もしも人生をやり直せると言われたら、何歳からやり直しますか？

 

　私は多分、やり直さないと思います。

 

　なぜならこういうよくある「もしも〜なら」系の話では、やり直した年齢の時に現時点での記憶がある場合・ない場合があって、もしも記憶があったとしても今以上にうまくいく人生の選択ができるか分からないし、なかったとしてももう一度あんな辛い思いをするのはもうごめんだと思うような人生だよなぁ...と思うからです。

 

　今まで生きてきて、いつが一番楽しいですか？　と聞かれると、どんな年齢の時も絶対的にそれは「今が一番楽しい」のだけど、振り返ると決してそうではなかったよね。と思うことも多々あります。

　私の大好きな漫画家、山岸凉子先生の『白眼子』という作品に、「人の幸と不幸の量はみな同じ」というような旨の言葉が出てきます。

　初めそれを読んだ時は「そうなのかなぁ？」と思いましたが、今はそうかもしれないな、もしくはそういう考え方もあるよな、と思いつつあります。

 

　私は自分自身の10代の頃を青春時代としてとらえられていないです。普通に学校に行って、普通に友達と仲良くして、普通に同世代の男子と交際をして...みたいな経験ができなかったから。なぜか思い悩み、なぜか人間関係がうまくいかず、なぜか同世代の男子に恋心を抱くことができませんでした。

　今現在このようなお仕事をさせてもらっているので、感受性が豊かだったから...等の後付けの理由で片付けられてしまえるのですが、私は、それは結果論であって、だからそれですべてがチャラになるとは思えないです。

　たまに思います、いわゆる「普通の」学生時代を過ごしてみたかった、と。私自身が少し不安定な性格だったばっかりに、人生の貴重で多感な10代の時期を失ってしまったと思う時があります。

　失ったものは二度とは取り戻せません、壊れたものは修理に出しても新品になるわけではなく、今日よりも若い明日はないのです。

　その事実を前に悔やむことが多々あります。それと同時に10代の多感な時期に私たちのライブに来てくれている子たちの顔を思い出します。私もそうですが、人はみな一時的に10代の頃を「黒歴史」として封印してしまいます。私たちの音楽を聴き、ライブに行っていたことが彼女ら彼らの中で一旦黒歴史になってしまっても、いつか「あの時は楽しかった」と思い出してもらえる存在になっていたいなと願うばかりです。

 

　じゃあ、失ってしまったものを取り戻すことはできないのか？

　いえ、多分なのですが取り戻すのではなく、「別のシナリオ」が用意されているのだと私は思っています。結果としてですが、私は悩み続けた思春期があったからこそこうやって文章にすることができているし、これはこうなるための別のプランだったのかな？　と思っています。

　今が一番楽しくて今が一番幸せであってほしい。でも実際はそんなことなくて、楽しい記憶よりも悪い感情のほうが記憶には残りやすいし、誰しも問題を抱えているし、だけど辛い時に辛いのは自分だけじゃないなんて思えないです。

　でも、たまにもらえるギフトで、ああ生きてて良かったっていうことが少しでも感じられたら、幸と不幸の量が同じでも同じでなくても、もう少し頑張って生きてみようかなって思える気がしてます。