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トップレビューzArAme「 1 」

zArAme「 1 」

2018.06.20   MUSIC | CD

2018年6月27日(水)発売
DISRUFF DFF-6
定価:2,300円+税

【収録曲】
01. lowpride
02. スラッジ
03. searchlight
04. isolation
05. アネモネ
06. coldwaver
07. unequalizer
08. 転生
09. liquiddream
10. 微睡

結成5年目にしてリリースされる初のフルレングス・アルバムは楽曲のクオリティも奮い立つプレイも期待以上の出来で、井齋俊行(guitar)による秀逸なアートワークも含めて手元に置いておきたくなるフィジカルの良さを実感できる作品だ。DISCHORDマナーを踏襲した激情ハードコアは武骨ながら繊細で、一見クールでドライだが芯に熱を帯びている。

竹林現動(guitar, vox)が「全編を通してトータルで1曲、飛ばし聴き不可」とインタビューで語っているように、まるで草書の一筆書きのように連なる全10曲は有機的に結びつきながら必然の並びとなっていて弛緩するところが微塵もない。再録された既発3曲(「searchlight」、「isolation」、「coldwaver」)もその位置以外には考えられない絶妙な組み込まれ方で、アルバム全体が端正で精緻なパズルのようだ。

新たに加入した大野悠(bass)はオリジナル・メンバーである戸嶋智武(drums)との息もぴったりで、ボーカルに寄り添いつつも記名性の高い重低音を随所で奏で、時に全体を牽引するグルーヴ感を発露。既発3曲が格段にグレードアップしていることからも、昨年末のベーシスト交替劇が吉と出たことを如実に物語っている。

そんな鉄壁の布陣が微に入り細に入り仕上げた楽曲はどれも折り紙付きだが、とりわけトロンボーンという意外な楽器とゲスト・ボーカルをフィーチャーしたインストの大作「転生」はフルレングスならではのユニークな試み。生粋のハードコア・バンドがこうした管弦楽団仕様でも充分様になっているのは、ミドルエイジと言えどもバンドの伸び代がまだあること、今のバンドのコンディションがいかに良いかの証明と言えるだろう。

さらに言えば、狭義のパンクから逸脱してポップに拓いていこうとする意思を本作から強く感じる。孤独の淵を彷徨う「isolation」やコーラスワークの光る「アネモネ」、アコギが絶妙なアクセントとなっている「liquiddream」など、従来のメロディアスな作風がより研ぎ澄まされ、ジャンクでノイジーな感触は残しつつも普遍的な歌を目指しているのが伝わる。特に最後を飾るに相応しい「微睡」はスタンダードの風格が漂う名曲で、吐き捨てるように唄う現動のカラカラに渇いた歌声が実に良い。

また特筆すべきは、配信サービスが音楽を享受する行為の主流になったこのご時世にあえてCDをリリースする心意気とこだわりを感じずにはいられないこと。聴き手が現物を手にして初めて完結する作品にしたのは彼らなりの矜持だろうし、それは音楽がデータであることを頑なに拒否する無言の(しかし雄弁な)スタンスのように思える。
一枚のアルバムはわずか650MBの軽いデータなんかじゃない。表現者が心血を注いで滾る思いを音に託した精魂と尽力の結晶だ。zArAmeの『 1 』というアルバムはそんなことを静かに訴えかけているように思えてならない。(椎名宗之)

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