOHOシネマズ新宿を内包した大規模商業ビル・新宿東宝ビルがオープンしたのだ。上階はホテル、シネコン、パチンコ屋、1階のメインには銀だこ、王将、リンガーハット、寿司屋、コンビニとどこにでもあるチェーン店が入り、実につまらない商業ビルになってしまった。なんで歌舞伎町のど真ん中で銀だこや王将やリンガーハットなの? と、東宝ビルのセンスのなさに絶句した。さらには伝統のミラノ座が入るビルも、いずれは東宝ビルと同じようにホテルが入った雑居ビルになると言われている。
 近頃の歌舞伎町は、パチンコ店、カラオケ、居酒屋チェーンが増え続けている。東宝ビルにそびえるゴジラが街を変えたのだろうか、縁遠かった家族連れや女性グループの姿が目立つようになった。全盛時には1日約45万人の群衆が歌舞伎町を訪れていたが、警察の取り締まり強化で多くの風俗やヤクザが歌舞伎町から逃げ出し、街は活気を失い、消沈。工事中の歌舞伎町周辺は惨憺たるもので、街を訪れる人の数は1日15万人にまで激減していた。ヤバい風俗ぼったくり店は地下に潜り、むしろ犯罪が増えたと言われた。
 

私は今の歌舞伎町を支持する

 その昔…、そんなに遠い昔ではない歌舞伎町のイメージを持っている人が今の歌舞伎町を訪れたら、その明るさにビックリするはずだ。何か途方もなく小綺麗になり、明るくキラキラしている街に変貌した。風俗とラブホテル以外、何の取り柄もなかった歌舞伎町が、雑多な昭和文化を残しながら高層ビルのある普通の街になったのだ。
 私の友人たちの多くは「歌舞伎町からスリルがなくなったら、やっぱり寂しいよ」とか「歌舞伎町のあの混沌とした奥の深さ、矮小さがいいんだ」と言うが、私は「歌舞伎町はもう風俗の街でなくてもいい」と思うようになった。老人にとって緊張は辛い。お陰でロフトにはこれまであまり来なかった外人客や若い子たちが数多く来るようになった。
 その昔、私は行政のやる都市再開発には断固反対、裏路地を守れ! なんて運動もしていたが、ただ闇雲に「古い街並みを守れ」と都市再開発反対を声高に叫ぶのも、ちょっと疑問を持つようになった。今、着実に歌舞伎町を訪れる人は増え続けている。どこへ行くのか歌舞伎町、である。
 
 
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鴨川シーワールドでのシャチのショー。暑い中ごくろうさん

奇妙な夏休み

 8月のクソ暑い中、馬事公苑での「せたがやふるさと区民まつり」に行ってきた。あるテントで何かのくじを引かされると、「おめでとうございます。あなたは一流ホテルに招待されます。たった500円でご希望のホテルに夫婦で一泊できます」と言われた。選べるホテルはいろいろあったが、なんとなく騙された気になって、鴨川の某ホテル(温泉付き)に招待されることにした。いつも夏の時期は「どこへ行っても混んでるし」ということで、私が家から出ることはほとんどないので珍しい外泊だ。
 どうせこの招待には裏があるんだろうと思ったが、案の定、会員制リゾートホテルの新規募集という罠だった。ホテルに着いて30分の宣伝ビデオを見て、さらに1時間半の説明会参加が条件だった。私はその間、ほとんど寝ていたが、何とかクリア。それほどインチキな感じではなく、後から執拗な勧誘が来るかと思ったが来なかった。鴨川シーワールドでシャチやイルカのショーを見て、帰りはいすみ鉄道・小湊鐵道に乗り、思いのほか素敵な夏休みを堪能した。
 
 
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いすみ鉄道は素朴な千葉の田舎をのんびりと走る

ロフトラジオ、益々好調

 私の思いつきで始めたロフトラジオが好調だ。アクセスも増えている。最近は「ロフトラジオに出させて」という要望も多くなっている。嬉しいな。是非アーカイブでご覧ください。
 
『ロフトラジオ』8月のラインナップ(アーカイブもご覧になれます)
【第30回・8月6日】「悪役プロデューサー高須基仁、人たらしの極意と反戦平和を語る!!」ゲスト:高須基仁(出版プロデューサー)
【第31回・8月13日】「片岡恭子の夏だ! お盆だ! 納涼 旅ばなし」ゲスト:片岡恭子(プロバックパッカー)
【第32回・8月20日】「SEALDsと法大黒ヘルは何が違うのか?」ゲスト:中川文人(作家、編集者、実業家)&松本 哉(素人の乱)
【第33回・8月27日】「3年ぶりの書き下ろしルポタージュ、ホームレス・スーパースター列伝!」ゲスト:村田らむ(ライター、イラストレーター、漫画家)
 
 

Live info.

【毎週木曜日生放送 ロフトラジオ】 ライブハウス稼業を始めて早40年。いつもライブの客入りに一喜一憂してきた創業者・平野悠が「もうこの歳になったら、毎日の売り上げとか気にしないで、気楽に好き勝手なことを喋りたい!」とある日突然思い立ち、なぜかネットラジオを開局しました。名付けて「ロフトラジオ」。だいたい毎週木曜日の20時から22時まで(その日の乗り次第で長くなったり短くなったり)、新宿百人町のロフト仮設スタジオから放送します。

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